天使とのお出掛け
「美琴君、美琴君、、、、朝ですよ。起きて下さい」
眩しさを感じ体を優しく揺らしながら声をかける存在を確認する様に目を弱々しく開けた先には、白髪碧眼でエプロンを付けながらその下には水色のワンピースを来たまるで天使が視界に入り寝ぼけている美琴から思わぬ言葉が出てしまった。
「天使かよ」
「!」
自分自身が何を言ったか、そう理解したのに時間は掛からなかった。
顔を真っ赤に染めプルプルとした様子をしながら、ベッドに寝転がっている美琴を見つめている優姫の姿を見てハッとした。
慌てて体を起こす。美琴はいつも通り家で母に起こされた、と勘違いをし、だが起こしたのは真逆の存在で思い出したのだ。
同棲したと言う事を忘れて居た訳ではないが寝ぼけて居た事でつい、言葉にしてしまったのだろう。
好きな相手からの言葉に照れている優姫の姿は朝日に照らされ、キラキラと白髪が輝きが増し、本当に天使の様だと美琴の目には映った。
「すまん、寝ぼけてた」
「い、いえ、、、急に美琴君から天使と言われるのにビックリしてしまって」
「、、天使と言われ慣れてそうだが」
「それとこれとは違うんです。美琴君だから、、です」
更に恥ずかしそうに表情が柔らかくなり、モジモジする。
それを見れば、どれ程想いが強いのかと言うのが流石の美琴でも分かった。寝ぼけはすっかり無くなり、スンッと鼻先に香るお味噌汁の匂いに食欲が湧いた。
ベッド横に置いてある時計を見れば9時半、普段の土日で起きる時刻の3時間以上早く起きた事よりも優姫がそれよりも前に起きたと言う事に関心を示した。
朝ご飯出来てますよ、そう言いながら優姫は寝癖の付いた美琴の髪を撫でる。
その動作にビクッとするが、下手に動けばショックを与えてしまうは愚か、朝ご飯まで作ってくれた相手にそこまではしたくないと言う気になった。
動揺を隠しながら撫でられるのを受け入れ、優しい表情を浮かれる彼女を見たら、少しの申し訳なくなった。
「早起きだな」
「これぐらい普通です。それに、、、、今日は早く目が覚めたので」
照れた様子を見せ恥ずかしくなったのだろう優姫は部屋から立ち去った。ベッドの上で起き上がり残された美琴は優姫の言葉の意図を理解し、1人悶々と頭を抱えて居た。
今日のお出かけ、デートを楽しみ、もしくは緊張して居た、と言う事だろう。
タジダジになりながらもクローゼットから服を取り出し着替える。
(そう言えばあのワンピースも結構可愛かったな)
着ていた服を思い出し、あの隣に立つのであればそれなりに良い服を選ばないと考える。
父に似て高身長で母の遺伝が強く整った顔立ちで生まれたおかげで、無駄にファッションを培ったのは伊達ではなかったらしく所有している服はどれもセンスは良かった。
素早く選んだ服に着替えリビングに向かうとお味噌汁の匂いに煮物の匂い、朝から焼いたのであろう卵焼きと鮭の塩焼きが綺麗なお皿に飾り付けられテーブルに置かれていた。
「朝からこんな豪華な料理食べれるとか、、、、俺幸せ過ぎない?」
「!、そ、そんな事ないです。でも、その、、まずは胃袋から掴もうかな、と」
照れながらもエプロンを外しながら言う優姫の姿を見れば、少し「嫁っぽいな」と思ってしまったのであろう、美琴は心の中で自分を殴り飛ばした。
もう、胃袋は掴まれているんだがな、と言いたいが更に美味しい料理を食べれる可能性を見出してしまい、言わないまま席に座る。
美琴はつくづく食べる事に関しては変なプライドを出してしまう。
「ゅ、優姫は料理大変とか思わないのか?」
「大変、ですか?、、思った事はないですね」
「凄いな、、俺は無理だわ」
「そうですか?、、、、それに、好きな人に料理を食べて貰えるって思ったら大変なんて感じる暇は愚か、ドキドキしてしまいます」
「そう言う事、照れずに言うんだな、お前」
逆にこっちが照れるわ、そう呟きながら味噌汁を啜る。
考えていると言う事、それを平然と言われると言う事がちゃんとした好意を向けられなかった美琴にとっては新鮮で、そして照れ臭かったのだ。
「照れてます?」
「照れて悪いか」
「、、、、いえ、嬉しいです」
嬉しそうな表情をしながら、はむはむと頬を膨らませながら料理を食べている優姫を見ると無性に頭を撫でたくなってしまう。
少しの一挙手一投足でも嬉しそうに、表情が変わる姿は年相応、いや、少し幼さを感じる。
普段は穏やかで大人びた落ち着いた様子からは感じ取れないほど、美琴の前では気を緩めている事が伺えれる。
「そういや、耐熱容器何処で買うんだ」
「此処から近い所でショッピングモール、イオンに行こうかと、、、初めてなので少し緊張しますが」
「え、初めてなのか?」
「スーパーなどは行きますけど、ショッピングモールなどはなくて」
「ふーん」
お嬢様、だもんな、と思っている美琴だが中学に上がるまでショッピングモールを行った事がなかった立場の為、それを言葉には出来なかったようだ。
だが心なしかそわそわしている優姫は、食事を食べるスピードが少し早い。それほど行きたいんだな、と思いながら美琴の食事のスピードも自然と早くなる。
「!、、、、広い、です」
「イオンだしな。それに日曜日だし人も多いな」
昼前どきの時間だった事もあり、イオンには人がごった返す、程ではないが人が多いのが目視でも分かる。
緊張しながらもワクワクしながら案内図を見ている優姫の後ろ姿を見守りながら、休日の為かクラスメイトに遭遇しないかと言う不安が少なからずあり、辺りを少し警戒した様子を取る。
背が低い分、背を伸ばしながら案内図を見ている姿が可愛らしいなと子供だなと言う感情になった。
行く所が分かったのだろう、美琴の所へとヒヨコの様な足取りで戻って来る。
「2階に食器を取り扱ってるお店がありました。行きましょう」
「あぁ、エレベーターとエスカレーターどっちにする?」
「エスカレーター、にします。そちらの方が早くお店に着きますし」
「そうだな」
1番近くのエスカレーターに向かう。歩幅が違う為、気を抜けば距離が出来てしまうと気付いた美琴は、自然と歩く歩幅を短くする。
暫く歩いて周りからの、特に男からの視線に気づいた美琴。その視線が自身ではなく横で一緒に歩いている優姫に向けているんだと察した。
水色に桜柄のワンピースに白のカーディガンを着て、長い白髪の髪はお団子の二つ結びをした姿はまるで天使そのもの。
流石【桜の天使】様、だな、と美琴は思ったが、視線を向けられている本人は全く気にしていない様子を見たら、こんな事は常日頃なのだと改めて痛感させられた。
エスカレーターには優姫を前にして乗る。
もしかしたら、と言う不安が頭の中でチラついたのだろう。
「ぁ、、ありました」
店に入り目当ての耐熱容器を見つけたが、それが置いてある場所がギリギリ小柄な彼女では取れない場所に置かれていた。
取ろうと、背を伸ばしているが全然足りて居ないのを見て、苦笑いを溢し彼女でも持てそうな重さの耐熱容器をを取って手渡す。
パァっと表情が明るくなるのが分かり、嬉しそうに耐熱容器を触っている。
「あのさ、取れないのがあったら俺に頼れば良い。もし落としたら危ないしな」
「少しでも自分で出来る事を増やしたくて」
「、、、、それで怪我されるのは、、、、嫌だ」
「!」
目を輝かせながら嬉しそうにして、ピョンッと嬉しさを体で表せたいのを我慢している姿も可愛らしかった。
他の耐熱容器を見比べて数個買い、それを入った紙袋は自然と美琴が手に持ち、イオン内を歩くとイオン内に併設されているフードコート前に近づくと、優姫の足がピタッと止まる。
11時半でそろそろ昼時で、ご飯を食べに着ている親子連れなどが多かった。
その様子を見て、ソワソワした様子で見つめているのをつい何も言わず見続けてしまう。
(イオン来た事ないって事は、フードコートとかも行った事ないんだよな)
美琴が居る手前、誘うのを躊躇しているのが伺えた。
遠慮し過ぎてる部分が伝わって、昨日のアプローチを考えれば誘われた所で、と思いながらフードコートのある飲食店が分かる表示板を指を刺す。
「優姫の食べたいとこ、行くか。俺も腹減ったし」
「!、良いのですか?」
「嫌じゃないし、、、、お前のしたい事、やろうぜ」
「、、、、はい」
嬉しそうに表示板に近づき、何処の飲食店が良いか、と悩んでいる後ろ姿も可愛いな、と思いながらおススメのお店を進める。
2つまで絞れば、どっちのお店でも分けっこ出来るだろう、と優姫の事を思って提案をする。
前までの美琴だけなら、こんな事はしなかっただろうな、と無意識にそんな事をしてしまっている。




