天使の婚約者は揶揄われる
「最後の最後にこれって」
「まぁ良いんじゃない?」
笑顔でそんな事を言いながら
あの日、優姫に恋をしていると自覚してから数日が経ち終業式終わり、生徒会室での大掃除をしながら使わなくなった物を段ボールにまとめていた。
優姫以外の生徒会役員が生徒会室に集合して掃除をしているからか少し人数の割合が下手じゃないかと思うが、優姫と2人っきりだったら心臓が終わっていたので助かった様なものだ。
2日後には優姫の誕生日になるはずなのに、依然、優姫に対して対応が以前よりもだいぶ拙くなっているのが色々悔しい。
段ボールにガムテープを貼り終わり少し一息しかけると、隣に【牡丹の天使】ことツンデレ丹波明里が来る。
この時点で嫌な予感がする。
「そう言えば、アンタ優姫の事好きになったんだって?」
「は?、、、、丹波何言ってんだよ」
「とぼけても無駄よ。蘭先輩経由で知ってるんだから」
いきなりの発言に「何言ってんだ、コイツ」みたいな顔になってしまった。だがすぐにとぼけようとするがそれを見越しての逃さない眼光と発言に捕まってしまった。
蘭先輩経由、と聞いてすぐに1人の馬鹿が頭の中で浮かび上がる。
身内からだと易々と教えるとは、後で説教だなと心の中で思いながらため息混じりに口を開く。
「、、、、あの馬鹿竜胆」
「???どう言う事?」
「あら〜、そうなのぉ〜」
「そうらしいし」
察しのついてない【椿の天使】こと真面目先輩椿原咲希と対照的に【菫の天使】こと穏やか先輩谷宮純恋は完全に理解した顔をこちらに向けてくる。
別にバレるのはまだ良い、まだ良いとして揶揄われる未来しかないと言っても過言だ。
美琴は思わず目を逸らすが、三方向からの視線に逃げられる訳もなく。
バレてしまって誤魔化せば後々うるさくなりそうなメンツだと分かっていたからだ。興味津々の顔をする咲希、逃すとでもと言う様な顔をする純恋、そして何故かムスッと美琴を見つめる明里と言う側から見れば羨ましがられる構図だ。
美琴は心の底からゲンナリしているが。
「へぇ〜、美琴君やっと、そうなの、いつ?」
ニコニコしながら話しかけてくる純恋がなんだか腹黒さを感じる。絶対に言わせるぞ、と言う前生徒会長の様な圧、やはりカップルは似るのかなんて心の中で思いながら強く唇を閉じる。
「、、、、」
「2人揃って休んでた日に自覚したらしいですよ〜」
「おい」
「本当の事しか言ってないし、あたし」
「嘘、おめでとう!!」
「いや、まだおめでとうと言われる事はしてないんで」
明里の暴露に加えて嬉しそうな顔をして祝福してくる咲希の対処に早速疲れが出る美琴。
揶揄われる事は覚悟は一旦していたらしいが、ここまでの威力とは思わなかったらしい。
優姫の気持ちを応援していた明里からすればやっと自覚した美琴はカッコウの揶揄い相手であり、早くくっ付けとも思っているのだ。
咲希と純恋は勿論優姫の事大切人間であるからこそ、その優姫を幸せに出来るのが美琴だけだと分かっていた。
3人にとって中々自分の恋心に自覚をしない美琴は焦ったい相手でもあったのだ。
「で、いつ告白するのよ」
「急かすな、いつってこっちの余裕って言うのを考えろよ」
「ハァ!?1年以上待たせておいて、そっちの都合は優姫には関係ないのよ!」
ズバッと明里に言われて思わずたじろいでしまって一歩後ろに下がってしまう。
確かに優姫も告白の答えを待ってくれてずっと気持ちを伝えて来て貰ったのに、こっちが待たせるのはお門違いだと言うのは分かる。
だがそれでもいきなり告白の答えの返事を出来る程余裕のある性格ではない!と断言したいがそんな雰囲気を明里が出してくれない。
「まぁまぁ明里ちゃん、落ち着きなさい。美琴君だってまだ告白の余裕もないし少ーしだけ時間をあげましょう」
「そうですよ、気持ちをズバッと伝えられない男性だっているらしいですし!」
「フォローされてるはずなのに、なんか少し虚しい」
「アンタは恵まれてんだからね!!って別にアンタを励まそうとか思ってないんだからね!」
「はいはい、ツンデレツンデレ」
フォローされているはずだが、揶揄われている感覚になって少しむず痒くなってしまう。それに、明里の言葉に軽くいじる様な返答をしてしまうが、明里の言葉を良く考える。
恵まれてる、確かにそう思う。
好きな人と婚約して同棲して、多分そこらへんの片思いをしている男子高校生よりかはだいぶいや途轍もなく恵まれてるんだって分かる。
多分だが、優姫もこんな事を考えていたんだろう。今、両思いになってだけどそれを伝えられないのは、心が弱いとかではなく勇気が出ないんだろう。
断られるとか引かれるとはそんな事は絶対にない、とは言えないが優姫がそんな事を言う未来は見えない。
でも言えないのはただ単に美琴に覚悟がまだないから、だろう。
「俺だってちゃんと気持ちは伝えたいですけど、、、、今までの事を考えるとなんか虫が良いと思われるんじゃないかって」
美琴は顔を俯かせて、ボソボソと声が小さく言う。
ずっとずっと諦めずに気持ちを伝えて来てくれた優姫に両思いだと伝えて受け取ってくれてもそれでも虫が良いと思う時があるかもしれない。
美琴がグッと唇を噛むと、ガッと両肩を勢い良く力強く掴まれる。
「何それ!馬鹿じゃないの!!!確かにあたしがそんな事をされたらちょっとイラって来るけど、ずっとずっと水やりをして来た種にやっと芽が咲いたのよ!優姫が嬉しくない訳ないでしょ!」
「!」
「そうやって自分を卑下したりネガティブな事考えてたら優姫ちゃんが悲しむよ」
「そうですよ、あるか分からない事を考えて続けていれば、気持ちなど伝えられないですよ!」
「、、、、」
明里の言葉に目を見開く。
ネガティブ、そうかネガティブな事を考え続けて、勝手に優姫の気持ちを決め付けてそれは優姫が1番嫌だと思って来た事じゃないか。
自分の気持ちを守る為だけに勝手に色々考えて、最低だ。
でも、それを言葉にすれば更にこの3人から色々言われるだろう。怒られるだろうし、絶対に呆れられるだろうし、辞めよう。こんな考え。
「でも良く分かった」
「?何が」
「アンタが優姫の事がめっちゃ大好きって事よ!!!」
「は?、、、、、、、、ハァァァァァァ!!?!?」
思わず自分史上信じられないぐらい大きな声が口から溢れ出る。
顔が熱い。照れてるんだろうって言うのが分かる。
それでもそれ以上に、大好きだって言うのが伝わる様な素振りをしていた自覚が一切なかった事への驚きもある。
今日だけでこんなにもこの天使達に色々振り回されている。
生徒会役員も楽でもなければ嬉しくもない、な。
いや、優姫と過ごせる時間が増えるのは嬉しい事だが。




