No17.赤軍の大夜襲
欧州では講和会議が開かれ、世界大戦は終結していた。しかしロシアの地ではまだ動乱が地を渦巻いていた。
「フルンゼ将軍!夜襲の準備が整いました!」
「よしっ!全軍に夜襲決行を命令!敵を殲滅せよ!」
「ははっ!」
こうして赤軍の天才、ユデーニチによる乾坤一擲の大夜襲作戦が始まった。ぐっすりと眠りについていた白軍にとって、この夜襲は寝耳に水であった。
「何!?赤軍の夜襲だと!?」
「はい。恐らく師団以上の軍は動いているかと。しかし闇夜であり、敵兵力の把握が困難です。」
「将兵に命令せよ。防御陣地に籠もり、防御に専念せよと!」
「ははっ!」
赤軍の夜襲によって大混乱に陥った白軍だったが、ユデーニチの適切な指示によって急速に冷静さを取り戻し赤軍を押し返そうとしていた。
「⋯そろそろ潮時か。全軍に命令。これより夜襲を中止して撤退せよ。」
「いいのですか?」
「よい。これ以上留まれば混戦になる。こちらに甚大な被害が出る前に撤退する。」
「ユデーニチ将軍。敵が撤退しています。」
「分かった。こちらも追撃はせずに被害の把握に努めろ。」
「追撃はしないのですか?」
「もし追撃中に反撃を受ければ大損害を受ける。リスクを追う必要はない。」
「ははっ!」
こうしてフルンゼ発案の大夜襲作戦は早々に終わった。この夜襲によって白軍は3万の死傷者を出したものの、戦闘能力に問題はなかった。赤軍も白軍の反撃によって2万弱を失い、痛み分けとなった。しかし、こうして赤軍主力が南部戦線に囚われている間にモスクワは危機に陥っていた。
「フルンゼ将軍!モスクワからの急報です!西部戦線が突破され、モスクワに黒軍が迫っているとのこと!」
「何!?急ぎ陣を引き払い、モスクワへ救援に向かう!」
「しかし南部戦線はどうするのですか?我々が撤退すれば敵は追撃するでしょう。そうすれば我が軍に大損害が出ます。」
「全軍で引き払うわけではない。負傷兵を含む5万はこの地に残す。幸いにも敵も積極作戦は起こしていない。数日は騙せるだろう。」
「しかしそれでは5万は....」
「やむを得ん。モスクワが落ちれば赤軍全体が崩壊する。」
「ははっ!急ぎ命令を伝えます!」
こうして赤軍は5万のみを残し、残りの全軍でモスクワの救援へと向かった。このフルンゼの判断によって、間一髪モスクワは陥落を免れることになる。しかし、本格的に二正面作戦となった赤軍は徐々に劣勢に追い込まれていくのだった。




