天使な婚約者の為のとある相談
自分の部屋に入ると、物珍しい物を見るかの様な目で部屋の中を歩く竜胆と何故か満足気な表情でカーペットの上に座る蓮華に少しため息がつく。
さっきまでのムスッとした顔から一変の様子にまるで、大事なおもちゃを奪い返した猫の様な、いや、犬か。
「何だよ、もしかして嫉妬したのか?」
「はぁ!?違うし!、、、、ただ、アレだ!俺の知らない美琴が気持ち悪いって言うか」
「おぅ、空気椅子させても良いんだぞ」
「竜胆、ちゃんと言お?、、美琴が桜木さんの前だと違う人みたいでなんか緊張したんだよ、」
「、、、、」
竜胆の言い草に思わずナチュラルにイラっと来たが、その顔が揶揄ってきてる時の顔ではなく少し寂しそうな顔をしていた。
そんな様子に蓮華はため息混じりに言いながら、本当の事を話されて思わず言葉を失ってしまう。
違う人、と言われて美琴はどう返答をすらば良いか分からなかった。
美琴は薄っすらと分かっていた。
優姫の前での自分が竜胆や蓮華、紫苑の前での自分とは違うんだと。
だが、改めて指摘をされると少し変な感じになるらしい。ドカッと椅子に座り顔を俯かせる。
「、、、、そう言われてもな」
「分かってるよ、美琴が悪いわけじゃないし」
「俺も、同じ」
曖昧な言葉で返答すれば、分かってるって顔を蓮華と竜胆がして少しホッとした。多分だが、自分の気持ちをある程度察して居たのだろう。
勉強机に手を置きカサっと紙が手に当たる感覚になって、顔を上げてそちらに視線を向けると、優姫の診断書だぅた。
そこに書かれていたとある部分を見て、思い出す。
思わず、「あっ」と声が漏れてしまった。それが勿論竜胆と蓮華がこちらにバッと鋭い視線を向けて来てまるで「隠すなよ」と言われてる様な感覚になる。
誤魔化したら後々うるさそうだし、それに前にも良いアドバイスを貰ったからな。
こう言う時は素直になるかと思い口を開く。
「1週間後に優姫の誕生日なんだよ」
「え?そうなの?僕達と誕生日近いね、」
「それでプレゼントとか決めてんのか?」
「ぁー、その、誕生日知ったの昨日なんだよ」
「は?」
「え、、、、」
美琴が素直に言えばそれほど驚きもせず誕生日が近いと言う少し違う視点の反応をする蓮華と誕生日だからプレゼントと言う考えに至り言う竜胆に美琴は思わず誤魔化しかけたが、何とかしっかりと伝えた。
優姫の誕生日を昨日知ったと言う事を、顔を2人の方に向けれずに。
何言っているんだ?、みたいな視線を送られているのが分かるから顔を背けているが、こっちだって今更ながら誕生日を知らなかった事に気づいて自分の不甲斐なさと罪悪感に襲われている最中なのを察して欲しい。
「いや、美琴と桜木さん婚約者なんだよね?」
「あぁ」
「んで、同棲してて、それで美琴の誕生日も祝って貰ったんだよな?」
「、、、、あぁ」
2人からの質問にただ「あぁ」と返答しているだけなのに、何故か胃がキリキリと痛くなっていくのは気のせいだろうか。
罪悪感と申し訳なさと不甲斐なさと竜胆に正論を言われる予感で余計に痛くなる。
1階から薄っすらと優姫と紫苑の話し声や笑い声が聞こえて、優姫の気持ちを考えると最低だと思われても仕方がない。
「俺が言うのもアレだが、人としてどうかと思うぞ」
「流石に半年近く一緒に居る暮らしてる人の誕生日知らないのは、どうかと」
「ウグッ、、、、」
いつになく正論をブッ刺す蓮華よりも普段的外れな事しか言わない竜胆からの正論の方が深く体に突き刺さる。悪気はないが知ろうとしなかった、と言うよりも気にしていなかった方が強く更にくるものがあり、椅子に座ったまま項垂れる。
確かに優姫の生年月日を知った時に、誕生日の存在を思い出したと同時に焦りと動揺が来た。
勿論美琴はプレゼントを渡すつもりではあるが、優姫の様な完璧な誕生日ケーキを用意する事が可能なのかと頭の中で美琴は何度も考えた。
だが、上手くいく可能性を考えると不器用な自分の事だから何か失敗するのではないかと美琴は不安に思ってもいた。
それを察してか分からないが竜胆と蓮華は目を合わせたかと思えばため息をつき美琴の両肩に手を置く。
思わず美琴は顔を上げる。
「俺ら親友だろ?相談ぐらいしろよ」
「そうそう、困った時はお互い様、だし。まぁいつも美琴には頼りっきりだけど、一応竜胆はこれでも彼女持ちだからね」
「そうそう一応これでも俺彼女持ちなんだぞ〜、、って、一応これでもってどういう意味だコラ!蓮華」
「どう言う意味もそう言う意味だからね」
「ふっ、、、、フハッ、、」
2人の掛け合いを見て思わず笑ってしまった。
慰められたんだろうがそれよりも2人の会話が面白いし、やはり竜胆と蓮華と友達になって良かったと思えた瞬間だった。
美琴が笑った姿を見て竜胆と蓮華は固まる。それ程に珍しかったのは勿論、その顔が嬉しそうだったからだ。
そんな顔を初めて見て2人は少しだけ困惑したが、それと同時に喜びが芽生える。
こう言う時素直にお礼を言える性格ではないが、今回は特別に言ってあげようと美琴は思う。
「なんか、ありがとうな、竜胆、蓮華」
「!」
「、、、、どういたしまして」
「え?ぁ、どういたしまして!」
感謝を伝えればビックリした顔をしたかと思えば蓮華は嬉しそうな顔をして返答し、竜胆は少しの間を空けてから明るい顔で返答する。
昔であれば、誰かに相談するとか考えがなかった。
でも、その考えが変わったのは優姫の存在のおかげだと思っている。
人を見る目、噂を信じるか信じないか、全部全部優姫のおかげで変われたんだと分かっている。だからこそ、違う人、変われたと言われても否定は出来ない。
「じゃあ、優姫に贈るプレゼント一緒に考えてくれるか?」
「勿論!」
「当たり前だろ!」
笑顔で引き受けてくれる2人を見て少し安心する。
友達と言う存在が少ないのは自覚して長続きしない友人関係が此処まで長続きしたのは2人の性格のおかげで、性格的に苦手な関わる事がないだろうと思ってた紫苑と此処まで仲良くなれたのは竜胆のおかげで、仲を取り持っているのは蓮華のおかげだと思う。
普段美琴は素直に何かを伝える事はないし、感謝だって伝えない、それを理解しているしそれをどうにかしたいと思っていたのだ。
だからこそ、美琴はこの機会に色々言えたのは良かったと頬が緩むのを我慢しながら椅子から立ち上がる。
「とりあえず、クリスマスにはプレゼントをあげたからそれとは違うプレゼントを渡したいんだよ」
「、、、、、、、、んー、やっぱりアクセとかじゃね」
「アクセ、か。ブレスレットとかか?」
「それぐらいなら嬉しいし使えるけど、消耗品って言うのも僕は良いと思うなぁ」
アクセに消耗品か、と思いながら意外とプレゼント関係になると彼女持ちと女子にモテる2人に聞くと良い答えがくる。
アクセ、そう言えばクリスマスプレゼントに優姫から、ブレスレットを貰ったな。棚に保管して自然とそちらに視線が行く。
同じアクセよりかは他のネックレスの方が良いよなと美琴は思いながらも頭の中で整理をしてベッドに座る。体重の重さでベットが少し凹む。
「竜胆は紫苑の誕プレに何上げてんだ?」
「え?うーん、その月に紫苑が欲しがってる奴とか気になってた奴を覚えて買うとか?」
「、、、、竜胆ってこう言うとこあるよな、蓮華」
「だねぇ、こう言う所がズルいよねぇ」
「?何が?」
美琴はフッと笑ってしまう。
馬鹿な竜胆が意外と彼氏力が高い所や意外とちゃんと紫苑の事を考えているのが分かったからだ。
美琴は優姫の考えている事や言っていた事を覚えているが、それでも欲しい物を中々言わない性格も知っているからこそ、ちゃんと聞き出す技術があれば良かったなと美琴は思いながらスマホを取り出してメモを取る。
「と言うか、改めて考えるとさ、【桜の天使】である桜木さんと婚約して同棲してるって事が訳分からないし非常に羨ましいし、もし学校にバレたらお前刺されるんじゃね?」
「おう、だから絶対にバラすなよ。お前の親友が1人失うかもしれないからな」
「バラさないよ、桜木さんが良いところのお嬢様だって言うのもビックリしたけど、本当に好きじゃないの?恋愛的に」
「蓮華まで、紫苑みたいな事を」
思わずため息が出る。恋愛感情と聞かれても分からない。自分の感情がなんなのか分からないし、好きと言われてそれがどの部類の好きなのかさえ分からないのに明確な答えを言えと言われても正直言えば困る事だった。
竜胆と蓮華の事を好きと聞かれれば人としては好きだと答えるだろう。
だが優姫の事になると何故か分からない。
大切だと思うし大事だと思う、アプローチだって嫌ではない。
自分が抱えているこの感情の答えを知りたい様で知りたくないと思ってしまう時がある。




