託す者たち
魔石で魔力を回復し、みんなも明るくなり、会話も戻った。アタッカーやウィザードは自身の持てる最大火力でモンスターを蹴散らし、タンクはわざと攻撃をもらって魔石を食い散らかす。危うさを感じながらも探索は順調で、途中他のモンスターとは明らかに格が違う推定『異名持ち』のクラゲ型モンスターに出会ったが、今の私たちの敵ではなく楽しみながら撃破し、魔石以外のドロップという珍しい現象も見ることができた。
「何だこれ? ペンダント? ぐにょっとしてキモイな」
不破くんがペンダントトップを突っつきながら、見せびらかす。デザインは先ほど倒したクラゲをデフォルメしたような絵が描かれていて、可愛らしい。不破くん曰く感触はきもいらしいが。
「魔石以外のドロップ品って装備していいんだっけ?」
「う~ん、大丈夫だと思うけど、魔道具で調べないと効果がわからないはず」
さすが陸くん博識である。
「効果がわからないなら、装備する人も決められないわね。もう一つはタンクの誰かでいいけれど」
雫ちゃんの目線はもう一つのドロップ品であるクラゲの盾である。クラゲの触手や口腕はなく外傘面を切り取ってそのまま盾になっている。あちらもぐにょっとしているのか、レオくんと弥生ちゃんが突っついて遊んでいる。
ドロップ品は性能が高い傾向にあるため、見た目は気になるが装備できる人がいるなら装備してもらうのが合理的だ。最終的に陸くんが装備することになり、さすがのイケメンでも見た目が……
問題はペンダントの方だ。最有力であった水系の魔術が強化されるのではという推測は見事に外れ、他の属性も当てはまらず、では耐性があがるいう推測も外れ、白けたような空気が漂い始めた頃。
「琴乃ぉ、あんたがつけなよぉ」
朝雛ちゃんは私につけさせたいようで、理由は予想できる。
「……わかった。代わりにしばらく魔石の取り分はいらないよ」
「いい子ねぇ、みんなもそれでいいわねぇ」
周りも使い道ないし、ぐにょっとしてるしと概ね賛成のようだ。
「つけてあげるわぁ」
ペンダントを私の首につけてくれるが、何となく朝雛ちゃんにとっては首輪のような感覚なのかなと思う。私を所有物であると、わざわざアピールしている。ついでに魔石を食べながら魔力を供給してくる。魔力の供給される感覚と首にペンダントがある違和感に、少しばかり気分が悪くなってくる。
「ペンダント、つけてくれてありがとう。魔力も」
「いいのよぉ、似合っているわぁ」
周りには聞こえないように耳元で「外さないでねぇ」と囁いた事実を鑑みるに、私の勘は当たっていたのだと思う。
クラゲ型モンスターが陣取っていたのは入り口が一つしかない袋小路で、しばらく休息をとることに決まる。退路がないのは気になったが、今の私たちを倒せるモンスターはいないだろう。私たちとしても警戒すべき個所が少ないのは有り難い。
「コト、こっち来なよ」
小夏ちゃんが火の魔術で焚火をしながら呼んでくれる。
「うん、なんだがこうして話せるの久しぶり」
「だな、スカウトも減っちゃったしほぼ出ずっぱりだったもんな」
「千堂くんがいて助かったよ。索敵範囲は彼の方が上かも」
「まじか! ノーマークだったな~」
「千堂くんの話かい?」
クラゲを持った陸くんが話し掛けてくる。
「そそ、そんな優秀だったとはね~」
「彼は目立たない方だったけど、成績は上位だったよ」
そうだったのか。小夏ちゃんと同様に私も男子については詳しくなかったから陸くんの情報は貴重だ。
そこからはレオくんたちも合流して、あの子が凄かったとか、この子の趣味とか、私と関わりのなかった人たちのことを聴く。もっと前に知っておけばよかった。亡くなった子たちとの思い出を作っておけばよかった。
「そういえばさ、私もコトに魔力渡していい?」
照れているのだろうか、少し目を逸らしながら小夏ちゃんは言う。特訓のときに私を気絶させた以降、魔力の供給はしてこなかった小夏ちゃんだけど……
「いいけど、どうしたの? 魔石?」
「違う!! そうじゃなくて」
デリカシーのない発言だった。小夏ちゃんも朝雛ちゃんのように魔石に依存しているのかと、問うたのも同然だった。
「いや、今の状況ならそう聞こえるのは仕方ないよね」
沈黙が場を支配する。助け船を出してくれたのは雫ちゃんと陸くんだった。
「……はぁ、私も魔力を渡すわ」
「僕も少しだけ、小夏の気持ちは理解できるから」
昔馴染み同士理解しあっているようだけど、私や弥生ちゃんはよくわからないままで、レオくんに至っては何も考えていないように見える。
「よくわからないが! 俺たちも渡すか!!」
私もよくわからないまま各々手を握ったり、首に手を当てたり、みんなから魔力を渡してもらう。よかった。朝雛ちゃんとは違い温かみのある魔力を感じる。それが嬉しくって私は泣いてしまった。泣くのはいつぶりだろう。赤ちゃん以来とするのはかっこつけすぎか。
みんなは驚いていたようだけど、それはよくわからないことを言い出した小夏ちゃんのせいということにする。




