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流転の國 vol.7 〜幻と記憶が交差する宙色の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第六十七話 集合

「これより先、私マヤリィが再び流転の國の最高権力者を務め、『宙色の耳飾り』を持つことを宣言する。…皆、此度の水晶球の一件では本当にご苦労でした。私が帰れずにいる間、留守を守ってくれたことに感謝します」

「はっ!」

玉座の間に集まった皆がマヤリィの前に跪き、深く頭を下げる。

そんな配下達を玉座から見下ろし、

「全ての原因が水晶球にあることは分かっているけれど、私がいない間何があったのか、改めて報告して頂戴」

ひとりひとりに説明を求める。

「はっ。畏まりました、マヤリィ様。では、水晶球の影響を最も強く受けた私からご報告したいと思います」

ルーリは真剣な顔で説明を始める。

それは、マヤリィが『操作』した後の記憶であり、事実とは異なる点もあった。

「ネクロが実験体を欲しがった時、水晶球は強力な人間を使うようにとランジュを殺しました。そればかりか、流転の國の戦力となるような人造人間を生み出したのです」

ルーリは悲痛な面持ちで言う。

「私は人造人間を止めることが出来ず、結果的にネクロを死なせることになってしまいました。私が水晶球によって作り出された不思議な現象を意識したのはその後からでございます。私は『宙色の耳飾り』を授けられたにもかかわらず、人造人間の攻撃を受けて重傷を負ったミノリを『宙色の魔力』で癒すことが出来ませんでした」

「はい。その時のことは私もよく覚えています」

つらそうに話すルーリの言葉を引き継いでシロマが口を開く。

「この世に存在する全ての魔術を司るはずの『宙色の魔力』が役に立たない…。それに気付いたルーリ様は水晶球に直談判したのでございます。しかし、水晶球は私達の記憶を曖昧にしたまま、ルーリ様から『宙色の魔力』を取り上げ、ミノリ様の身体を治すこともありませんでした」

そこから先は『魔術適性の交換』だが、この事実に関してはほとんど操作していない。

が。

「私は雷系統魔術を試してみようと、ひとりで訓練所に向かいました。今となってはルーリ様に教えを請うべきだったと分かるのですが、あの時の私は自分の力量も知らずに雷系統魔術を発動し、魔力事故を起こしてしまったのです…」

クラヴィスとのやりとりに関しては覚えていない。

「シロマが魔力事故を起こしたことはルーリ様からの『念話』で知りました。しかし、見つかった時にはシロマはもう……」

クラヴィスも、直前のシロマとの会話を覚えていない。

「その時、私は白魔術の適性を得ていたにもかかわらず『蘇生』魔法を発動することも出来ず、結局ミノリに『永久凍結』魔術を施してもらうまで、私はただ立って見ているだけでした…」

ルーリはそう言って俯く。

「しかし、ルーリとクラヴィスが訓練所の瓦礫の中からシロマの身体を見つけ出してくれたお陰で、ミノリはすぐに魔術をかけることが出来たのです。ランジュの時もネクロの時も同じように『永久凍結』したのですが…」

その時、マヤリィの隣に控えていたジェイが初めて声をかける。

「ミノリが施した永久凍結魔術は完璧だった。それでもランジュとネクロが甦らなかったのは、時間が経過して身体から魂が離れてしまっていた為だ。…ミノリ、君はよくやってくれたよ」

「ええ、ジェイの言う通りね。ミノリの魔術がなければ、シロマは今ここにいないわ」

マヤリィも言う。

「はい。私はミノリ様の永久凍結魔術とマヤリィ様の蘇生魔術によって生き返ることが出来ました。本当にありがとうございます」

シロマがそう言って頭を下げると、クラヴィスは安心したような顔で彼女を見ていた。

「…それで、シロマが一度死んだ後、貴方達は桜色の都に行ったようね」

「はっ。マヤリィ様が桜色の都にいらっしゃるのではないかと思い、至近距離で『魔力探知』を使わせて頂く為に都へ行きました」

「私は…魔術に関しては何もお役に立てませんが、陛下のサポートをするようにとルーリ様に命じられ、ミノリ様とともに都へ行った次第です」

マヤリィの問いに、ミノリとクラヴィスがそれぞれ答える。

「その間、白魔術を満足に使えない私は足手纏いになると思い、流転の城に残ることにしたのでこざいます」

ルーリが言う。

「そして…ひとりになった所でこれまでのことを色々と考えた結果、水晶球だけではなく私の存在が流転の國を脅かしているのではないかと思い、私は皆に何も言わずに…」

「その先は言わないでいいわ、ルーリ」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様」

自殺を図った、と言おうとしたルーリはマヤリィが止めた瞬間、口を噤んだ。皆は話の流れでなんとなく予想がついたが、それ以上追及する者はいなかった。

「その後、マヤリィ様が桜色の都の王宮に姿を現され、ミノリとクラヴィスはそこで再会することが出来ました」

「はい。あの時は陛下も安心され、とてもお喜びでいらっしゃいました」

ジェイはそこにいなかったので、

(どうやら姫は桜色の都でもうまくやったみたいだな…)

と思うのだった。

「畏れながら、マヤリィ様。シャドーレは…もしや今も桜色の都にいるのでしょうか?」

ミノリとクラヴィスは知っているが、ルーリとシロマはまだ知らない。

「ええ。今の彼女は桜色の都の黒魔術師部隊『クロス』の隊長であり、若き国王陛下の国政を支える役目も担っている。私はシャドーレと直接話し合い、彼女の意思を尊重して、流転の國に連れて帰ってくることはしなかったのよ」

マヤリィは言う。

「ミノリにはとてもつらいことだったでしょうけれど…最後にシャドーレとちゃんと話せたかしら」

「はっ。マヤリィ様にお時間を頂きまして、シャドーレと別れの言葉を交わすことが出来ました。ミノリは流転の國を離れるわけにはいきませんし、今のシャドーレは桜色の都を離れられない。互いに今一番大切なのは何かを考えた結果のことにございます」

ミノリは必死に涙を堪えていた。

「…では、シャドーレ様はもう流転の國には帰られないのですか?」

シロマが悲しそうに訊ねる。

「ええ。彼女は自分が生まれ育った桜色の都の将来の為に、国に尽くすことを選んだのよ」

マヤリィの言葉に一同は黙り込む。

その隙にマヤリィは皆に聞く。

「皆、我が流転の國において、ルーリはどんな存在か、言ってご覧なさい」

(えっ?急に…?)

ジェイは不思議に思ったが、皆は真面目な顔で順番に答える。

「はっ。彼女はマヤリィ様の側近にして雷系統魔術の天才にございます」

「さらに『流転の國のNo.2』と呼ばれる実力をお持ちでいらっしゃいます」

「それから…『マヤリィ様の切り札』というお立場で…」

「我が國の国家機密。…そうだよね?ルーリ」

ミノリ、シロマ、クラヴィスの順に言葉を繋ぎ、最後はジェイがルーリ自身に確認した。

「はっ。確かに皆の言う通りにございます。私は畏れ多くも『マヤリィ様の切り札』と呼ばれる国家機密のような存在にございます。私の姿を見た者は、或いはこの世を去り、或いは『忘却』魔術をかけられ、流転の國以外に私の存在を知る者はひとりとしてございません」

これが最大の『記憶改竄』。桜色の都の者は既に「ルーリ」という存在を忘れ、ただ「マヤリィ女王」が行方不明になっていただけ、という認識に書き換えられている。さらに言えば、マヤリィが行方不明だったことさえ、時間が経てば忘れてしまうだろう。それだけマヤリィの『忘却』魔術の効果は重い。

「…それでは、今一度、流転の國を統べる偉大なる宙色の大魔術師マヤリィ様に絶対の忠誠をお誓い申し上げます。二度と水晶球のような者に操られるような失態は犯しません。この先私達は何があろうと、貴女様についてゆくことをお約束致します」

ルーリが代表してそう言うと、皆は深く頭を下げた。

「ええ。貴方達を信じるわ。これからも流転の國の為に働き、どこまでも私についてきて頂戴」

「はっ!!」

(本当によかった…)

マヤリィの隣でジェイは微笑んでいた。

ようやく、流転の國は元通りになった。

本来の女王が今ここに帰ってきたのだ。

マヤリィは皆の記憶の中から「後悔」の念が強い部分を選んで『消去』または『改竄』していきました。

その為、ホムンクルスを造ったのが水晶球になっていたり、ミノリは『長距離念話』のことを忘れていたり、シロマの魔力爆発の一因がクラヴィスとは関係なかったり、皆の記憶は少しずつ『操作』されています。

中でも、マヤリィが最も重要視したのが「ルーリの存在」を再び国家機密にすること。

その為、マヤリィは桜色の都の国王にも『忘却』魔術をかけています。桜色の都の誰もが気付かぬうちに「流転の國の女王ルーリ」の存在は忘れ去られることとなりました。

マヤリィがなぜそこまでしてルーリの存在を秘匿したいのか…。それは誰にも分かりません。

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