第11話 再び 臭いものを閉じる蓋/度重なる苦労
やあみんな!れてさんだよ!
どうやら大変なことになっちゃったみたい!
どんな状況かって?
いやぁ僕も知らない…。
「れ〜て〜様〜?どこ向いてるんですか?私が話しているんですから聞いてください!」
「ねえ壊斗、今回って何が問題なの?」
「今!話して!いると!今言いましたよ!?」
「あらそうなの?ごめんね〜」
「はあ…」
壊斗が手袋をつけたまま目頭を抑える。
「あれ?その手袋、料理の時に使ってるやつじゃない?」
「えっ…わ、私としたことが…変えてきます…」
壊斗がそんなミスをするだなんてそんなに重大な出来事なのかぁ…と、
珍しく皺のできた彼の執事服を見ながらそう思った。
「さて、気を取り直しまして…」
いつもの白の手袋をつけ、服の皺も直して、
シャキッとした壊斗は、
今回のトラブルについて丁寧に話し始めた。
「今回発生した問題は普段の物質の構成変化などとは、その内容も、そしてその規模も比較になりません」
「規模っていうのはいろんな世界で同時発生しているっていうやつだっけ…けどその内容は聞いてなかったね。どんなやつ?」
「一言で言えば…部外者の侵入です」
「はへぇ…(他人事)」
「はへぇ…じゃないですよ!そもそもれて様の管理している第一世界も同じ状況なんですからね!?わかってます!?」
「あそっか、そういえばそうだね。けど、どうにかなるんじゃない?ほら『本』でチョチョイと…」
「…れて様、『本』に部外者を追い出す機能は備わっていますか?」
「ないね、じゃあダメだ。殴り込みに行かないと…」
「何故作った本人が忘れているんですか…?それにれて様じゃあ一般人にすら勝てないんじゃないですか?」
「いやいや、そんなことないよ〜。銃あるよ?」
「狙って当てられたことは?」
「ほとんどないや、じゃあダメだ。接敵したら殴らないと…」
「はあ…」
「けど大丈夫!あっちに仲間できたから!その子に全員ぶっ飛ばして貰えばOK!」
「可哀想に…その方、こんな人の仲間になってしまったからには苦労しそうですね」
「やーん、辛辣♡」
「…何はともあれ、直接侵入者を捕縛する必要があります」
「そうだね〜僕の家に勝手に入られているみたいなもんだし…」
「ええそうです、それ故迅速な対応が…」
「チャイム鳴らして欲しかったね。あと手土産持ってくるもんだと思うけど…」
「…はは。鳴らしていきましたし、持ってきましたよ…」
「あらホント?」
「議会等の神界における行政機関の建物が複数爆破され、神界の緊急警報を鳴らし、市民に混沌と恐怖を手土産にもたらしました…」
「うわぁ…センスないんじゃない?」
「…。…いえ、れて様はそういうお方でしたね。冷静であるだけいいとしましょう…。そして、《《あのお方》》からも緊急集会要請が届いております。直ちに向かった方がよろしいかと」
「ゴッちゃんが?いや、そんなに大変なら当たり前か〜。けど僕第一世界行きたいんだよね…」
「またそのようなことを…。いいですか?れて様は神徒なのですよ。あのお方、神の配下であって、そのようなくだけた話し方では他の神徒の方からの印象も…」
うーん…どうしようかしら。
まあけど神界崩壊とかいう事態でもなさそうだし、
一任して良いか。
「兎にも角にも準備しないとか」
「ですから…って行く気があるのなら良いのですよ…」
「壊斗、ゴッちゃんに伝言よろしくね。ちょっと直してくから、あとは頑張れって」
「まさか準備って、第一世界に行く準備だったんですか!?」
「うん、だってどうせ僕行っても邪魔にしかならないじゃん?」
「それはそうですが…」
「あらひどい。それに僕の仕事は技術職みたいなもんだし、話すのは話すのが得意な人に任せよう。適材適所ってやつさ」
「…はあ。まあ、どうせ止めても行くんでしょう?止めません」
「いやいや、壊斗なら止められるでしょ?」
「はい、れて様は虚弱ですから。ですが結局正しいのはれて様でしょうから」
「貶されてるのかな?信頼されてるってことかな?まあ壊斗が仲間で僕は嬉しいよ」
「…。たまには良いこと言いますね」
「んふふ。そうでしょそうでしょ」
「何はともあれ、無事であることを祈っています」
「うん、ありがとう。じゃあ行ってくるね〜」
「はい、行ってらっしゃいませ」
というわけで地下室に向かう。
カバンを開いて確認する。
チョコバー、銃やナイフなどの武器、ポットなどの茶器、
レモンに茶葉…よし、準備OK!
地下室に入り、事前に準備していた「本」の転移システムを起動する。
さて、大体町の付近に出るはず。
シノとは意外に早い再会になるかな…。
あっ…借りてたお金…。
まあ…また今度でいいか。
「猫夢、いる?神殿に行くよ」
「いるよー!なんで神殿に行くの?」
「れて様にあのお方への伝言を頼まれてしまってね」
「へ〜…って主いたの!?なんで教えてくれなかったの!?」
「だってれて様と猫夢、二人ですぐ遊び始めちゃうだろ?」
「ダメ〜?」
「お仕事の話の時はダメ」
「ケチ〜」
「確かにケチではあるけれども…まあとにかく、れて様の代わりに神殿行かなきゃいけない」
「私必要〜?」
「いや、ただ最近お出かけしていなかったと思って」
まあ今とてもお出かけなどと行っている場合ではないんだけど…。
「やったー!お出かけ!」
「じゃあ準備してきて、すぐ出るよ」
「はーい!」
「…はあ」
いつだって神殿は緊張する…。
あのお方がいらっしゃる、更には多くの神徒の方々も…。
一介の神眷にはあまりにも荷が重い…。
神徒ですら恐ろしいのに…。
これから会いに行くのは、最上位の、神。
思い出すだけで…うっ。
どうにか可愛い猫夢で場を和ませて、
あの恐ろしい視線を回避しなければ…。
すまん…猫夢。
「じゃあ行こうか」
「うん!」
…戸締りよし。
まあ神界の有力者が訪れると噂になっている玲文亭に
盗みに入る恐れ知らずなどいないとれて様はおっしゃるけれど、
何があるかわかったものではないし…。
そして心配は他にもある。
神殿に行くには爆破された建物の前を通らなきゃいけないけれど、
純粋な猫夢にはあまり見せたくない…。
どうしたものか…。
玲文亭から街に出るには時間があるから、
どうにか…と思考を巡らせるが、
全く良い解決策が思いつかない。
仕方ない、完全に回避するのが無理であれば、早歩きで去るか、
鬼ごっこだとか言って目の前を走っていくか…。
気づけば街に入るところだった。
あぁ…どうしたものか…。
ここまでご愛読ありがとうございました!
また来週、お楽しみに!




