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授業(午前編)

 騎士養成学校の午前中は基本的に座学が中心で組まれている。その中で特に重点的に繰り返し、教え込まれたのは『禁忌』(タブー)のことである。


 『禁忌』(タブー)とは騎士が絶対にやってはいけないことを明文化しているもので、実際の文章は堅苦しい言葉で書かれているが、かみ砕くとたった二つに集約される。それは①殺人の禁止 ②魔石を食すことの禁止 である。どちらも違反すれば重大な罰が下されるという。


 ①については騎士というよりは、人間全般にいえることで、わざわざ『禁忌』(タブー)という大層なもので禁止する理由がこのときはわからなかった。


 ②について、まず魔石は魔物の魔力生成器官とされているもので、戦闘後回収する。主な用途としては魔道具の動力源である。それを食すというのは想像できなかったが、実は舐めると甘く、魔力も少し回復できるらしい。加えて何度も食べてしまうと薬物中毒のように、魔石を求めるようになってしまうという。


 しかし魔石って舐めると甘いのかぁ。そうであれば子どもたちが間違って食べてしまう恐れがある。孤児院でも魔石の管理は大人たちがしていたのは、そういった理由があったのかと得心がいった。


 それから自身には何が得意か、つまりは前衛型か後衛型、さらには属性のことについて学んだ。


 魔力による肉体強化が得意なタイプは前衛型、魔力による干渉が得意なタイプ後衛型という大きな括りがあり、さらに役割によって細分化される。


 ・前衛型

 盾役 :自身の状態固定が得意なタイプ

 斥候役:自身の視覚や聴覚等の五感の強化が得意なタイプ

 攻撃役:自身の肉体や武器の強化が得意なタイプ


 ・後衛型

 魔術役:現実に干渉し様々な事象を起こすことが得意なタイプ

 回復役:他者に干渉し損傷を復元することが得意なタイプ


 上記に挙げたものが基本型であるが、例外も多く、一部学者によれば人の数だけタイプがあると主張するグループもいる。また全てが得意なイレギュラーとも言うべき存在も過去にはいたらしい。


 騎士養成学校に入学する生徒は二つくらいは得意なタイプがあるそうで、私はどれが得意なのか、判別する方法でもあるのではと期待したが、残念ながら簡単に判別する方法はないようだ。実際に魔力を使ってみて、得意なタイプを見つけるのが大事という。楽な道はないようだ。


 この中だと優菜(ゆうな)ちゃんは、回復役が得意ではないかと推測した。性格的には一致しているが、性格と得意なタイプは必ずしも一致するものではないのが通説で、回復役は数も少ないらしい。


 属性については、火水土風といった多くの人が当てはまる基本属性があり、それ以外は希少属性とされる。クラスメイトで希少属性は鳴神メイちゃんの雷がそれに当たる。加えて当人の属性は魔力が多く宿るとされる髪や瞳にも影響があり、鳴神メイちゃんの髪色や瞳に納得した。

 そこから考えると紅小夏(こなつ)ちゃんは赤いから、火属性と推測できる。暗密(くらみつ)(しずく)ちゃんは黒色で……黒って何だろう? 近衛陸(このえりく)くんは黄色だから土属性かな。話す機会があったら聞いてみよう。


 授業が終わり小夏(こなつ)ちゃんに話しかけてみた。


小夏(こなつ)は火属性?」


「コト、さっきの授業で気になったのか? 私に属性聞いてくるやつは初めてだ」


「初めてってことはないでしょう。過去には聞いてくる人いたのではないかと」


「いーや、初めてだ。これでも紅家は有名でね。火属性の名家だよ」


「そういうことですか。もしかしてお嬢様?」


「そんなんじゃないよ。ただ代々騎士を輩出している家なだけ」


 あまり小夏(こなつ)ちゃんは家のことを語らなかったが、紅家について調べてみたところ、現時点でも小夏(こなつ)ちゃんのお兄さん、父親は騎士として現役で、後衛型の火属性使いとして大活躍中とのこと。小夏(こなつ)ちゃんもお兄さんや父親のように将来を嘱望されているようだ。


 小夏(こなつ)ちゃんとお昼ご飯を食べ食堂から戻る途中、近衛陸(このえりく)くんが話しかけてきた。


天羽(あまばね)さん、少しいいかな」


「こんにちは。はい。大丈夫です」


「ありがとう。ここは人が多いから、こっちへ」


 初対面の男子から内緒話だろうか。


「実は天羽(あまばね)さんに伝えておきたいことがあって……委員長、暗密(くらみつ)(しずく)さんのことなんだ」


暗密(くらみつ)(しずく)さんのことですか? えっと、とても優秀だと聞いてます」


「あぁ、それもそうだけど、放課後特訓するって話してたの聞こえちゃって」


「はい。そうですけど……」

 もしかして一緒に特訓したいという話だろうか。


「委員長は言葉はきついし、冷たいと勘違いされがちなんだ。でも、根は優しい……というか責任感があるというか、悪い子ではないんだ。だからもし拗れそうだったら相談してほしい」


 たしかに言葉はきついけど、特訓に付き合ってくれる人を冷たいとは思っていなかったので、とても驚いた。それほど暗密(くらみつ)(しずく)さんの友人関係のことを気に掛けているのだろう。


「わかりました。もし拗れるようなことがあれば相談します」


「ありがとう。本当にそれだけ、僕は(しずく)小夏(こなつ)とも昔馴染みだから、一緒にいる天羽(あまばね)さんにも話しかける機会もあると思う。今後ともよろしくね」


 真剣な眼差しでそう頼んだ近衛陸(このえりく)くんは、とても仲間思いで人のために動ける人格者と私は記憶した。彼が委員長でもクラスはまとまる気がする。和気あいあいとしたクラスに……


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