パーティ結成
そのままぐっすり眠ってしまった翌朝、いつもよりちょっとだけ遅い時間に私は起こされた。弥生ちゃんは困ったような、照れているような、はにかんだ笑顔で私を見つめていた。急いでシャワーを浴びて、学校へ。何も解決しないまま、何もできないままの無力な私だったけど、その後の弥生ちゃんは凄かった。
俯かず、雫ちゃんや小夏ちゃんに目線を合わせて話すようになったのだ。緊張はしているようだったけど、それでも大切な一歩で、剣術の型も及第点レベルに仕上げることができた。
「何をしたの?」
私は雫ちゃん呼び出されて問い詰められていた。
「何のこと?」
「とぼけなくて結構よ。桜弥生のことよ。急に動きがよくなったし、何より元気になった」
「……何もしてないよ」
「そんなことはないでしょう? 桜さんに聞いたら琴乃、あなたのおかげだって」
私は解決策を提示できなかった。ただ同じ時間、同じ感情を共有したに過ぎないのだ。
「それは違う。弥生ちゃんは強かった。立ち直ったのは弥生ちゃん自身の力だよ」
「……いいわ。あなたは、いえ何でもないわ」
雫ちゃんは納得のいっていない様子だったけど、追及するのは辞めてくれて助かった。
「多分、魔剣が渡されるわ。特訓も厳しくしていくから」
最後に物騒な宣言を聞き、解放される。特訓さらに厳しく……か、身体が震えたのは武者震いということにしておこう。
◇◇◇◇
雫ちゃんの推測通り、魔剣が渡された。真っ白な刀身で太陽の光に当てると眩しいくらいだ。これに毎日魔力を注ぎ、自身の魔力で染め上げていく。魔力量にも寄るが、半年から一年ほどで染め上げることができるらしい。
山城先生の魔剣も見せてもらったが、鮮やかな山吹色の短剣で濃密な魔力が感じられた。魔剣と大型の盾を使い、堅実な戦いをする先生は『不退転』の異名を持つ。私も山城先生を目標に魔剣を育てていこう。
放課後の特訓に魔剣へ魔力を注ぐ項目が追加された。みんな白い刀身に魔力を込めていく。数日間は変化が見られなかったが、ひと月も経つと、はっきり色が変わり形状も変化してくる。雫ちゃんの魔剣は黒く、小夏ちゃんは赤く、弥生ちゃんは桜色に、みんな綺麗な魔剣で羨ましくもある。これから色も濃くなり、形状も大きく変わっていくことだろう。
「二つ連絡事項、明日から対人戦も行う。それと特訓の参加者が増えるわ」
雫ちゃんの連絡事項に、驚きを隠せない。対人戦のことはわからないけど、参加者を増やすのは私や弥生ちゃんのように特訓しなければ、落ちこぼれてしまう生徒を救済する意図で実施していると思ったから。
「基礎がしっかりしてきた現状、次のステップに進んでいいと判断したわ。そろそろ授業でも対人戦はやるはずよ。新しい参加者については明日話すわ」
基礎がついたという雫ちゃんのお墨付きは素直に嬉しい。参加者については誰なのか、陸くんかなと予想しつつ未来への楽しみとする。その予想は半分当たり、半分ハズレだった。特訓の新しい参加者は二人いたのだ。
一人は陸くん、雫ちゃんとも小夏ちゃんとも昔馴染みで信頼に厚い。もう一人はクラスでも陸くんとは別の意味で目立つ男子だった。
「盾無玲央だ。獅子のレオって呼んでくれ!」
「玲央?」
「獅子のレオだ!」
元気のいい声で挨拶したレオくんはクラス一背が高く、体格にも恵まれ、精悍な顔つきをしている。髪は夕暮れのような橙色でオールバックという個性的な姿に圧倒される。
「盾無っていうとあの?」
小夏ちゃんは盾無という家名にピンときたようで、反応を示す。
「おう! 多分想像通りだ! 火力こそ命! 圧倒的火力を持って敵を薙ぎ払う! それこそ俺!」
その後も長々と説明してくれたが、要約すると防御は捨て、火力第一の家らしく、まさに一撃必殺を体現したスタイルらしい。
「自己紹介はそこまで! 陸、レオ、これからよろしく。それと重要な発表があるわ」
雫ちゃんがここまで大仰な前振りをするのは珍しい。心して聞く。
「この六人でパーティを結成する。役割も決めてあるわ」
雫ちゃんの発表をまとめると以下の通り。
今後の実習に備えパーティ(小集団)を結成する。それはここにいる六人。メインの役割は以下
陸くん :タンク
レオくん :アタッカー
雫ちゃん :アタッカー兼リーダー
小夏ちゃん:ウィザード(遠距離アタッカー)
弥生ちゃん:ウィザード(バッファー)
私 :スカウト
「この六人で?」「今日挨拶したばかりだぜ?」「決めちゃっていいのかな」「面白そう~」
様々な声が飛ぶかう。代表して小夏ちゃんから質問する。
「どうしてこの六人なのか理由を聞いても?」
「まず陸と小夏は昔馴染みで信頼できる。琴乃と弥生は特訓で人柄と実力は見ている。レオは陸からの推薦」
陸くんが補足として、レオくんを推薦した理由は単純で裏表がなく気持ちがいいからだそう。突出しすぎるきらいはあるが実力も申し分ないそうだ。
「反論があれば受け付ける。いつでも私に相談に来て」
そう雫ちゃんは締め括り、いったん六人での特訓に移る。今日から参加した陸くんもレオくんも最初は戸惑った様子も見せたが、すぐに慣れたのか特訓についてきた。むしろ新しい人が入ったことで、いい緊張感が漂い、気合が入る。
特訓を通じて改めて二人の人柄がわかってきた。陸くんは前から感じていた通り、フォローが上手い。雫ちゃんの指導にそれとなく補足を入れたり、雫ちゃん相手にも遠慮なく意見を言える。
レオくんは自己紹介通り、火力! 突撃! 吶喊! という感じだったが話し掛ければ気さくに答えてくれるし、物事をはっきり申してくる。第一声が「近くで見たらより小さいな! 聞いてたよりネズミみたいだ!」と失礼なことを言われたが、悪意があったり、貶す意図がないことはわかったので許した。弥生ちゃんには「声が小さいな! 見た目は好みだ!」とデリカシーのない発言をコンボして陸くんが謝らせていたが……見た目は好みという発言は私にはなかったのは、単純に好みではなかったということか。なぜだが振られた気分。
傷心したので、今日は優菜ちゃんと眠ることにし、ベットでお互いの近況を話し合った。
「こんな感じで今日は傷心中」
「あらあら、楽しいパーティになりそうで、安心したわ」
「優菜ちゃんの方は?」
「私の方もパーティを組もうって話はいくつかもらっているわ。もう少し悩みそう」
「優菜ちゃんとも組めればよかったけど、クラス内でという制約があって残念」
「そうね。私も同じ気持ち」
話しているうちに心は癒えて、優菜ちゃんの体温を感じながら夢の中へ旅立っていった。




