委員長決め
クラス全員の自己紹介が終わり、クラスの委員長決めへと移った。ちなみに私以外の自己紹介は無難というか、笑いを取りにいった者はいなかった。
クラス委員長はリーダーみたいなものらしい。話し合いを経て二人の候補者まで絞られた。
一人は男子の近衛陸くん。彼は中央都市でも有名な家柄らしく、加えて性格も明るくムードメーカーと言っても過言ではない。
もう一人は女子の暗密雫ちゃん。彼女も中央都市で有名であり、彼女の父親は騎士団長でもあると聞いた。彼女は近衛陸くんとは違い、ムードメーカーという感じではなかったが、真面目で実直そうな印象を受けた。
「ではこの二人、どちらかを選んで投票してもらう」
山城先生がそうまとめたときだった。
「認められないわ! 陸ならいいけど、雫はダメだわ! 雫が選ばれるくらいならわたくしの方がマシよ!」
そう立ち上がって宣言したのは、女子の鳴神メイちゃん。何より目を引くのは髪型だろう。はちみつ色のような左右の髪を螺旋状に巻いている。立ち振る舞いも実に堂々としたもので、自信に溢れている様に見受けられた。
名指しされた雫ちゃんは立ち上がり負けじと言い返す。
「メイ! 今は話し合いの時間よ。反対するのであればちゃんと理由を言って」
「なんですって! そういうところよ! そういう澄ましたところが気に食わないのよ!」
口喧嘩というよりは、鳴神メイちゃんの方が一方的に言い掛かりをつけている様子。陸くんはそのやり取りを微笑ましく見守っていた。恐らく昔からの知り合いで、いつもの光景なのであろう。クラスメイトの内何人かは「またか」という表情で、残りは私と同じく、状況に置いて行かれていた。
「決闘よ!」
口喧嘩では埒が明かないと思ったのか、鳴神メイちゃんが決闘を宣言した。決闘すなわち戦いで決着をつける。白黒つけようというのは悪くないと私も思うけど、さすがに先生たちが黙っていないのではないか。
「貴様ら! 話し合いでは決めれないのか」
山城先生の声が響く。よく通る声で羨ましい。先生の選考基準に声の通りやすさとかあるのだろうか。
「まあまあ、山城先生、いいのではないでしょうか」
お説教でも始まるかと思いきや以外にも、止めたのは副担任の五十嵐先生だった。
「暗密さんも鳴神さんもある程度戦えると聞き及んでおります。今の実力を測るという意味でもちょうどよいのでは」
「……それは、いやいい機会か。全員訓練場へ集合!」
山城先生も五十嵐先生の意見を聞き入れ、決闘を了承したようだ。
「決闘の前にこの腕輪型の魔道具を付けてもらう。お前たちも覚えておくんだ。この魔道具は装着者に一定のダメージを負うと黄色、さらにダメージを負うと赤く光る。対人戦闘の際には必ず付けるように」
説明を聞き、暗密雫ちゃんと鳴神メイちゃんが魔道具をつける。武器は五十嵐先生が用意した訓練用の剣から選び使う。
「そもそもどうして仲が悪いんだろう」
「気になる?」
ふと零れた疑問に隣から返事があった。
クラスでも隣の席だった女子だ。
「小夏。紅小夏よ。よろしく。その背じゃお姉ちゃんとはさすがに呼べないな、あだ名をつけるなら姉は外してコトだな」
「小夏さんですね。よろしくお願いします。好きに呼んでください」
「呼び捨てでいいぜ。っとなんで仲が悪いのかだったよな。昔は仲が良かったんだぜ」
「昔を知っているということは小夏さん……小夏も彼女たちの知り合いなのですか」
「まあな、よく一緒に遊んだものだぜ。でだ雫の父親が騎士団長って知ってるか。まあ他にも騎士団長候補はいたんだが、それがメイの父親でな。結果的に雫の父親に決まったんだが……メイの父親は荒れちまってね」
「メイさんはそれで雫さんを恨んでいるの?団長を選ぶのに関係はないでしょう?」
「それはそうだが……感情の矛先がなかったんだ」
そして今に至るまで、事あるごとに言い合いや喧嘩をしているという。
「では決闘を始める! 双方前へ! 始め!!!」
最初に動いたのは鳴神メイちゃん。開始の合図と同時に体中に魔力が満たされたのがわかる。体中に魔力が満たされる為か速度が尋常ではない。暗密雫ちゃんに正面から切りかかり、防がれる。すぐにその場を離れ次は側面から、何度も何度でも切りかかっていく姿は鬼気迫るものがある。
「かっこいい」
素直な感想が零れていた。速度を活かした一撃離脱を主体とする鳴神メイちゃん。対して暗密雫ちゃんは冷静に一撃一撃に最小限の動きで対応している。五十嵐先生はある程度と言っていたが、十分戦えているのではないかと思う。
「だよな。二人とも自慢の友達だ。しかし動きが見えているのか?」
「うん。何とか目で追えるくらいだけど」
興味深そうに小夏ちゃんが私をジロジロみてくる。
「なに?」
「いや……それよりも気づかないか」
二人の決闘を改めて見ると……
「メイさんの速度が落ちている」
「その通り! いつものパターンなんだよなあ」
「というといつもメイさんの方が先に体力を消耗して、負けちゃうってこと?」
「あぁ、雫のやつは防御主体というよりカウンタータイプなんだが、体力が尽きたメイじゃあ捌けずに負けるのがいつものパターンだ」
小夏ちゃんの言う通り、今回の決闘も同じように推移していき、鳴神メイちゃんの魔道具が赤く光ったところで、終了となった。
鳴神メイちゃんは決闘が終わった後は大人しく、お辞儀をして訓練場を去っていった。
「終わったなー。私らは何かするのかね?」
小夏ちゃんの疑問はもっともであった。五十嵐先生は「実力を見る」ということだが、二人だけとは限らない。クラス全員となれば私も何かアピールが必要なのか。
「よし! お前たち前衛型は俺のところに来い! 後衛型は五十嵐の方だ! 戦ってもらうぞ」
山城先生、前衛型とか後衛型とか言われてもわからないです。しかし山城先生についていくと決めた私なので前衛型が集まる集団に向かって歩いて行った。
後から教えてもらったところ、魔力による肉体強化が得意なタイプは前衛型、魔力による現実への干渉が得意なタイプは後衛型らしい。
肉体強化のやり方すら知らなかった私は、山城先生と一合交わした瞬間吹き飛ばされて気絶した。




