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流転の國 vol.7 〜幻と記憶が交差する宙色の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第三十二話 シャドーレ出動

エアネ離宮にミノリ嬢を残し、シャドーレは一人王都へ戻ろうとします。

その道中で出会ったのは…。

早朝にエアネ離宮を発ち、王都へ戻る途中のシャドーレの前に見慣れた白い鳩が現れた。

「あら、これは陛下の使い魔…?私宛ですの?」

手紙を読んだシャドーレは、東の森の現状と、ゴーレム討伐の為に『クロス』に出動命令が出たことを知る。

「これは只事ではありませんわね。急がなくては…!」

手紙を渡した使い魔は任務完了とばかりに王宮に戻って行った。

「邸に戻っている余裕はありませんわね…」

シャドーレは王都に入ると、邸には帰らず直接王宮へ向かった。

「陛下、参上が遅くなりまして誠に申し訳ございません」

「シャドーレ…!貴女が帰ってきてくれてよかった。現在の状況は、先ほどの手紙に記した通りです」

ひと足早くヒカル王の元へ戻った使い魔は、彼の肩の上に乗っている。

「はい、読ませて頂きましたわ。しかし、本来ならば、国境線のゴーレムは国を守る為のものであったはず。なぜ突然このようなことが起きてしまったのでしょうか…?」

信じられない事態を前にして、シャドーレは出来る限り情報を集めようとするが、ヒカルは困惑した表情で言う。

「急ぎ専門家達が集まって会議を行っていますが、前代未聞の事態とのことで、原因もまだ分かっていません。『クロス』には人命第一で調査・討伐にあたるようにと言いましたが、最悪の場合ゴーレム達が王都に向かってくる恐れもある。今、私達は報告を待ちつつ、いざという時の住民の避難についても話し合っているところです」

ヒカル王は弱気になっていた。どうしても西の国境線付近に現れたモンスター討伐の時のことを思い出してしまい、東の森に向かっている者達が心配で堪らなくなる。

「陛下、貴方様もご無理はなさらないで下さいませ。これより、私も東の国境線に向かいます。そこで隊員達と合流し、指揮を執らせて頂きますわ」

「分かりました…。よろしく頼みます」

「はっ。我が国を守る為、全力を尽くして任務にあたらせて頂きます」

シャドーレはそう言って頭を下げると、戦支度をする為『クロス』の宿舎に向かおうとした。

「あの…シャドーレ…!」

その時、ヒカル王が呼び止める。

「陛下、いかがなさいましたか?」

「シャドーレ…。必ず無事で帰ってくると約束してくれますか?」

縋るような目でシャドーレを見る。

だが、シャドーレが頷くことはなかった。

「申し訳ございません、陛下。それはお約束出来ませんわ。私はこの命に代えても桜色の都を守る覚悟にございます。…どうかお許し下さいませ」

「シャドーレ…」

彼女は既に兵士の顔をしていた。国も仲間もこの手で守り抜いてみせる。そんな気迫が感じられた。


「強いお人にございますね、シャドーレ殿は…」

シャドーレを見送った後もその場に立ち続けている国王を見かねて侍従が声をかける。

「我が国への忠誠心が人一倍強い上に、天界との戦を経験している…。彼女ならば全ての(ゴーレム)を討ち倒し、『クロス』の隊員達を連れて戻ってきてくれますよ」

「そう…だな……」

ヒカルもそう信じている。彼女さえいれば、国は救われると。

「でも……」

若き王は俯く。

「愛する女性を戦場へ行かせなければならないとは、こんなにもつらいことなのだな…」

もし自分が攻撃魔法を使えたらシャドーレとともに戦うことが出来るのに…。

そう言いたい気持ちを抑えて、ヒカル王は王宮の中へと戻るのだった。

ヒカル王にとってシャドーレという存在は、彼が大人になるにつれて少しずつ変化していきます。(※初登場17歳→現在18歳)

シャドーレが桜色の都に帰郷した際には「幼い頃からの憧れの人(無理だろうけど妃にしたい)」でしたが、次第に「自分の国づくりを応援してくれる良き理解者」という存在になり、今では「愛する女性」と明言するまでになりました。

しかし、その言葉を聞いたのは今のところ侍従だけ…。

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