天使な婚約者が愛おしい
プレゼント、そう考えると何をあげれば良いのか、と言う考えが毎回くる。
それは誰しもが同じ気持ちにはなると思う。家族や友人の誕生日やクリスマス、渡すものを考えると良いものをと考えると迷路に迷い込む感覚に陥る。
喜んで欲しい、と言う気持ちもあるが無難で要らないとは思わない物をプレゼントしようと言う気持ちが以前はあった。
だが、恋をした今は、優姫への誕生日プレゼントを考えると喜んで欲しいと言う気持ちが更に大きくなって、色んな考えが頭の中で巡り何をあげれば良いのかが分からなくなってしまう。
「アイツの事だから嫌いにはならないだろうが、微妙だったら表情に出そうとしないだろうしな」
ショッピングモール内を1人歩きながら、美琴は囁く様な声で呟く。
春休みに入り1人、優姫のプレゼントを買いに出かけたものの大財閥の御曹司の行く宛は何故かショッピングモールだった。
美琴からすれば高価な物をあげたい気持ちもあるが、学生の間は無駄に高価な物を与えるのは避けたいと言う気持ちがあったのだ。
だが、来たは良い物の美琴は何をあげれば良いか、頭の中ではまだ浮かび上がってなかった。
「ハァァ、、前だったらもう少し早くに渡すの決まったのになぁ」
クリスマスプレゼントを選ぶ時は好感度とか気にせず選んでいたから、喜ぶだろうと思って選んでいた。
だが、恋をしてしまった今、安易に選べる程器用な性格でも喜んで貰えるだろうとポジティブな性格ではない。優姫に何をあげるかを考えるのに4日を使ったぐらいには不器用だ。
今までは無意識にやって来た事だって意識をする。
親友2人に相談した上で今だにプレゼント選びに混乱している美琴は、周りのショッピングモールに訪れていた人達の目にはため息をついながら歩いてる男子高校生だと映っただろう。
美琴からすれば、それが気にする暇がないほど、優姫の誕生日は数日後に迫っていたのだ。
「ケーキの予約はしたし、あとはプレゼントだけなのにな」
焦りと不安からか美琴は手を頭に置き勢い良く掻く。
するとキラッと手首が光ったのが美琴の視界に入り、手の動きを止めて、手首を顔の前にやる。
そこにはクリスマスプレゼントで優姫から貰ったブレスレットだった。付けていた事を忘れていたらしい。だが、美琴はこれを見てある考えが頭の中に浮かんだ。
ズボンのポケットからスマホを取り出し、このブレスレットのブランドを検索する。
手っ取り早い方法で優姫を1番喜ばせられる方法を思いついた。お揃い、と言う言葉は時に色んな方法に活用が出来る。
ブランドの公式ホームページをクリックし1番近くのお店のオリジナルアクセ制作の明日の予約欄を見れば幸にも予約が空いていた。
「よし、これにしよう」
そう呟いて、予約をしスーパーでアイスを買って帰路に着いた。
優姫に勘付かれない様に接するが、優姫の性格を考えれば多少なりとも感じ取ってはいるだろうし、自分自身の誕生日を忘れている訳ではないだろうと、思いながら玄関扉を開ける。
「お上手ですね、井原さん。本当に初めてですか?」
「初めてですよ。そんなに上手いですか?」
自分自身とは真逆とも言える綺麗で豪華な空間のとある室内で細かい作業をしているのは大変慣れない。
次の日、予約時間に訪れればまさかのオーナーの女性に直々に制作を手伝って貰えるとは思わなかった。慣れない作業をしながらもちゃんと教えて褒めて貰えるのは結構気持ちが良いが、優姫の身内、知り合いと言う事もありボロが出ないかと言う不安もある。
桜のチャームは難なく出来はないがある程度綺麗に作れたが、薔薇が本当に難しい。
今更ながら、井原(茨)である事を恨む。
「それにしても男の子1人で来るなんて珍しいわね」
「そうなんですか?」
「えぇ、殆どが彼女さんや奥さんと一緒に来る男性だったりするから、貴方はとっても珍しいわ」
「、、、、そうなんですか」
美琴はオーナーの言葉に店内を見渡せば、その言葉の通り、2人で来店しているカップル達ばかり、美琴だけが1人で来店していると言う可哀想な感じになっていた。
改めて場違い感を自覚したのかそれとも慣れているのか、絶妙な表情をする美琴。それを見て、オーナーはクスリと溢れる笑み。
多分心情を察せられたのだろうが、あまりにも絶妙な表情だったから笑ってしまったんだろう。
「ふふっ、、、、桜と薔薇のチャームを使ったネックレス、って言われた時、以前来店したお客さんを思い出すわ。桜と薔薇のブレスレットを作りたいんです、って」
「!」
「そう、、、、今、貴方が利き手に付けてるそのブレスレットね、あの子が作ったのは」
オーナーの言葉にバッと思わず顔をあげオーナーの顔を見る。
その顔は全てを理解してる、と言いたげな表情で最初から気づかれていたのかと思うと更に恥ずかしさが伴う。確かに利き手であれば見えやすくもなるし、桜と薔薇の組み合わせのブレスレットなんてそうそうある訳ではない。
そこから行き着くのは当たり前だろう。
付けなければ良かったとしれないな、と思うがそれでも桜と薔薇の時点で勘づくか。
「井原、って言う名前を聞いた時もしかしてって思ったけどそのブレスレットを見て確信したわ」
「、、優姫には言わないで下さいね。来た事」
「えぇ、勿論。いくら身内でもお客さんの情報は売れませんから」
「それは助かります」
言わないと経営者としての顔で宣言してくれた事に、ホッと胸を撫で下ろす。
井原と言う情報だけでもしかして、と思われるのは勘が良いと言うよりも、身内だから優姫が婚約している事やその相手の家柄は伝わっているの可能性を考える。
その点を考えれば、優姫の姉みたいに認めません、タイプじゃなくて良かった。
「でも、井原って違う文字にすると植物の茨になってそして薔薇にもなる。だから、桜と薔薇って考えるとなんか良いわね」
「あぁ、元々は茨って苗字だったらしいのが段々と今の苗字に変化した、らしいです」
「へぇ、、、、普通は逆よね」
「、、、、ですね」
オーナーの言葉に確かにって思ってしまった。
まぁ、昔から薔薇が家紋なら潔く茨のままにすれば良いのに、と思ったりもしていたが、まぁどっちもどっちかと今は思っている。
そんな会話をしてやっとの事出来上がったネックレスは初心者で手伝って貰いながらもそれなりに上等な品になったとは思う。
これを渡した時の優姫の顔を想像するだけで愛おしいと思うのは末期だろうか。
いや、恋と言うのはこんな考えが常時起こる事、なのかもしれないな。




