天使な婚約者の独占欲
「男だからって力仕事は安直だろ」
「アンタ簡単に持てるでしょうよ」
「ゴリラに言われても」
「ゴリラじゃないわよ!!!!!!」
手をクロスさせて肩に手を置き、首をゴキゴキと動かして優姫以外の生徒会役員と廊下を歩く。使わなくなった物の入った段ボールを運んだ帰りで重い物を持った疲れが早く出た。
リュックを背負って昇降口に歩いている中で溢れた言葉だった。
軽く文句を言えば案の定正論に近しい言葉を即座に言ってくる明里に流石、と思ってしまった。
揶揄う様な事を言えば隣で大きな声で反論する所が、ツンデレだなぁという感想になるが耳がキーンとなる。
そんな様子を見ていた2年生天使コンビの反応は非常に穏やかだった。
「ふふっ、仲が良いわね。でも、こんな姿優姫ちゃんが見たら嫉妬しそうだわ」
「し、嫉妬、、想像出来ないけど、見たい様な見たくない様な」
「嫉妬って、、、、、、、、丹波に?」
「丹波にってどう言う事よ!!?」
純恋からの優姫の嫉妬と聞き、咲希同様想像は出来なかった。
いや、ムスッとした顔を何度か見た事があるがアレが嫉妬なのかは分からない。だが、見たいか見たくないと聞かれるのであれば絶対に見たくはないと答えるだろう。
美琴は優姫が明里に嫉妬をする、と言う事が良く分からなかった。
お互いにそんな気持ちは勿論ないからこそ美琴は優姫が明里に嫉妬する様子が思い浮かばなかったから、怪訝の顔をする。
そんな事を明里も分かっているからこそ、大きな声を出して反論する。
美琴は人差し指で耳を塞ぎながら廊下の角を曲がると、視界に入った光景に美琴の足が止まる。
それに釣られるかの様に明里、純恋、咲希の3人の足が数秒遅れて足を止めて美琴が視線を向けている方に3人同時に視線を向けた。
「え、桜木さんってそのアニメ見てたの!?俺も俺も!」
「そうなんですか?偶然ですね、あまり人が見ないアニメだと思ってたのですが。英語でしたし」
「いやぁ、英語喋られたらカッコよくね?って思って見てたんだよ」
「そう言えば竜胆が一時期変に熱中してた時あったかも、僕も付き合わされたし」
楽しそうに竜胆と蓮華と会話をしている優姫の姿が目に入った。
それだけならまだ良い。竜胆の手が、優姫の肩に置かれている事が重要な話だ。優姫も気にしてない顔をしているが、それでも男に簡単に体を触らせていると言う事が頭の中で浮かんだ瞬間、あの空間を壊したい、って思ってしまった。
ただの接触、お互いに何とも思ってない、思ってなくても、何だかなぁ。
蓮華は勿論竜胆だって悪い訳じゃない。
だが、自分以外の誰かに簡単に触れられているのが嫌なんだ。目線が下を向き俯く様に顔を逸らす。見続けたくない、ほのぼのな光景だとしても。
こんな考えになる自分が嫌になる。
「、、、、美琴君独占欲が強いんですね」
「、、、、は?はぁ?、ど、独占欲?!」
いきなりの純恋の言葉に上手く理解出来なかった美琴だったが理解した瞬間、勢い良く顔を上げ純恋の方に視線を向ける。多分今の顔は動揺と混乱と図星を突かれた様な入り混じった表情をしているだろう。
信じれないって気持ちとまた純恋に感情の答えを言われたって言う気持ちになり、頭の中が大混乱を巻き起こしている。
「ふふっ、そうですよ。さっきまでの美琴君の顔、優姫ちゃんを独り占めしたいって顔でしたもの」
「確かに、そんな顔してましたね。優姫ちゃんが取られると思ったのでしょうか。拗ねた子供みたいだったよ」
「ッ〜〜、、、、先輩方あまり揶揄わないで下さい」
純恋と咲希からの言葉に顔が熱くなるのが感じる。
図星だったのもあるけど、子供見たと思われているのが恥ずかしくてだけど揶揄われているのが照れをも感じる。周りからこうやって揶揄われると、さっきまで抱えていた重い感情が晴れる様な感覚になる。
だが、顔が赤いのを見逃さない人間が隣に居た。
「フッ、アンタ顔真っ赤じゃない!図星ってやつね!」
「うるさい、ゴリラ」
「ゴリラじゃないわよ!!」
ニヤニヤと表情が緩みながらもツンデレを忘れず揶揄ってくる明里に即座に反撃という名の揶揄いをすれば顔を真っ赤にしながらツッコんで来る。
美琴はその様子に笑みが溢れてさっきまで抱えていた感情がすっかりなくなった表情になった。
それを見て純恋と咲希は目を合わせて安心した顔をする。
それに気付いたのか美琴は、さっきまでの自分は少しおかしいと自覚し手で髪を軽く掻く仕草をする。
「独占欲って悪い事じゃないと思うわよ。寧ろ大好きだって大切だって、誰にもあげたくないって気持ちの表れだと思うもの」
「、、、、谷宮、先輩」
顔を覗き込んで優しい顔で言う純恋に一瞬たじろぐ。
至近距離からの美人は流石に動揺する。慣れたとしても。だが、純恋の言葉に何故かホッと心が温かくなり軽くなるのが分かる。
「そうだよ、好きな人を独り占めしたいって気持ちは私も分かるから!」
「椿原先輩」
純恋の言葉に賛同するかの様に「大丈夫」と言うかの様な表情と動作をする咲希を見て少し表情が和らぐのが分かる。
流石伊達にではないがたった一年でも経験の差を感じた。
そして最後がツンな雰囲気を放つ明里、だ。
「ふんっ、そうやっていちいち気にしたら周りがジメジメするのよ!アンタは似合わないわよ!と言うか私の彼氏も独占欲強いから、、、、、、、、美琴も気にしなくても良いと思うわ」
「ゴリっ、、丹波」
「今ゴリラって言いかけたわね!?」
ツンツン多めだが最後の最後で慰めと言う名のデレがきたので恒例の揶揄いをしたら、即座にツッコんでくる明里に心の中で感心する。
お笑い芸人に合っているな、と思うが見た目を考えるとすぐにタレントや女優業が参り混んできそうだな、ない事を考える。
だが3人のおかげでスッキリとした気持ちになり、廊下を再び歩く。
「そうなんですよ、あの場面は本当に面白かったんで、、美琴君!」
「馬鹿の相手お疲れ様」
「いえ」
歩く音が静かにだけど優姫の耳に届いたのだろう、すぐに美琴の方に視線を向け軽い足取りで美琴の元に駆け寄る。
その顔は好きな人に会えた嬉しさとまるで飼い主に会えた犬の様な表情だった。
それが可愛いと美琴の恋心と小動物の可愛さで心をくすぐり、優姫の頭に手を置いて優しく撫でると、更に嬉しそうな声を出して優姫は撫でられる。
その光景を見た竜胆と蓮華は目を合わせる。
美琴の気持ちを知っているからこそ、此処は揶揄う場面ではないと察したのだろうが、竜胆は何かに気づく。
「なぁ、蓮華」
「ん?何?」
「いや、、、、なんか俺ら当て馬?にされてない?」
「?何言ってるの?風邪でも引いた?」
「いや!引いてねーし!!」
竜胆の疑問にいつも通りの馬鹿な発言だと思ったのか、蓮華が揶揄えばツッコむ。
そんな2人の様子を気にしていないのではなく気付いてない美琴は愛おしそうな目で優姫を見つめて、頭を撫で続けていた。
美琴にとっては慣れない恋心に振り回されているからこそ、色んな感情が埋めき合うが、優姫の前だとそれが全て馬鹿らしく思えてくるほど優姫を愛おしく感じているのである。




