第13話 よしなし 風通し良し/成し得ぬ再会(中編)
「いやぁ…相変わらず、さぁむいね。ここ」
「初めて来ましたが…。まだ登り始めた時点でこの寒さ…」
「か、風邪ひきそう…へっくしゅ!」
『第二回!! れての調査 in 第一世界の雪山 編!!』
を始めたは良いものの…やっぱり寒い!
寒くてしょうがない!
あぁ、シノにおんぶしてもらいたいな〜。
シノにおんぶしてもらっている時は
背中と尻尾がすごく温かくて…。
と思ったけど、走るのが早過ぎて発生した風が寒過ぎて、
プラマイ0どころかマイナスだったから、やっぱ遠慮しとこ。
「それにしたって、全然魔獣いないね」
「そうですね…。ただ大量の何かが通った跡はまだ続いていますし、もう少し上にいるのではないでしょうか。この山自体巨大ですし、頂上のあたりに全ての魔獣がいたとしてもおかしくないでしょうし…」
「実際この山ってどのくらい大きいんでしょう。この街の本を読みましたけど、ただ巨大で危険な山としか書いていなくて…。あとは俄かに信じがたい伝説だとかばかりで…」
「そういえば、シノの山小屋も結構高いところにあると思うけど、頂上は見えなかったなあ…」
「更に謎が深まりましたね…」
「まあ謎は謎の方が面白いってものだからさ。いいんじゃない?」
「た、確かに…そういう考え方もあるかもしれませんね…」
「それに吹雪が凄かったし、調べようがないと思うよ〜」
「そうなんですね、けどいつかは見てみたいです」
「俺も見たい!いつか見にいこう!」
「うん…俺も…」
「うんうん、何か青春って感じがしていいなあ…」
僕は青春というものをしたことがわからないけどね。
寒さを紛らわせつつ雪山を登り続けていると、
気付けば日が暮れそうになっていた。
「少しではありますが、吹雪になり始めましたね…。日も暮れましたし、そろそろ野営の準備をした方が良いかもしれません」
「そうだねぇ…。けど、寒さを凌げるとこを探さないと。テントはないし、テントの材料になりそうなものもないし…。どうにかしないとみんなで仲良く冷凍されちゃう!」
「あっ!あんなところに洞穴がある!れてさん、ちょうど良くないすか?」
ロイドが指差す先には、
絵に描いたような大きな洞穴があった。
「おお!よく見つけたね!ご都合主義みたいに感じるけど多分大丈夫でしょ!」
「それに…ここより上は…もっと吹雪が強くなると思いますし…」
「はい、私もそう思います。何が出るかは分かりませんが、他に休む場所もなさそうですし、仕方ありませんね」
マスターはルーイの発言に頷くと、
先頭に立って件の洞穴に向かって歩き出した。
洞穴の中をランタンで照らすと、
予想以上に奥まで続いていることがわかった。
「結構奥行きがあるようですし、寒さを凌ぐにはちょうどよさそうです。危険がないか、もう少し奥を探索しましょう。」
「く、暗いですね…」
「いやあ、いかにも何かが出てきそうだなあ」
これはフラグかしら。
けど、あの跡はこの穴に続いてなかったし、
流石に魔獣とかはいないと思うけど。
あっそういえば…
「魔獣ってどういうのなの?見たことなくてさ〜」
「「「「えっ…」」」」
「ゑ?」
一瞬、外の吹雪の音しか聞こえなくなった。
「あ、もしかして見た事ないとまずい感じ?」
「いえ、そういうわけではありませんが…」
「ただ見た事ないってのはなかなか聞かないんで…」
「た、例えば、相当身分が高く、屋敷や城から出たことがない方とか…でも、そういう方でも献上品で見ることが多いので…」
「本当に…珍しいです…」
「うーん…魔獣って結構ポピュラーなんだ…」
この世界には来たことなかったし、
知識をアップデートしなきゃだなあ…。
「ちなみに、街を攻めてきた魔獣にはどんなのがいたんだい?」
「えーと、デカくて白い狼とか…デカくて白い鳥とか…あと、デカくて白いドラゴンとかっす」
「へ〜。この辺りの魔獣ってみんなデカくて白いんだね」
「いや、まあ、そうなんですが…」
「な、なんて雑な説明…」
「正確には、氷系統の魔術を扱う戦闘能力の高い狼の魔獣、スゥードウルフ。風系統の魔術を扱って飛ぶ翼を持たぬ鳥の魔獣、シルバーモア。そして、氷系統と風系統の魔術を扱うドラゴンの魔獣、シルバードラゴン…今回街を攻めてきたのは目測の限りでは多くが中型でしたので、ミドルシルバードラゴンに当たりますね」
「詳しいですね、マスターさん!」
「ええ、かつては冒険者だったのですよ」
「俺達は見てないすけど、街の人達がどこぞの店主さんが守ってくれた!的な話をしてたの、マスターさんだったんすね!」
「マスター凄いじゃん、それだけ強いってことでしょ?なんでやめちゃったのさ〜」
「出会ったんです…レモンティーに。その時から、レモンティーを極めようと、喫茶店を開いたんです。潰れましたが…しかも物理的に」
「なるほどね〜。お店の件は残念だったよ。また立ち寄ろうと思っていたからさ」
「ありがとうございます。また別の場所で同じ店を開きますので、その際には是非」
「うん。是非とも行かせてもらうよ〜」
そう言うと、マスターはにこやかな笑顔を見せてくれた。
レモンティー狂とは思えない良い笑顔だった。
再び歩いていると、突然マスターが足を止めた。
「皆さん、警戒してください。魔獣かもしれません」
「「「…!」」」
ロイドとマスターは剣を抜き、
ルーイは盾を構え、レヴェンは杖を取り出した。
何だか勇者パーティみたいでかっこいいね、
火力ゴリ押しパーティ感はあるけど。
「僕は戦えないから後ろにいるね〜」
「あっ戦えないんすか?」
「てっきりシノさんといるのでれてさんもお強いのかと…」
ロイドとレヴェンがそう言い、ルーイも頷いた。
「強かったら一人で勝手に雪山に突撃してたよ〜」
「た、確かに…」
「あっマスター、何かわかった?」
そう言うと、三人は急いで武器を構え直した。
「恐らくあれは…シルバーモアかと。数体いますが全て横たわっており、就寝していると思われます。シルバーモアは就寝中には滅多に起きないとされているので、今のうちに討伐しておくのが良いかと」
「シルバーモアは気性が荒いですもんね。こんなところで暴れられると、落石が降ってくるかもしれません…」
マスターとレヴェンが話していることを耳に挟みつつ、
チラッと件の魔獣を見てみる。
ダチョウだ…。
全身が白くてもふもふのダチョウだ…。
良い感じに毛が生えていて、
嘴をオレンジにしたらアヒルっぽくて可愛いかも…。
ってよく見たら…
「なんかさ…奥の方にいるシルモアちゃん赤くない?あれじゃあシルモアちゃんじゃなくて、レドモアちゃんだね」
「「赤いシルバーモア?」」
「あっホントだ、赤いやつがいるっす…」
「私が調べてみます…」
マスターが剣を構えながらシルバーモア達に近づいていき、
みんなで少し離れたところから付いて行く。
「…死んでいるようですね…。他のシルバーモア達にも、頭に何かが刺さって出血した痕があります。恐らく、全て何者かによって殺されたようです」
「あらそう…。ちょっと動いているところ見たかったな…」
「洞窟崩れますよ…」
「というか、多分シノじゃないかな。そもそもここの辺りに来る奴なんてきっといないし。それに…」
「それに?」
「僕のもふもふセンサーが反応しているからね!そう、ここら辺から!」
「な、何ですかそれ…」
床に視線を落として、もふもふの気配がする場所を探す。
そうすると…
「あった!これはシノの尻尾の毛だよ〜!先端だけ綺麗な銀色になっているマロン色の毛なんだよね。何か匂いをシノっぽいし」
「「「「えっ…」」」」
「まあけど、この辺りに居たら察知して駆けつけてくれるだろうし…。どこに行ったんだろうなあ…」
「コホン…。血も乾いていますし、かなり数時間は経っているかと思われます」
「もしかしたらシノも何か追いかけたりしていたら、数時間じゃあもうずいぶん遠くまで行ってるよ。何はともあれ、ここが行き止まりだし、眠るには丁度良いんじゃないかな?」
「え、シルバーモアの前ですか?」
「い、いくら死んでいるとはいえ、それはちょっと…」
ルーイを見ると、絶対嫌だ、という顔をしていた。
「まあ流石に嫌かあ…」
「では、もう少し手前にしましょうか」
「うん、そうだね。んー!やっと眠れそう〜」
「俺も歩き疲れたっす…」
「そういえば、何も食べていませんでしたね。あちらで焚き火をして、折角ですしシルバーモアを焼きましょうか。食料は節約しなければなりません」
「おお!いいね!じゃあ早速運ぼう!」
そうして先ほどの場所に目を向ける。
あれ?
「赤い子が、いない?」
「れてさん!!後ろっす!!」
「おっと…これは…」
振り返れば、目の前には死んでいたはずの赤いシルバーモアがいて…。
「まずいかも」
ここまでご愛読ありがとうございました!
また来週、お楽しみに!




