第9話 茶会 チャカ要らずの平和な問答
「さて、そろそろお話を聴かせてもらおうかな」
夕飯を美味しく戴いた後、
僕とシノは先ほどの三人と対面していた。
暗いところでは全く姿が見えなかったけど、
帽子とか上着とかがなければ、
本当にただの15、16の少年たちって感じの風貌だなぁ。
とても悪事を働くとは考えられないけど…。
逆に普通の少年だからこそ...なのかもね。
「んじゃあ、さっき手渡していたものを見せてもらってもいいかな?」
「「「…」」」
「うーん…そうだ!」
僕はバッグから秘密道具を取り出した。
「それは…ちょっと待って、まさか」
「君達、温かいレモンティーはいかが?」
「「「???」」」
シノはカップとティーポットを見るなり、困惑と驚きの声を上げた。
「さっきまで寒かったし、折角だからね」
「「「何言ってんだこいつ…(小声)」」」
「な、なんで今…しかもなんでお湯が…」
「さっき沸かしてたんだよね」
「えぇ…(困惑)」
この世界でレモンティーを淹れるのは久しぶりだなぁ…。
世界によってちょっぴり味が変わるから、
いつもの味が出せないのが残念無念。
…。
……。
………。
「ふぅ…」
出来立てのレモンティーを少年達、そしてシノに配る。
「…あっ…私も…?」
シノはしばらくこちらをじっと見つめていて、後から反応した。
何か気になることでもあったのかな?
一人が
「毒とか入ってないよな…」
と小声で呟いた。
「まっさかぁ〜神聖なレモンティーに毒を入れるほど穢れてないよ〜」
一口飲んで息を吐く。
うん、まあまあの出来だね。
「ほら、毒なんてないでしょ?」
「…じゃ、じゃあ…いただきます…」
「おい、お前本当に飲むのか?」
「…大丈夫なのかよ...」
ズズ、と静かに啜る音が聞こえた。
「…美味しい…美味しい!こんなの初めて飲んだ!」
「あらそう?それは嬉しい言葉だねぇ」
「ほら、お前らも!」
「じゃあ…」
「そんなに言うなら…」
ズズ…。
「「美味っ!」」
3人とも目をキラキラさせている。
「私も…」
シノも続いて一口。
「…美味しい…。」
シノは、ほっと一息吐いた。
「な、なあ…もう一杯ないか?」
「おっと、もう飲んじゃったの?速いね〜」
「それぐらい美味しくて…」
「それは嬉しい言葉だね、ありがとう。まだまだあるから是非飲んでね」
「いいのか!?ありがとう!」
こんなに美味しい美味しい言ってくれる子たちは久しぶりだなぁ…。
玲文亭はいつも閑古鳥が鳴いているから、
みんなぐらいにしか出すチャンスないし…。
気づけば、ポットの中身が空っぽになっていた。
「あら、結構すぐ無くなっちゃった…」
「あっ、すんません!俺たちばかり飲んで…」
「「すみません!」」
「いいよいいよ〜、君達のために淹れたからね」
まあこれである程度は少年たちを落ち着けられたかな。
軽くお話しとか自己紹介もできたしね、それで得た情報を整理しようか。
3人は幼馴染で、村を出て、
駆け出し冒険者としてこの街でお金を稼いでいるそう。
若いのに偉いねぇ…。
リーダーで赤髪のロイドと、眼鏡をかけた茶髪のレヴェン、
そして背の高いイケメンで寡黙なルーイ…でこぼこに見えるけど、
みんな本当に仲が良さそうでいいなぁ〜。
よし、さっきまでの緊張もほぐれたようだし…
「じゃあ改めて…さっきは何をしていたか教えてもらえるかな?」
3人とも黙っちゃったなあ…。
どうしよう、レモンティーでみんな仲良し作戦の意味が…
と思っていると、
「石を…見せ合ってたんだ」
「…石?」
ロイドがポケットから怪しげに光る石を取り出した。
黒色に光る石だった。
黒光りしてるとかじゃなくて、
本当に黒く光っている石だった。
自分でも何言ってるのかわからないんだけどね。
「こんな石、初めて見た…」
「おぉ、普通に見るだけなら綺麗だけど…存在しているのに存在していないものを見ているような、そんな不思議な気分になる石だね…」
「あぁ、だから道端に落ちてるのを見た時に、思わず拾ったんだ」
「なるほどね…まあ、こんな石が落ちてたら誰だって拾いたくなるよね。
あっそうだ、ちょっとこの石貸してくれる?」
「構わないけど…何をするつもりなんだ?」
3人が不思議そうにこちらを見る。
さて…「相棒」君、遂に君の出番だよ〜。
そうして、バッグから「相棒」を取り出す。
「…それは…本?」
シノが不思議そうに「相棒」こと、「本」を見た。
「うん、そうだよ〜。けど、普通の本じゃあない…僕の『相棒』とも言える存在なのさ」
「相…棒…」
早速ページを捲る。
あのツールは…えーと…。
付箋つけときゃよかったと思うの何度目かな…とか
思ってるうちにみっけ。
「さて、この石の構造はどうなってるのやら…」
開いたページに例の石を置く。
「後は待つべし!」
「あの、これはどういうものなんですか?」
「これはね〜、今、石を置いてる右ページに物体を置いてしばらく待つと、
左ページにその物体がどんなものなのかわかるっていう便利道具なんだよ〜」
「なるほど…目的によってはとても便利な道具…」
ロイドとルーイが不思議そうに見ている間に、
シノとレヴェンが興味深そうに質問してきた。
神界だとみんな「本」に慣れすぎてるから、新鮮な感じ…。
引き続き2人の質問に答えていると、「本」の処理が終わったみたいだった。
「えーと…」
一つ一つ項目をチェックしていく。
温度、位相、密度、電荷、結合性、エネルギー状態、
波動特性、圧力、時間的安定性、配向…
この時点で10項目だよ…。
更に、詳細に項目をチェック…
なんてめんどくさいので、テンプレを使います☆。
前に同じような異常が起きた時のデータとっておいてよかった…。
というわけで、一枚捲ってテンプレートのページを開き、
処理を開始…で、完了!
だけど、もう細かすぎて数値を見る気にならないね…。
「やっぱり異常か…」
結果を見ると、この世界に存在しない物質の性質を有していた。
じゃあ修正対象か…。
「申し訳ないんだけどさ…この石を元に…ただの石に戻してもいい?」
流石にこんな不確定要素の多いものを放置するわけにはいかないし、
彼らに渡すなんてもってのほかだからね。
けど、いいって言ってくr
「いいですよ」
「あ、ホント?そんなにすぐ決断してよかったの?」
なんと、思考を遮る速度で返答が。
「思入れもないですし…あんなに美味しいレモンティーを飲ませてもらったので」
「なるほど」
なるほど、全くわからんって感じだけど。
まあ、レモンティー作戦さまさまってことでいっか。
「じゃあありがとうね、これは後で処理しておくよ。さて、もう夜も更けてきたし、
僕たちはここらで行くとするかな」
「うん、それがいいと思う」
「もういっちゃうのか」
「また会えばいいのさ」
「確かに!」
元気なロイドを見てるとこっちも元気を貰えるなぁ。
あっそういえば…
「なんでさっきは逃げたんだい?」
「「…えっと、それは…」」
「シノさんが…怖くて…」
「あー…なるほど…」
ルーイが小声で教えてくれた。
まあ目つき鋭い時ちょっと怖いもんね、
まあそれもチャームポイントだと思うけど。
「じゃ、僕たちはこれで!また会おうね〜」
「ああ!また!」
「あの本また見せてください!」
「レモンティー、ありがとうございました」
手を振る3人に、手を振り返しながら店を後にした。
ここまでご愛読ありがとうございました!
また来週、お楽しみに!




