天使な婚約者は無自覚ドジっ子
「気持ち良いですね、美琴君」
「あぁ、足湯ってあんまりした事がなかったがこれは良い」
夕焼け空をバックに優姫と来ているのは嵐山温泉「駅の足湯」と言う所だ。優姫からオススメされてタクシーを乗って来た。
お客さんはあまりおらず殆ど貸切状態で足湯に入る事が出来たのは幸運だったかもしれない。
冬本番の季節、足元から温める事が大事だから足湯の良さを肌と体の芯で実感出来る。
だがそれよりも足湯に入る為にと靴下を脱ぎ濡れ防止の為にスカートを膝上まで上げている優姫の白く柔く細い生足が視界に入りグルンっと信じられない速度で顔だけが違う方向に背いた。
「!?美琴君首大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ。ちょっと邪念を追っ払っただけだ」
「邪念、、、、???、そう、ですか」
倫理と理性が勝った瞬間だっただろう。
いくら、問題やトラブルを避けたい事なかれ主義だとしても、一歩間違える可能性はあった。男だもの。
それに気付いてなく「邪念」が分からない顔をしている気の抜けた顔をする優姫を横目で見て夕焼けバックでまた絵になる瞬間だった。
こう言う姿を見て惚れる人間も居るのだろうか、大抵の人間学校の男子生徒は微笑むだけの優姫を見て惚れているのを見るが、違う事で好きになった人は案外居るのかもしれない。
美琴は思いながら、耳が何故か異常に暑くなっていることに今更ながら気づく。
「そう言えば、私前に生徒会の皆さんから変な事言われたんですよね」
「変な事?」
「はい、私がドジっ子だと言うのです。挙げ句の果てには土草生徒会長までもが」
「、、、、そうか」
危うく言葉を失いかけた。
変な事、と言う事からまさかの自身の何かを言われたんじゃないかと一瞬思ったが違う方向からの左ストレートを受けた感覚になった。
ドジっ子、そう言えば何ない所で転けたりしていたな、と過去の優姫のドジっ子エピソードを思い出す。
当の本人である優姫にその自覚はないらしい。まぁ、「良い子」を意識して生活して来た代償か、自覚以前にドジっ子である訳がないと言う潜在意識だと推理する。
こうなった状態の優姫にストレートに「お前はドジっ子だ」と言えるほど心は弱くもなければ強くもないが、今は多分豆腐ぐらい柔らかいのでショックを受ける優姫の顔は見たくない気分だし見たら豆腐がボロボロになるのが目に見えているので、言わない方向性にした。
「私そんなドジっ子なんでしょうか?物を落としたりなんてしないですし、転けたりだってたまにありますが多くはないですよ」
「まぁ、ドジっ子でもじゃなくても優姫は優姫だろ」
「それはそうですけど」
優姫は気付いてないが部屋の中で良くハンカチや畳み終わった洗濯物を落としたりしている事がある。
自覚のないドジっ子程、強いものはない。
スマホを見ると既に17時過ぎようとしていた。18時までには桜木家旧本邸に帰ると伝えて居たので急いで足湯を出ようと優姫に伝え立ち上がる。
タオルを手に取り足湯から足を出そうとした瞬間、立ち上がった優姫が足湯の中で歩いた瞬間、ツルッと言う効果音と共に足を滑らせる。
(!危ない!)
正面から転けそうになっている姿を見て美琴は咄嗟に、優姫を包み込む様に正面から抱き寄せる様に抱き締めて、滑りやすい足湯を右足を踏ん張りながら耐える。
タオルを有らぬ方向に飛ばして無惨に地面に落ちているのを横目で美琴は見えた。
腕の中で胸に顔を埋め、ビックリした顔をしてから白い肌をこれでもかと真っ赤にしながら固まっている優姫を見て怪我をしてないと分かり安心する。
プルプルと顔を真っ赤にしながら固まっているのは同居して初日の時を思い出す。
これの何処かドジっ子じゃないんだ、と思いながらもそれを口にしたら怒られそうなので辞めた。
そしてお腹部分に触れる柔らかい感触がし、優姫が動くたびにフニっ、ムニっと形が変わる感触に意識が遠のきかけた。
「、、み、美琴君ありがとうございます」
「いや、全然これぐらい」
まだ動揺しているのか顔を合わせない様に一歩下がり足早にではないが足湯から出て、足を拭きながら靴下と靴を履き出口に向かう。
が、フラフラした足取りやいつもならしない前を見ずに歩いたせいで、柱に激突し「あぅ」と小さな声が漏れてしゃがみ込むかと思ったらおでこを抑えながら歩き続けた。
美琴はデジャブを感じたと同時にキュンっとなった。
いつみても恥じらう姿のあの姿は可愛いと思うしドジな部分を見るのも可愛いし愛らしいと思う。
ある意味で優姫と言う人間は最強のギャップ人間、いや天使なのだろう。
その後ろ姿を見ながら足湯を出てタオルを取って、足を拭きながら靴下を履こうと地面に視線を向けると優姫のスマホが地面にあって、ドジっ子三連発と心の中で呟きながら手に取り後で渡しておこうと心に決めた。
出入り口に出ると、鞄に何かを探しながらキョロキョロしている優姫を発見する。
こちらに気付き視線を向けると手に持って居たスマホを見て、ホッと安心した顔をしながら近づいて来る。
「ぁ、私のスマホ、何処にありましたか??」
「足湯の所の地面、多分ポケットから落ちたんじゃないか」
「ちゃんと入れておいたのですが、不覚です」
「まぁ気を付ければ良い事だし、、、、じゃあ帰るで良いのか、帰るか」
「はい、そうしましょう」
落としたことに気付かず、不意に落ちしてしまったと思っている優姫に無意識に自分自身の行動がドジっ子だと認識してないタイプだと美琴は理解した。
こう言うタイプはそのままの方が良さそうだ。変に意識させると悪化する例が、実兄に居る。
タクシー会社に電話をかけながら優姫を車道側ではなく歩道側に自然と歩かせる様にする。こう言う心がけは誰に対してもするべきだと言う必要最低限の教育はされている。




