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天使な婚約者は俺にだけ愛が重過ぎる (旧案:天使な婚約者は俺にだけデレデレです)  作者: 橋本衣兎
第1章

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天使な婚約者とのバレンタイン



「では、美琴(みこと)君私は先に行きますね」


「あぁ、行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 次の日の朝、バレンタインデー当日。

 紙袋を持ち玄関扉を開け学校に向かう優姫(ゆき)を見送り、制服に着替えようと部屋に戻ろうとリビングを通り、冷蔵庫が視界に入り足を止める。

 昨日の夜からバレンタインデー用のチョコレートを作っている事は知っており朝にも作っているのは2階からでも物音して分かっていた。


 微かにチョコレートの匂いがしてそれだけでも、食べたくなるのはチョコレート好きだからと言う言い訳を何故か自分の心の中でする。


 だが、まだ手渡して来ないのは帰ってからか、それとも学校で渡すかのどちらかだろう。


(今日は男子生徒が無駄にソワソワする日だな)


 2階の自室に入りハンガーにかけてある制服に着替えながら、生徒会もとい天使達から貰えると少なからず期待している生徒は居るだろうと考えると滑稽とも思える。

 彼氏持ちが2人とセコム持ち1人、と考えると彼氏もセコムも居ない優姫が1番危ないかもしれないな。


 こう言ってはなんだが、1番天使らしさのあり「良い子」でもある優姫に貰えると思っている生徒は居るだろう。


 そう思うと優姫が不憫で仕方がない。


 断るのだって辛いはずだろうに。


 そして生徒会役員になった今男子生徒からの恨み嫉みの視線を向けられる事を考えるが優姫を考えると平気になる。


 こっちは優姫の手料理を食べられる生活を送っているんだからな。

 浅はかな嫉妬以上に【桜の天使】からの対応は最高なものだ。


「そろそろ家を出るか」


 誰も居ない家でも独り言を言ってしまう所は直したい所だが、前よりも喋る量が増えたからだろう。













「はよ、、、、って、なんか屍が多くないか?」


「美琴、おはよう。屍って言い方」


 教室に入れば明らかに何かが終わったみたいな顔をして椅子に座ったり項垂れている男児のクラスメイトを横目に挨拶をし席に座る。

 蓮華(れんか)が挨拶をし返しながら注意している様に見えて笑っているのは言葉で分かる。


 多分だが、大抵の男子生徒は女子達からチョコレートを貰えなかったか四大天使達からチョコレートを貰えなかったからショックを受けているのだろう。


 優姫の姿は教室内にはない、だが鞄はあるから生徒会室にでも行っているのだろう。


 前の自分であれば気付かず興味すら覚えなかっただろう、と美琴は内心思いながらリュックのチャックを開ける。

 昼休みになったらなったで色々大変になりそうだな、と思いながらチャイムが鳴り優姫が教室に入って来る。


(なんか、疲れた顔してる?)


 優姫がそんな顔をしていたのが目に入る。

 気のせいかと思ったが、いつも笑顔な優姫があんな顔を人前でするのは珍しい以上の事だ。


 と言う事は何かあったな。そう想像しながらも、担任が教室に入りスマホを触る事は出来なくなった。

 昼休みにでも生徒会室に行く前に聞こうとしよう。




 昼休みになり優姫が先に教室を出るのを見てからリュックからお弁当箱と水筒を手にし椅子から立ちあがろうとすると、廊下が騒がしくなり竜胆(りんどう)が勢い良く教室に入って美琴と蓮華に駆け寄ってくる。


 その顔はヤバい事を聞いたってのが分かるぐらい焦りと驚きを含んだ顔をしている。

 思わず立ち上がる力を緩ませてしまう。


「なぁ、ヤバいヤバい!」


「ん?どうした、竜胆」


「桜木(さくらぎ)さんが3年の先輩に告られるっぽい!」


「、、、、は?」


 時が止まった。


 優姫が告白された?誰に?3年?先輩?何で?そんな疑問が頭の中で巡る。

 もしかしたら朝のあの顔はそう言う意味ではないか??

 だがそれよりも、優姫の気持ちを理解している今、やるべき事があるのではないか。


「えぇ、本当?」


「そう!なんか卒業するから最後にこのバレンタインに、って美琴何処行くんだよ」


 美琴は気付いたら椅子から立ち上がってお弁当と水筒を手に教室を出ようと歩いていた。

 竜胆の質問にも答えられない程今の美琴は優姫の事を考えていたからだ。廊下を歩き騒ぎの大きい方に早足で出向き廊下の角を曲がった先に見えた光景に美琴は目を見開く。


「桜木優姫さん、好きです!俺とお付き合いして下さい!!」


「ッ、、、、ごめんなさい」


「何で!?俺、大学も決まってるし偏差値だって良い!君の隣に似合う男だ!」


 告白された瞬間、優姫が明らかに嫌な顔をして、だけど何とかいつも通りの表情に戻し断った。

 告白した男は3年でもイケメンだと言われている生徒らしく野次馬をしていた生徒がヒソヒソと会話をしていた。普段はあんな事を言う人ではないらしい。


 余程切羽詰まっていたのか、優姫が好きだからこんな行動を取ったのか。

 どちらにせよ、今の優姫を軽く追い詰めている事には違いない。


 前まで美琴であれば此処はスルーしていただろう。

 優姫と関わりがあったとしても、それは2人での間、だが今、生徒会役員同士と言う立派な関係性がある以上は、割り込む権利も助ける理由も明確に与えられたも当然だろう。


 それに、優姫が嫌がっている顔を気付けない男と話を続ける機会を与える気は、ない。


「、、、、桜木、そろそろ生徒会に行くぞ」


 野次馬の中に割り込み優姫に近づき話しかける。

 優姫に話しかけた第二の男みたいな感じになりザワッと周りの野次馬の生徒達が騒がしくなる。


「!、み、井原(いばら)君、そ、そうですね。すみません、失礼します」


「なっ、待ってくれ!それに君は桜木さんの何なんだい!?」


「同じ生徒会役員だ。先輩、断られたんですから、引き下がった方が良いですよ。好きな人に迷惑をかけたいのですか?」


「ッ、、すまない」


 美琴の登場で危うく名前を呼びかけたが瞬時に苗字呼びに変換する所は優姫の器用さと学園での演技力の良さが際立つ。

 同時に美琴の言葉に3年生の先輩は周りの視線など優姫の表情に気付き素直に引き下がった。


 優姫の手首を掴み野次馬を掻き分けようとするが、優姫が居るからか自然と生徒達は二手に分かれる。天使の効力を実感してる瞬間かもしれない。


 だがその分周りの生徒達からの「アイツ誰?」、「天使に軽々話しかけるとか何?」、「生徒会役員って羨ましいな」なんて会話が耳に入り嫉妬は醜いなと分かる。


 生徒会室前に着くとピタッと優姫の足が止まり、それに釣られる様に美琴も足を止める。

 優姫の顔を覗き込む様に体をかがめ顔を見ると顔を真っ赤にし照れと申し訳ないが混ざった顔をしているのが美琴の目に映る。


「どうした?」


「ひ、人前で手首を掴まれたのがビックリして話しかけられたのが嬉しくて、でもあそこでちゃんと切り抜けられず美琴君に迷惑かけて申し訳なくて」


「、、、、あのなぁ」


 ため息混じりに言うと、優姫がビクッと体を震わせる姿を見て怒られているって思われているみたいで少し嫌だが、申し訳ないと思われるのはこちらとしても不本意にと感じる。


 優姫には笑顔でい続けて欲しい、からな。


 なんて事を思いながら優姫の頭の上に手を置き撫でながら口を開く。


「別に怒ってないし、あぁ言うの切り抜けるの苦手なの知ってるし俺が助けたくて助けたんだよ。優姫はそれをちゃんと受け取っとけ」


「!、、はい」


「なーに、生徒会室前でイチャイチャしてるのよ!」


「、、、、丹波(たんば)」


「明里(あかり)ちゃん」


 言いたい事言えば優姫は嬉しそうな顔をしてもっと撫でろと言う様に背伸びをしているのが可愛いな、って思った瞬間、少し離れた所から聞き慣れたツンデレな注意の声がが耳に届く。


 振り返ると少しムスッとした顔をして廊下に立ち止まってこちらに視線を向けている【牡丹の天使】の丹波明里が居た。

 注意しているが、イチャイチャしていると思われたのは少し心外だが、これもイチャイチャの部類なのかと納得はする。


 明里の手には友達にあげる用だろう大量のチョコレートが入っていると思われる紙袋とお弁当入れを持っていた。


「別にイチャイチャはしてない」


「言い訳は良いわよ、他の先輩達はもう来てるんだから中入るわよ」


「言い訳はしてないが、そうだな」


「、ですね」


 否定をするが言い訳と捉えられてちょっと面白くはないが、言い訳に見られる様な光景だったと言う事なのだろうか。

 明里に言われるがまま生徒会室に入る。

































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