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初!迷宮探索

 ついに第一回迷宮探索の実習日が決まり、生徒の高揚、いや浮ついた空気を肌で感じながら当日を迎える。

『天樹迷宮』と呼ばれる中央都市で管理されている迷宮がある。見た目は天まで届く大樹で、一年中緑豊かな葉が生い茂り、所々花まで咲いている。一種の観光名所でもあり、外から見る分には危険性はなく一般市民にも人気のスポットとなっている。また採取できる素材として回復薬の材料が入手でき、騎士に取っても需要の高い迷宮である。


『天樹迷宮』は既に最下層まで探索済みで、内部の構造、出現モンスターまで把握されている。私たちにも今回探索する上層までの情報は解禁されており、地図もモンスターの特徴も頭に叩き込んである。

 さらに第一回であることから一パーティに先生一人が付き、探索時間も一時間と慎重に慎重を重ね、臨む。


 私たちのパーティはくじ引きで一番を引き、先陣を切って迷宮に潜ることができた。


 上層に出現するのは、獣型のモンスターで多数を占めるのはオオカミ型である。数匹単位の群れで行動し、攻撃手段は鋭い爪と強い咬合力を持つ顎で一度噛まれると決して獲物を離さず、その執念たるや首を落としても離れないらしい。加えて群れという物量で襲い掛かり、一人を集中的に狙うため、対処に失敗し重症を負い、心が折れてしまった新人も多い。先生がついているからといって油断はできない。


 初の遭遇は、スカウト担当の私が遭遇前に発見でき、不意打ちされることはなく、会敵する。


「オオカミ型、視認。数五! 手筈通りに! 琴乃(ことの)!」


 (しずく)ちゃんの指示の元、まずは私が速度を活かし、モンスターと第一に接触、攪乱を行う。授業や特訓を思い出し、魔力を身体に満たし、冷静に動く。無理に攻撃することなく、あくまで敵の注意を引き、モンスターの行動を誘導する。上手く注意を引けたようで、私を追い回すモンスターを左側面から(しずく)ちゃん、右側面からレオくんが切りかかる。それぞれ一匹ずつ仕留め、幸先の良い出だし。


 二匹やられたことでターゲットを私から(しずく)ちゃんやレオくんに変更したのか、モンスターは私から離れていく。

 いや魔力の高まりを感じ取り、魔術の準備をしていた小夏(こなつ)ちゃんの方へ走り出す。魔術の行使には高い集中力が必要で、モンスターに攻撃されれば、発動できても威力は大幅に落ちてしまう。

 そこで出番なのはタンクの陸くん、彼の魔剣以外にも盾を装備しており、モンスターの攻撃を正面から迎え撃つ。戦闘の一匹を盾で受け、吹き飛ばし、二匹目に衝突させる。三匹目は既に戻ってきた(しずく)ちゃんが余裕を切り伏せる。弥生(やよい)ちゃんの補助魔法を受けた小夏(こなつ)ちゃんの火炎系下位魔術『火矢』で残りの二匹を仕留める。


 戦闘終了後も気は抜けない。戦闘終了後はどうしても気が抜けてしまう。特に初陣かつ勝利したとあれば尚更で……みんなが喜んでいる中、一人警戒するのは仲間はずれにされている気がしてしまうのは寂しい。(しずく)ちゃんもこのときばかりは一瞬微笑んでいたけど、すぐに切り替えていた。


「喜ぶのはわかるけど、魔石!」


 戦闘後はモンスターから魔石の回収を行う。たまに魔石以外のドロップ品もあるが基本は魔石だけだ。私は周辺を警戒し、他のモンスターが近づいてきたらパーティにいち早く連絡する。迷宮に潜る前に渡された『収納袋』(アイテムボックス)には多くの荷物が入るため、重量はあまり気にしなくてよい。


 それから何度も戦闘を行ったが危ない場面はありつつも、探索時間と定めた一時間はあっというまで……


「疲れた~」「勝ててよかったね」「もっと戦いたかったぜ」


 迷宮から脱出後、各々感想を言い合い、反省点も共有する。私自身は想像以上に疲弊していたこと、探索時間が延びるほど、常時索敵は難しいことを伝えた。


「そうね。今後のことも考えて、色々試してみましょう」


 (しずく)ちゃんの提案に他にも今回、弥生(やよい)ちゃんの補助魔術を都度かけれるか、レオくんが前に出すぎてしまうのはいいのか等、今後に繋がるいい経験ができたと思う。


 他のパーティも迷宮に潜り、帰還する。潜ったパーティとは情報を交換し、これからのパーティには、色々聞かれたりして一日はあっという間に過ぎていった。


 翌週からは定期的に『天樹迷宮』での実習を行い、先生の監督がなくとも安定して戦えるようになった。

 その中でモンスターを倒した直後、小夏(こなつ)ちゃんの魔力というか存在感が急に跳ね上がった気配を感じた。


「これが噂の?」


「多分、凄いわね」


 (しずく)ちゃん、小夏(こなつ)ちゃん、それに陸くんはこの現象に心当たりがあるようで、私や弥生(やよい)ちゃん、レオくんは知らない現象だった。(しずく)ちゃんの説明だとモンスターを倒したり、偉業を達成すると稀に起こる現象『位階昇華』(レベルアップ)。肉体も魔力も一段階引き上げられ生物の格、それ自体が上がる。騎士であれば最低一回、優秀な騎士であれば人生において二回三回と経験するらしい。


 『位階昇華』(レベルアップ)を経験した小夏(こなつ)ちゃんの活躍は目を見張るものがあった。魔術は数倍の威力はあり、肉体強化も前衛型と同等の出力をしている。戦力のバランスが崩れてしまい、戦闘面での修正が必要であったが、モンスターを倒し続けると、(しずく)ちゃん、陸くん、レオくん、私、弥生(やよい)ちゃんの順で『位階昇華』(レベルアップ)を経験し戦力という面では格段に強くなった。


 低難易度の迷宮とはいえ、下層の階層主まで倒すことができたのは、『位階昇華』(レベルアップ)の経験が大きかったが、一重にパーティ全員と信頼関係ができていたからだと思う。


 他のパーティで階層主討伐までできたパーティは少ない。こちらのクラスでは鳴神メイちゃんのパーティと、隣のクラスでは不破(ふわ)くんという優秀なリーダーがいたパーティの三パーティだけという。先生からも褒められて誇らしかったのを今でも覚えている。


 約一年、私たちは本当に強くなったと思う。クラスのみんな、心も身体も、命のやり取りを通じ、入学直後とは比べ物にならないくらいの成長だ。ただこの後起こる惨劇に、何もかもが足りなかったのは、なぜなのだろうか。鍛錬をさぼったわけでも悪いことをしたのではないのに――


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