天使な婚約者の初恋は(優姫視点っぽい)
「美琴君、そろそろ着きますよ、、、、って、寝てる」
新幹線から電車に乗り換え、約10分程で最寄りの駅に着く事になり、それを美琴君に伝えようとし横を見るとスヤスヤと寝ている姿が視界に入りました。
スーツケースが電車の揺れで何処かに行かない様に手で掴んだまま寝ているのか器用だな、と少し心の中で持ってしまいました。
慣れない土地や人達と過ごした三日間の間相当な緊張をしているとは分かっていたから、入れていた力が緩んで寝てしまったんだと分かりました。
いつになく優しい寝顔で寝ている美琴君を見ると、何故か美琴君に恋した時の事を思い出す。
「、、、、初めて会った時はこんな優しい顔はしてなかったですね」
美琴君は覚えてない、いや、多分あの日のことは気にも留めてない事だったと思います。
だけど、それが1人の人生を変えたと心から言えます。
美琴君と初めて会った日、そして美琴君に恋をした日、到底忘れる事のできない日です。
中学2年生の冬、丁度今頃の冬休みの時の事でした。当時はまだ京都で生活していて、東京で結婚し暮らしていた長姉である華奈の所にお泊まりで1人東京に訪れていました。
駅で華奈の迎えを待つ間の時に美琴君との出会いともなる事件が起きたのです。
ナンパ、と言うのでしょうか、大学生ぐらいの男性3人からお茶の誘いをされたのです。
当然断りました。華奈との約束もありますし、当時の自身は男性を恋愛感情で見る、と言うプロセスが頭の中になかった事もありました。
でも、その男性達は中学生相手に諦めをつかない人達でした。
『なぁ、お茶ぐらい良いだろ?』
『結構どす、私は貴方達とそないな所行かはる程暇やないんよ』
『へぇ、京言葉ってやつ?可愛いじゃん、余計に遊びたくなったわ』
『な?ちょっとぐらい行こうぜ』
『へやから、、、いっ』
しっかりと断りを入れたのにも関わらず、諦めもせず挙げ句の果てには初対面の女性、自分の手首を掴み力強く引っ張って来ました。
あの時はとても焦りましたし、それと同時に恐怖を覚えました。
幼少期に外国の地で誘拐されかけた記憶がこの出来事で呼び起こされたのです。
男達は誘拐をした外国人と同様の身長ではなかったが、当時の優姫にとっては恐怖心の方が勝ち足がすくんでしまっていた。
言葉を発する喉さえも、トラウマのせいで上手く発せられなかった。
『おっ、急におとなしくなった』
『んじゃあ、この隙に連れて行こうぜ』
『だな!!』
『ッ』
黙っていたからか男性達は良い気になりました。
誰かに助けを求めようと周りを見ましたが、人はまばらで面倒ごとに巻き込まれたくない人としてのサガなのでしょうか、こちらを見ても見て見ぬ振りをして過ぎ通ってしまいました。
この時ばかりは焦りましたした。恐怖心で何も言えなくなってましたし、どうすれば良いかとひたすら頭の中で考えるがトラウマが常に頭の中でチラつきました。
優姫は諦めないといけないと、思ってしまい諦めかけた瞬間、男の1人の肩にポンっと誰かの手が置かれ声変わり途中でだけど頼りになる声が駅前に響く。
『あの、中学生相手に何やってるんですか』
『!』
男性に話しかけた少年、いえ、井原美琴君の登場にこの時ばかりは突然の第三者の声に正直な話、ビックリしました。
美琴君は誰もが敵みたいに思ってる様なそれでいて、今この状況にもめんどくささを感じていた目をしてたと当時は記録してる。
でも、めんどくさいはずなのに、過ぎ通らず話しかけたのは今思えば美琴君が見過ごせない性格なんだと分かりました。
『は?何?中学生?つか、お前に関係なくない?ガキは公園にでも行って遊んどけよ』
『、、、、ガキは貴方達でしょ、女の子1人に寄ってたかってナンパして、ロリコンかよ。アンタらこそ公園の砂場で遊べよ。いやそれは迷惑か』
『あ゛ぁ!?お前、調子乗んなよ』
『乗ってないです』
5歳以上の男性達相手にも怯まず、正論とも言える言葉をズバズバと言う姿にトラウマが再来していた私はその気持ちさえ一瞬でなくなって、美琴君に意識が向いてたと思います。
美琴の正論に男達の自尊心はボロボロで、つい真ん中に居た男が強硬手段を取る様に美琴の首根っこを掴む。
だがそれを待っていたと言う様な表情を美琴はする。
『お前良い加減にしろよ』
『してないですし、殴りたければ殴れば?まぁ殴ったら駅の交番に行きますけど、ちゃんとした暴行罪ですからね』
『ッ、ぁ〜!行くぞ、オメーら、!』
『ぉ、おう、、、、チッ、余計な邪魔が入った』
『そうだな』
男性達は美琴君の発言に強気だったはずがビビってしまったのか、手首を掴んでいた手を離し何処かへと立ち去って行きました。
その時はとても安心して、それと同時に突然現れた救世主が気になっていました。
感謝の気持ちを伝えたい、そう思って一歩前に足を踏み込んだんです、でも彼は、美琴君はフイッと顔を逸らし駅の方に向かったんです。
その時はあぁ、これ以上は話したくないよな、と優姫は内心思いながら、その場から立ち去ろうとしたが、5分もしないうちに、美琴が駅から現れたのだ。
それには流石の優姫をも目を見開いて驚いた。
『!』
『これ、濡らしたハンカチ手に当てて』
『え』
濡らしたハンカチを渡して来て、ビックリしてしまいました。
美琴君が戻って来るなんて思わなかったのもあるけど、ハンカチを差し出される意図が分からなかった部分もあったからと言うのもありました。
『さっきの奴らのせいで、そこ色ちょっと変わってるし痛いぁろ』
『でも、』
『良いから、こう言うの見逃したりする方がめんどくさいし、あとこれも』
『ココア?』
『ん、指先ちょっと赤い、寒いだろ。だったら、これ持ったら温まるかなって』
『だ、代金』
『別に良いし、俺が好きでやっただけだし』
そう、不器用に言いながらも美琴君は優しくココアを両手で包み込む様に手渡してくれたのは良い思い出です。
お礼を伝えようと名前を聞こうとしました。
でもいきなり名前を聞くなんて先程の男性達みたいなナンパだと思われは可能性を考えると、言おうにも言えませんでした。
手首に当てているハンカチの冷たさと手のひらで包み込んでるココアの温かさが気にならないぐらい、多分美琴君を意識してました。
この時には既に美琴君に恋をしていたと思います。
だが不幸にも優姫と美琴のこの時間は美琴へのとある電話で終わりを告げる。
『、、、、母さんからだ。着いた、か、、、、じゃあ俺はもう行くから』
『え、ぁ、このハンカチ』
『貰っといて、要らないなら捨てても良いから。じゃ、気を付けろよな』
『ぁ、、、、ッ』
結局名前を聞けずじまいのまま、美琴君は迎えに来た車の中に乗り込んでしまいしました。
その時はだいぶ、いえとてももう会えないんだとショックを受けました。土地勘もなければ次に此処に来ても会える確率は分からない、京都で生活している分遭遇する確率さえ低いのです。
もう2度と会えない、初恋はたった数十分で終わるんだ、なんて思いました。
ただ、幸運だったのは美琴君が残したハンカチに美琴と少し滲んで油性ペン書かれていた事でした。
それで、初恋の人の名前をこの時の私は知れて心の中でずっとずっと呼んでいました。
(美琴君か、、、、良い名前です。美琴君、美琴君)
今思えばもう会えない人の名前を心の中で永遠と呼んでる変な人ですね。
でも会えなくても、会えなくても初恋で、大切な人になったんです。
まさか、その約2年後に婚約して同棲して、一緒に京都に帰省旅行をするとは思いもしませんでした。
そして次に美琴君に会えたのは1年後の高校の入試の日でした。




