基礎が大事
肉体強化のやり方すら知らなかった私は、山城先生と一合交わした瞬間吹き飛ばされて気絶した。
目が覚めたとき、隣には優菜ちゃんがいた。相当心配を掛けてしまったようで、本当に申し訳ない。
「琴乃ちゃん、心配したんだから」
「ごめんなさい」
謝るしかなかった。さすがに国からも超一流と認められた山城先生に対して、よくわからないまま突撃するのものではなかった。
「それと先生が目覚めたら顔を出すようにって言っていたけど……今日はやめておく?」
「ううん、ちゃんと叱られてくる……優菜ちゃんは先に寮に戻っていて」
何度も振り返る優菜ちゃんを見送ってから先生の元へ行くことにした。
山城先生は待っていた。待ち構えていたと言ってもいい。
「すいませんでした」
「……謝るということは理解しているのか」
「はい。何もわからないまま試合をしてしまいました」
深くため息をついた山城先生は
「こちらも悪かった。まさか騎士養成学校に選ばれた生徒の中に、何も知らない者は混ざっているとは思わなくてな」
「そういった生徒は珍しいのでしょうか?」
「あぁ、この都市に住んでいる者であれば幼少の頃から魔力は身近なものだからな」
「魔道具であれば私の住んでいたところでも使っていました」
「生活に使う魔道具のことか?あれでは話にならん。とりあえず現状はわかった。明日からの授業は基礎からやるから真面目に受けるように」
あっさり解放され、寮に戻ることに。のんびり歩いていると小夏ちゃんがやってきた。
「目が覚めたって聞いてね~探してた~」
「探してた? 心配してくれたってこと?」
心配してくれるなんて、まだ出会って一日目だけど友達ができたかもしれない。
「心配は二割くらいだ。八割はあまりに見事にふっ飛んだからどんな気持ちか聞きたくて」
友達は幻想であったようだ。優菜ちゃんだけいればよい。私がよほど変な顔をしていたのか小夏ちゃんは
「冗談! 冗談だから! あの後クラス委員長が正式に決まったこと、明日からのスケジュールとか伝えようと思ってな」
友達ができたようだ。これからの学校生活は明るい。
「ありがとう。委員長は暗密さん? 近衛さん?」
「雫の方だよ、陸は辞退した」
まあどちらであっても問題はないだろう。
「鳴神さんは、どうだった?」
「大人しいもんさ、一度決まったことを蒸し返すような性格じゃないし……」
「うん、わかってる。真っすぐでいいと思う」
「そう言ってくれると友達の私からすれば助かるよ。雫とも仲直りしてくれたら万々歳なんだが」
鳴神メイちゃんもわかってはいるのだろう。引っ込みがつかなくなってしまったのだろうか。どちらとも関わりのない今の状態では動きようがない。
小夏ちゃんと一緒に寮まで戻り、明日に備えて早めに就寝することにした。
翌日は優菜ちゃんと寮から校舎へ向かい、クラスの前で別れた。優菜ちゃんの方も友達ができたようでクラスに馴染んでいるようだ。
私も自身のクラスに入り、隣の席の小夏ちゃんへ挨拶する。
「おはよう」
「おはよう~、今日の授業はね」
他愛のない雑談をしていると近づいてくる影があった。いくつか視線を感じてはいたが、近づいてくる人がいるとは。
「ちょっといいかしら」
クラス委員長となった暗密雫ちゃんだった。
「雫じゃねえか。おはよう~」
小夏ちゃんが返事をする。小夏ちゃんと雫ちゃんは昔からの知り合いだったから話に来たのだろうと思い、席を譲ろうとしたのだが。
「おはよう。天羽琴乃さんね。少しいいかしら」
用件は私の方だった様子。浮かせかけた腰をそっと戻す。
「はい。暗密さん、大丈夫ですよ」
「そう。昨日の訓練場での出来事は私も見ていたわ。肉体強化も碌に使わず突撃して、吹き飛ばされる姿」
当然見られていた。よくよく考えればあれほど飛んで行った人間を見る機会はないだろうし、先ほどから感じる複数の視線は昨日の件について聞きたいのかもしれない。
「おいおい、委員長がクラスメイトをからかいに来たのか?」
小夏ちゃんが茶々を入れる。
「いいえ、そうではないわ。ただ山城先生からあなたが魔力の肉体強化、そもそも自分に何が得意かすらわからないと聞いたわ。そこで放課後予定は空いていて?」
放課後……特にはないけれども意図がわからない。
「……空いておりますが、意図がつかめなくて」
「そう。なら放課後は第一訓練場に。生徒は自由に使えるわ。そこで基本的な魔力の扱い方を教えるわ」
「えっ、それはよいのでしょうか。暗密さんの時間を奪ってしまうようで」
「気にしなくていいわ。全くの素人がクラスにいる方が問題だから」
「ちょっと~言い方きつくない」
小夏ちゃんがフォローしてくれるけど、実際のところ他のクラスメイトより遅れているのは事実。
「小夏ちゃん、事実だから。それで昨日は心配掛けちゃったし。暗密さん、よろしくお願いします」
「じゃ放課後よろしく」
暗密さんはそう言って席に戻っていった。小夏ちゃんが隣で心配そうに見ているなと思っていたら
「私も放課後ついて行くから」
この日より、放課後は三人で特訓が日課となった。
今日は書き留めていた話をいくつか投稿します(^^)/




