天使な婚約者とのライバル?
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「此処が清水寺だよ、清水の舞台から飛び降りるって言う言葉ともなった所?なのかな」
「へぇ〜、結構高いな」
「地元の人でもあまり来たりはしませんよ。私も京都に居た頃は3回程来ましたが」
今現在、清水寺に来ている。何故か優姫とその従兄の八重と一緒に。
本当は優姫と2人だけでの観光だったはずが、何故か地元民だからと案内を買って出た八重に優姫の手前断り切れず此処まで来た。
説明は分かりやすいし、案内をし慣れているからか、嫌とは思わない。
テレビで見た通りの風景だと思ったがそれ以上な圧巻と綺麗な景色に少し見惚れる。秋にくれば紅葉も一緒に見れて更に良い景色が見れただろう。
そして、そう隣で嬉しそうにしながら見ている優姫を見ると絵になるなと思う。
既に観光客の優姫への視線は多数ある。天使ならぬ冬の妖精、いや京都だから妖怪じゃないな、女神だろうか。
思わずスマホを優姫に向けてパシャリと写真を撮ってしまった。殆ど、盗撮だな。
「伏見稲荷大社は行ったし、次は金閣寺かな。その前に小腹を満たそうか」
「!」
「優姫、その顔は明らかに食べたいって顔してるな」
「ぅ、美琴君見破らないで下さい」
「井原君にはせっかく京都に来て貰ったし和を感じられるスイーツが良いよね。ぁ、スイーツじゃなくてもおかず系もいっか、、、、うーん」
食べ物の話が出て目を輝かせる優姫に思わず笑ってしまう。
食べる事が好きと言うのが伝わって言われたのが恥ずかしかったのかプイッと顔を背ける所も何とも愛らしい。
ただ、食べる事に関しては自身も好きなので深くはツッコめなかったのは、日頃の行いだろうか。
八重はそんな様子を気にせず、小腹に良さげなお店を考えている。良い人、なのは分かるし悪い人でない事だって分かる。
だが最初に抱いた違和感はそう簡単に払拭は出来ない。
今それを言葉にする気持ちないし、伝える気もないが相手の出方でそれも変えよう。
「よし、まずはおかず系にしようか。喜楽庵岡本の唐揚げとクリームコロッケ美味しいから是非食べて欲しいよ」
「!、美琴君是非食べて下さい。私も食べた事があるのですが、本当に美味しいんです。唐揚げは京風だし、クリームコロッケは京都産の湯葉が使われて居てとても美味しいんですよ!」
「分かった、お前の京都愛は伝わった。食べよう、食べような」
「ふふっ、井原君は優姫の扱いが慣れてるね、流石だ」
「まぁ、一緒に暮らしてるんで」
食べ物の名前が出た途端、更に目を輝かせ熱心に説明する姿が愛らしいが、常に多かった視線が更に増え、周りの観光客が優姫を見ながら「可愛い子だ」、「嬉しそう」などと言われこちらが普通に恥ずかしい事態になる。
普段の落ち着いた姿もそれなりには好感度は持てるが、好きな事や物に関して感情が豊かになって周りが見えてない姿も優姫らしくて好き、だ。
八重の言葉に咄嗟に何故かナチュラルマウントを取ってしまったが、従兄だから長い関係の相手に何言ってんだと、後から気づく。
美琴、優姫、八重は清水寺を出て産寧坂に戻り喜楽庵岡本へと向かう。
人混みがあったからと慣れた手つきで美琴が優姫のを手を握りしめたのを八重は見逃さなかった。
「井原君が優姫の婚約者で良かったよ」
「、、、、え?」
ザクリッと言う音を響かせ唐揚げを食べた瞬間、八重から言われた言葉に思わずそう返答してしまった。
それも口に唐揚げが入っている状態で。
優姫が梅園清水店のみたらし団子を買いに行っている時、2人っきりになった瞬間に言われた事だった。
どういう意味か、素直に受け取って良い事なのか分からないが、唐揚げを良く噛んで頭の中で考える。
「君みたいな頭の良い子だからもう分かってると思うけど、俺は優姫が好きだよ、恋愛感情。1人の女性として」
「、、、、それ、俺に言っても良いんですか?優姫に言うかもですよ」
「君は言わないよ。あの子が困る事は言わない、多分悲しむ事だから君は絶対に言わない」
「何でそんな確信持てるんです?今日初めて会ったのに」
少し棘を感じる言い方で返答してしまう。
予想が当たっていたのは良かったのかは分からないが、それをまだ会っても数時間も経ってない相手、それも好きな相手の好きな人に言うなんて頭がおかしいのか、ネジが数本取れてる人かのどちらかだ。
どっちも同じ意味か。
だが信用されていると言う部分は数時間の間で判断した訳ではなさそうだ。
この数時間、信用に足るような行動をとった覚えは一切ないと美琴は自負する。
「確かに井原君がそう思うのはしょうがないよ。実は昨日爺様と君の会話を婆様がスマホで録音して俺に送って来たんだよ」
「!、、、、嘘」
あの時の内容がまさか第三者は愚か、第四者にまで聞かれている事にドッドッドッドと動悸が止まらない。
自分が言った内容の恥ずかしさが誰かに聞かれた何て言う事を嘘で片付けたかったが、初対面の相手に嘘の内容を言わないだろうと思う。
それと、まさかの薫子にまで聞かれていたとなるのは計り知れない羞恥心が押し寄せてくる。
「本当。俺が来るって言うのを知ってたから送って来たんだろうね」
「、、、、聞いたから信用してるって事ですか?」
「まぁそう言う事だね、簡単に言えば。爺様の前で嘘を付く人は中々居ないから、君があの場で嘘をついていなければの話だけど」
そんな事を言ってるって事は嘘だとは思ってないと言う事だ。
もし、嘘だ、なんて断言付けられたらこっちはこっちで抗議したい所だった。
こう言う時、もう言う返答をすれば良いのか分からないのは、人生経験の少なさと浅さに原因があるんだろう。
「俺はね、君がとんだ最低野郎やったら、優姫を任せるのは辞めて殴ってた。でも、昨日の会話、そして今日君を見ていて色々分かった。君が優姫をちゃんと想ってる事、大切にしている事が伝わった」
「俺は比較的に人を傷付ける人間ではないですが、信用されているのは良かった、です。まぁ、俺が今言える事は優姫を傷つける気は一切ないですけどね」
「ふっ、、、、ぁー、やっとこの恋心に終止符が付ける」
「、、、、そう簡単に出来るんです?」
「出来るんやなくても、叶う訳ないって分かっとるんよ。優姫は俺を従兄、多分兄としてしか見られてない。叶わない恋をずっとしてた情けないしいつかは終わらせないといけない、だから優姫を守れる奴が現れるまでは優姫を守ろうって決めとったんよ」
八重の言葉には重い深みを感じるが、分かっているからこそ誰かに任せる、誰かに自分の想いまで託している様にも見える。
叶わないと分かっている恋をずっとしていたのは、どう言う気持ちなのか、分からない。でも、それはある意味で優姫も同じ様な事でもあるのか。
いくらアプローチしてもそれで恋をする可能性は半々、叶うかも分からない事をやっている。
だが、明確な違いは八重は叶わないと分かっている、優姫は叶わなくても叶うと信じてアプローチをしてる、って言う違いだろう。
美琴は思う。
桜木家と言うのはとことん面白い家だと。そして、信用に足る人間だからと任せてしまうと言う人の良さを直接的に浴びた。
「、、、、、、、、それで貴方は良いんですか?」
「良くないよ。でも、俺は優姫を幸せには出来ない。いや、あの子を幸せに出来る、一緒に幸せになれるのは君、美琴君だけだよ」
「!、、出来ないかもですよ」
「出来なくても君は出来るよ。まぁ、出来なかった時はぶん殴るけど」
「極端ですね、貴方も、、、、優姫も」
此処まで言われたら何も言えない。任されてしまった分、それを全うしなければならない。だが、優姫を恋愛感情として好きになるかなんて分からない、いずれ結婚はする関係だが、任されてしまった分は好きではなくでも全うはするつもりだ。
そう思いながら唐揚げやクリームコロッケを食べ終わり優姫の居る梅園清水店へと、八重と足を向けた。
ふわりと柔らかく優しく冷たい風が頬を掠る。




