天使な婚約者の為のプレゼント
夕食後、食器を洗いながら洗剤がなくなりかけているのが分かり、明日買いに行くかと心の中で決める。
優姫はお風呂に入っているからその間に残りの洗濯物を片付けたりするか、と思いタオルで食器を拭いていると視界に優姫や生徒会役員へのホワイトデーのお返しが入った紙袋が入る。
(明日は渡せなくなったな)
明日学校を休めば渡せなくなるな、まぁもし怒られたら素直に怒られよう。食器を食器棚に戻していると、お風呂場のドアが開く音がし、優姫が風呂を上がったんだと分かる。
その間に片付けるか、と思って畳んだ洗濯物を手に取ろうとした瞬間、お風呂場から「どうしよう」と言う優姫の小さな声が聞こえた。
その声が困った様な声に聞こえ、動きを止め優姫が居るお風呂場の方に美琴は視線を向ける。
美琴は迷う話しかけるか、話しかけないか、困った事がどうでも良い事と言う可能性すらある中、頼れと言えばどんな事でも引き受ける覚悟のある美琴だが、もし声をかけて優姫が全然困っていなかった時の場合、恥ずかしい気持ちになるのは目に見えている。
なんて顔を床に向け悶々と美琴が考えていると、ガチャっとお風呂場と洗面台、洗濯機のある部屋の扉が開く音が美琴の耳に届き、バッと勢い良く顔を上げる。
「ぁ、美琴君」
「何かあったのか?」
優姫が話しかけてきた事で返事をするが、視界に入ったのは優姫の顔だけで、扉も20cmぐらいしか開いてなかった。
何で優姫が顔しか見せないのか分からないが、その顔が困った顔をしていたので、とりあえず駆け寄ろうと足を一歩前にやる。
すると、勢い良くバタンッと扉を閉める優姫。
思わずビクッと体が跳ねる。
「?、ゅ、優姫」
「す、すみません!あの、、扉を閉めまま、扉の前に来て貰えますか?」
「、ぉ、おう」
状況は分からないが開けられないって言うのだけは分かった。
扉の前まで来て来た事を知らせる為にコンコンッとノックをすると扉の先からでも分かるぐらい動揺したのか、優姫の小さな声で「あぅっ」と言う声が聞こえて不謹慎だろうが少し可愛いと思ってしまった。
「み、美琴君、じ、実はその、た、タオルを忘れてしまいまして」
タオルを忘れた、その言葉を聞いた瞬間、全裸の優姫を想像しそうになったのを兄・龍介の顔を思い浮かべて掻き消す。
美琴は洗面台にかけてあるタオル以外にタオルがない事を分かっており、それで拭けと言っても衛生面的な考えれば優姫が普段使っているタオルの方が良いだろうと思いながらもタオルを持って来るのを忘れていると言う事態にお姫様抱っこをしていた時に気付かなかった自分の失態でもあると少し美琴は反省をする。
「タオル、、、、、、、、マジか」
「マジ、です。洗面台にかけてるタオルを使おうかな、と思いましたが布面積がちょっと、自然乾燥すれば風邪も引く可能性を考慮すると美琴君に持って来て貰いたい所存です」
「分かった、とりあえず持って来るからそれまでは風呂場に居ろ」
「分かりました」
優姫にしっかりと言ってから、2階の優姫の部屋まで向かい部屋のドアノブを掴むが、何故か緊張してしまう。初めて優姫の部屋に入るからと言うのもあるが、見てはいけない物を見てしまう可能性があるからだ。
だが今はそんな話をしてる状況ではない。
意を決してノアノブを捻り、扉を開ける。
部屋の中は整理整頓されており女子っぽい部分もあるがしっかりと整った部屋と言う印象。
クマとウサギのぬいぐるみがしっかりと棚の上で並んで置かれているのが目に入り、少し嬉しく思う。
(いや、そんな事よりもタオルタオル)
棚の方に視線を戻すが、何処にタオルが入っているかを聞くのを忘れた美琴は一瞬固まる。
選択を間違えれば見てはいけない物が見えてしまう可能性が頭の中で浮かぶが優姫に風邪を引かれるのは申し訳ない気持ちのある美琴は、1番上の棚を開ける。
「、、、、正解か」
ホッと一安心する。
正解の棚を開けれた事に安堵しながら薄ピンクのタオルを手に取り棚を閉じ、颯爽と部屋を出る。
2階から1階におり、洗面台とお風呂場を繋ぐ扉の前にタオルを床に置きコンコンッとノックをし置いた事を知らせてリビングに戻る。
数秒するとガチャッと扉の開く音がしすぐに閉まる音がしたからタオルが取ったのが分かる。
その間に美琴は、洗濯物を片付けようと置いたままの洗濯物を手に取り2階に向かう。
自分の部屋に下着やタオルなどを戻してから美琴は優姫の部屋に戻る。下着を目を瞑りながら戻して、部屋を出ようとした時視界に優姫の勉強机が入った。
その勉強机の上に置かれた一冊のノートとシャーペンと消しゴムが美琴の意識を集中させる。
「、、、、勉強したのか」
あれ程言ったのに、とちょっと呆れるが学年1位の成績を誇る優姫の勉強法が少し気にはなる。
まだ戻って来る気配はないし、少し見てもバレないだろう。
ノートを手に取りパラパラと開くと、とあるページが目に入り目を見開き手を止まる。
そこに書かれていた内容は、勉強ではなく美琴に関する内容だったのだ。
今日の出来事が書かれていた。例えばだが「今日は怪我をして美琴君に怒られました。怪我をした事ではなく頼らなかった事に対してです。あの時の顔は心配が含んでいて反省しました」と、まるで日記だと美琴は思いながら、こんな事を書いていたのかと少し笑ってしまう。
他のページを見れば、美琴と暮らし始めてからの色々な感謝や嬉しかった事が書かれていて少し照れ臭く思いながらも優姫の温かさがちゃんと伝わる美琴だった。
「ハァ、、、、なんかある意味プレゼントかもな」
勝手に見た側なのにプレゼントを貰った気分になってしまった。ノートを閉じて元の位置に戻したら、優姫の部屋を出て2階を階段で降りてる途中にリビングの方に視線を向けると、見慣れた白い髪の頭頂部がキッチンの端に見切れて嫌な予感が一気に押し寄せる。
丁度、ホワイトデーのお返しの紙袋が置かれた場所だから、まさかと思い唾液を飲み込む。
優姫は気付いてないのかガサゴソと動いているのが頭頂部だけでも分かる。
「、、、、何やってるんだ、優姫」
「!、、み、美琴君、ぁ、えっと」
美琴が声をかけた瞬間、ビクッと体が動いたのが分かり、優姫が美琴の方に顔を向けるとその顔は誤魔化さそうとする気と隠しちゃいけないって気持ちが混ざった様な顔をしている。
それを見て美琴は階段を降りながら嘘が本当に付けないな、って心の中で思っている。
「見たか?中身、」
「は、はい。す、すみません!お茶を飲もうとした時に倒してしまって中身が出てそれで」
「分かってるよ、優姫がわざとそう言う事はしないって、、、、、、、、ホワイトデーの、お返し。生徒会のと優姫の」
優姫が紙袋を倒して慌てる姿が安易に想像出来る。
わざとそう言う事を優姫がする訳ないと分かっているし咄嗟に謝ってしまうその性格が少しくすぐったく感じる。
「そうなんですか。でも5つありますが」
「2つは優姫の。優姫の量には全然勝てないが」
「いえ、嬉しいです!とても、ありがとうございます、、、、本当にありがとうございます。最高のプレゼントです」
「ッ、、、、そうか、」
本当に嬉しいのか、パァッと表情が明るくなって下を俯いて耳が赤くなっているのが目に入って、何故か自分の耳も熱くなるのが分かる。
ここまで喜ばれるのは想定内ではあったが、優姫の笑顔を見ると何故か幸せだと感じるこの感情がまだ分からない。
優姫の存在が大切で大事で、そばに居るだけで嬉しくなったり可愛いと思ったり愛おしいと思ったり、幸せだと幸福を覚えるたり、こんな感情は初めてだらけで、この感情の答えが分からなくて、分かりたいが分からなくても良い、とたまに思う時がある。
だが、今は優姫を想う気持ちこの気持ちを知りたいと思ってしまう。




