第8話 追跡 つい席立っちゃう修羅場を横目に
酒場に入り、席につく。
うわぁ…ギルドと同じくらい蒸し暑い…。
無駄にガタイの良いオジサン達がガヤガヤと騒ぎ立てている。
うーん、苦手。
神の導きでも関わることは無さそうだね。
ズンズンと奥の席に進んでいくシノについていく。
慣れてる感じみたい。
さっきの尻尾を見るに、美味しい肉料理があるんだろうなあ、楽しみで仕方ないね!
入り口付近のようなガヤガヤさは少し減って、落ち着いた感じ。まあ、あくまで相対的に静かなだけだけどね。
ふう…。シノの向かいの席に座ると、息が漏れる。筋肉痛の中で街中を歩いたせいで結構疲れたな…。楽しかったのはそうなんだけどね、やっぱり1番は疲労かしら…。
「…大丈夫?」
「うーん…ぎりぎり?」
「筋肉痛なのに無理するから…」
シノはため息をつく。
「けど観光してないとさ、やっぱり気が収まんないじゃん?」
「…はあ…」
そしてまた、ため息をつく。幸せが逃げちゃうんじゃないか心配になるね。
「まあ特に悪いことはなかったし良いんじゃないかな!とりあえず注文しよう注文!」
そう言って、手書きの良さげなメニュー表を眺める。シノが好きなお店ってことで、予想はしてたけどお肉ばっかり…ま、いいんだけどね。
そうして、店員さんを呼び、とりあえず安くて少なそうなメニューを、シノは幾つか量が多そうなメニューを頼んだ。
「…」
「…」
しばし沈黙が続いていた。
「...その...」
シノが話し始めようとしたその時、突然、怒号と共に、何かが割れるような音が聞こえてきた。
音のした方向に向かおうとすると、
「いつもあんな感じだから...それに変にれてが目をつけられても困るし...」
とシノに止められた。
じゃあいいか、と言いたいところだけども...
バッグの中の「相棒」君が揺れてる時点で異変関連なのさ。
僕だって行きたくないけど、お仕事だから行かなきゃなんだよなぁ...。
「ごめんシノ、どうしても野次馬したいから一緒に来てくれない?」
「...はあ...」
ため息をつきながらシノは立ち上がった。
いやあこんなに我儘に付き合ってくれるだなんて本当にシノは優しい子だなぁ。
そんなことを考えつつ、二人で騒ぎの起こっている場所に向かった。
「おい!**********」
「なんだと!?お前こそ!************」
(良い子には見せられないよ♡)的な暴言が二人のオジサンの間で飛び交っていた。
飛沫が飛んでいるのが目に見えるぐらい声を荒げてるね、キッタナイ。
見た感じ、ただ冒険者が喧嘩しているだけのようで、異変が起こっているなんて
到底感じられないけど、「相棒」がそう言ってるし...。
...いやけどこれやっぱり普通の喧嘩じゃない?
内容くだらなさすぎるし、異変にしてはしょぼいし...。
気づけば、喧嘩は言い争いから殴り合いに発展し、さらには殺し合いへとなりかけていた...。
ま、武器を取り出していないだけマシだね。
あっ取り出しちゃった()
どうしようかなぁ...けど僕は止められないし、シノも止める気はなさそうだし...。
そんな風にしばらく修羅場を眺めていると、二人の奥に怪しげな人影を見つけた。
三人が固まっていて、全員目ぶかに帽子を被り、顔を隠しているように見える。
更には、何か怪しげな"ブツ"を交換しているようにも...。
「...あれ...」
丁度その時、シノが指を差しながら声をかけてきた。
なるほど、止める気がなかったんじゃなくて、シノも見つけてたってことか。
おっと、こちらの視線に気づかれてしまったみたい。
彼らは一瞬にして店から出て行った。
「流石に...あれで怪しいことをしてないってのは無理があるよね」
「うん、追おう」
「じゃあシノ...またおんぶしてくれる?」
「もちろん、れてが足手纏いになったら困る...」
シノはスッと慣れたようにしゃがんだ。
「なんかさ...出会って数日なのに僕の扱い雑じゃない?」
「...行こう」
「無視かぁ...泣けるなぁ...」
そんなこんなで、もう完全なる修羅場となってしまったお店を後にして、
月明かりに照らされながら、夜の街を駆ける。(シノがね)
ところで、寒いなぁ...本当に。
空気に刺されるようで痛い痛い。
適当なことを考えているうちに、さっきの不審者たちの姿が見えたとシノが教えてくれた。
さっきからずっとこちらから見えないよう屋根のあるところを伝って逃げてたらしい。
...暗すぎて全く見えないけどね、今どこ走ってるのかも正直わからない。
強いて言うなら屋根を飛び移ってるってことがわかるぐらい。
いくら星明かり、月明かりがあっても、暗いものは暗いのよ。
ホント、よく目で追えるね。
「今、路地裏に入った...私たちも降りよう」
急降下した後、一気にスピードを上げたのがわかった。
あれ全速力じゃなかったんだぁ...。
兎にも角にも、ついに行き止まりに彼らを追い詰めた...みたい。
「さて、これでもうどこにも逃げられないよ〜。何をしていたのか、教えてくれるかな?」
「...れて、逆だけど」
「いやいや、こっから後ろに指差してビシッと決めるのさ!」
「テ、テメェらなんなんだよ!」
不審者の一人が声を上げる。
「別に?ただの一般人だよ。ただ怪しいことをしてるように見えてね。
流石に見過ごせないかなぁと思ったのさ。」
「一体、あの店で何をしていたの?」
「「「...」」」
「まあまあ、一回お店に戻ってゆっくり話を聴いたら良いんじゃない?
寒いし...寒いじゃん?」
「...まあ確かに、そうかも...じゃあ戻ろう」
「あっ君たち、勿論逃げちゃダメだよ〜?この子に葬られちゃうからね」
「「「ヒッ...」」」
「いや、そんなことしない...」
まあ、シノは優しいから実際しないだろうけど、姿の見えない相手があんな高速で追ってきたら
そりゃあ怖いし、普通に葬られる可能性考えるよね〜。
というかそんなことは置いておいて、彼らがどんなことをしていたのかも置いておいて。
僕としてはまずご飯を食べたいなぁ...お昼食べてないからお腹空いてるし。
あっというか、途中退席で追加料金とか掛からなければ良いけど...。
ここまでご愛読ありがとうございました!
また来週、お楽しみに!




