No16.ベルリン講和会議
1915年11月16日。欧州全土を揺るがした世界大戦はここに幕を閉じた。イギリス,フランス,ロシア帝国(白軍)を中核とする連合国は瓦解し、ドイツ帝国率いる中央同盟国の完勝で終わった。そして、この未曾有の大戦の講和会議がベルリンで開かれることとなった。
「我々は既に英仏露との講話は終わっている。今回の会議では連合国と同盟国の全体の講和条件について話してもらいたい。」
そう口火を切ったのは戦勝国の代表であるドイツ帝国首相、ベートマン=ホルヴェークである。
「我々オーストリア=ハンガリー二重帝国政府としては北セルビアの併合を絶対条件として求めたい。更にセルビア王家の廃止と民主政国家の設立を要求する。」
「ブルガリア王国政府としては南セルビアの併合を強く望む。」
そう要求するのは中央同盟国のオーストリア=ハンガリー二重帝国とブルガリア王国である。彼らはセルビアを実質解体することを望んでいた。
「大英帝国政府は賠償金支払い・領土割譲などは拒否する。」
そう主張するのは大英帝国首相ハーバート・アスキスである。大英帝国はドイツとの白紙講話が念頭にあるため、賠償金などを飲むつもりはなかった。
「ドイツ帝国政府としては既に我々が結んだ講和条件の承認を求めたい。それ以外は求めない。」
「異論なし!」
「では我々はこれ以上の要求は行わない。残りは当事国同士で決めてくれ。」
こうして決まったベルリン講和会議の結果は以下のようなものであった。
第一条 ロシアに関する規定
1.ロシアはポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、フィンランド、グルジア、アゼルバイジャン、アルメニアの独立を承認し、主権を永久に放棄する。これらの諸国はドイツの保護下に置かれる。
2.黒海およびバルト海の主要軍港(リガ、タリン、オデッサ、ケルチ、ニコラエフ)はドイツが三十年間の使用権を保持する。
3.ロシア白軍政府は総額六十億マルクの賠償金を二十年分割で支払う。
4.支払いは穀物・石油・石炭・鉄鋼などの現物供給を含む。
5.ロシア軍は割譲地域および独立諸国への進軍・駐留を禁じられる。
6.白軍政府は国際的にロシアの交戦当事者として承認される。
第二条 フランスに関する規定
1.アルザス=ロレーヌはドイツ領として確定する。
2.フランス北部の一部地域は十年間ドイツの占領下に置かれる。
3.占領地域の行政と治安はドイツ軍政当局が掌握する。 フランス陸軍は十年間、兵力三十万を上限とする。
4.航空戦力の保有は禁止される。
5.ドイツ軍はフランス本土から段階的に撤退するが、北部占領地域の軍政は十年間継続される。
第三条 イギリスに関する規定
1.イギリスは賠償金の支払いを免除される。 イギリス海軍の建艦計画は五年間凍結される。
2.中東におけるイギリスの権益は維持されるが、オスマン帝国の領土回復を妨げてはならない。
第四条 オーストリア=ハンガリーに関する規定
1.セルビア北部(ベオグラード、ノヴィサド、パンチェヴォ)はオーストリア=ハンガリーに併合される。
2.ルーマニアは国境線の再調整を受け入れ、二重帝国に対する領土割譲を行う。
3.帝国内の民族自治問題について、ドイツは政治的および軍事的支援を行う。
第五条 ブルガリアに関する規定
1.セルビア南部マケドニアはブルガリアに割譲される。
2.ブルガリアはバルカン地域における領土的要求が満たされたものとし、以後の拡張を行わない。
第六条 セルビアに関する規定
1.セルビアは領土の再編を受け入れる。
2.残余のセルビア王国は存続するが、その外交権はドイツおよびオーストリア=ハンガリーの共同管理下に置かれる。
3.セルビア軍は大幅に縮小され、国境地帯には監視団が置かれる。
第七条 オスマン帝国に関する規定
1.ロシアはコーカサス地域に対する一切の権利を放棄する。
2.アルメニアおよびアゼルバイジャンは独立国として成立し、オスマン帝国の勢力圏に属する。
3.黒海の自由航行権はオスマン帝国に保証され、ロシア海軍は黒海沿岸への駐留を禁じられる。
第八条 東欧諸国に関する規定
1.独立した東欧諸国はドイツ勢力圏に加入する。
2.各国はドイツ軍の駐留を認め、治安維持のための軍事行動を許可する。
第九条 軍事条項
1.ロシア軍は黒海およびバルト海沿岸への駐留を禁じられる。
2.フランス軍は十年間の航空戦力禁止を受け入れる。 イギリス海軍は建艦凍結を遵守する。
3.ドイツ軍は東欧およびフランス北部の占領地域に駐留権を保持する。
第十条 経済条項
1.ロシアはドイツ企業の国内活動を優先的に認める。 フランスはドイツに最恵国待遇を与える。
2.東欧諸国はドイツ関税同盟に加入し、ドイツ製品に対する関税を大幅に引き下げる。
第十一条 講和の効力
本条約は署名と同時に発効し、第一次世界大戦は正式に終結したものとする。
このようなものであった。各国不満などはあったものの、この条件でまとまった。しかし、この講和会議に出席している首脳はまだ何も知らなかった。この講和条件が次の大戦、"第二次世界大戦"を引き起こすことを。




