天使な婚約者としての本音
薄っすらと赤く染まった頬が落ち着きを取り戻し、改めてヴィクトルの方に視線を向けるとまた真剣な表情をしていた。
まだ話の本題が見て来ない。
何を話したいのかすら分からないのが少しもどかしい。
「それに関してはワシらは勿論優姫ちゃんも感謝はしとる。それでじゃ、お主の気持ちを聞きたい」
「?、気持ちですか?」
「あぁ、優姫ちゃんが否定している手前、聞くのも野暮で無駄な事かもしれんが、優姫ちゃんの事をどう思っとるんか聞きたいんじゃよ。まだ恋愛的に好きやない事は知っとる、だが、優姫ちゃんの事をどう思っとるんかは聞きたいんじゃ」
「、、、、、」
つくづく優姫は家族に恵まれている。
かと言って自分が家族に恵まれてない訳でもない。
ただ、こうやって心配して直接聞いてくる人達が家族なのはある意味で羨ましい。
美咲、奏介であればズバズバと聞いたり切り捨てる風景が目に浮かぶ。
こんな質問をされるたび、柄にもなくちゃんと答えるが、今回の相手はある意味ラスボス。
そんな相手への返答は生半可なものでは許されないだろう。
「多分長くなると思います」
「優姫の事は人として尊敬する部分もありますし、恋愛感情かは分かりませんが好きです。俺は人より自分の感情に鈍感です。俺が人に向けている感情の正体が分からなくて周りに言われて気付く事があります。だから、俺が優姫に向けている気持ちや考えが俺では分からないです」
「でもそんな俺が言えるのは、優姫は大切ですし悲しませたくない、泣いた顔を見たくないと思ってます。優姫の笑顔が好きです。可愛いとも思ってます」
「、、、、ふっ、そうか、それが聞けて良かった。美琴ちゃんが優姫ちゃんの婚約者、そして優姫ちゃんが好きになったのが美琴ちゃんで良かった」
思いの外、色々言ってしまったが、頭の中で思っている事を言葉にするのは苦手だと常々思っていたが、ここまで下手だとはここで痛感するとは思わなかったがな。
少し気持ちを言い過ぎて好きや可愛いと言うのを言語化してしまい、照れも生じる。
だが、正直に言った事でヴィクトルから認められた事は良かったと思う。
だが、改めてだが優姫が何故好きになった理由が気になるところだ。
美琴は好きになった理由を考えるたび、最低な事でしか思い浮かばない。家柄、顔、それでしか好意を向けられてこなかった人生を送ってきた美琴からすれば純粋な好意とアピールしか向けてこなくとても美少女な優姫は異質な人間であった。
冷めたお茶を飲んで落ち着こうと思うと、広間の襖が開き視線を向けると、夕ご飯の置かれたお盆を持った薫子と優姫、そして数人の使用人が入ってくる。
今だけは少し優姫に顔を合わせるのは気まずくなり一瞬顔を背けてしまった。
「さっ、食べよう」
「美琴君の口に合うとええんやけど」
「全部美味しそうです」
「全部美味しいです」
「、、優姫がそう言うならそうだな」
目の前に置かれたお盆と置かれた料理を見ると、郷土料理も含まれているが和食がズラリと並んでおりとても美味しそうだと感じた。
優姫が自信満々に言う姿に、気まずさなんて無くなって顔が綻びながら返答してしまった。
箸を手に取り、「いただきます」と言って煮物に箸を向ける。
材料が全部、優姫が作る煮物と同じでこの家で料理を習ったんだとすぐに分かる。
それだけで、緊張していた体が柔らかくなる。
「、、、、何で布団が1つだけ」
「祖母がすみません。いずれ婚約するんだから1つで良いでしょうって言いまして」
夕ご飯を食べ何故か2つあるお風呂の露天風呂の方に入り優姫が使っていた部屋に行くと丁度風呂上がりの優姫が部屋の入り口で立ち止まっていたのを発見。
何かあったのか?って思い部屋の中を覗き込めば、1つだけ布団が畳の上に敷かれている状況を見て言葉を失いかけた。
優姫も知らなかった事らしく、今日で何度目かの謝罪を聞きながら、この状況をどうする方法もない。
一緒に寝る事自体は美琴は何とも思ってないが、明らかにそう言う感じの雰囲気を作られている事には薄々気付いているらしい。
それを全く気付いてない変なところで鈍感発揮な優姫を見て風呂上がりで無防備さもあるなっと思ってしまう美琴が居る。
「とりあえず、寝よう。明日は朝早くから観光だろ?」
「そ、そうでしたね、ね、寝ましょう」
部屋の中に入ると、優姫の部屋っと言うのが分かる。
同棲している方の優姫の部屋は見た事はないが、何故か優姫感が漂った部屋だったからだ。
無数の本が置かれ整理整頓された本棚や無駄な物が一切置かれてない勉強机、だけど可愛い物が置かれた棚。全てが優姫を強く感じる。
だが当の本人は依然としてこの状況にいつになく緊張しているらしい。
まだ2回ではあるが、一緒のベッドで寝た経験があるが何故緊張しているのかが分からない。
まさかアレなのか?自主的に行った行為に恥ずかしいと言う感情はないが、第三者からのは恥ずかしいと言うものなのか。
良く分からないながらも美琴は、布団付近で座り布団を持ち上げ、中に入って寝っ転がり優姫の方に体ごと向ける。
「優姫が入ってくれないと寒いな、、、、、、、、」
「!、み、美琴君を温めます!」
このままでは畳の上で寝そうな雰囲気を優姫が醸し出しているので苦渋な決断と布団なしで寝たくないと言う気持ちが勝ち、お願いをすれば優しい優姫は即座に温める事を実行する為に電気を消し隣に寝っ転がってくる。
変な所で単純な優姫に笑いかけたのを何とか我慢した。
入って仕舞えば緊張もなくなったのか、普段通り距離が近い。
寝るか、と思ったが何かを思い出したのかこちらに体を向ける優姫。
「そう言えば何ですが、明日従兄が来るそうなんです。お祖母様が言うには」
「従兄?」
「はい。父の妹の子供で、もう1人の兄みたいな人なんです。京都に居た頃はとても仲良くしてました」
「、、、、なら、俺も挨拶はしておくか」
「!、、、、はい」
従兄、と聞き少しモヤっとしてしまった。
従兄だぞ、優姫は兄としてしか思ってない相手に何を思ってるんだ。
それとまだ会ってない人物に対して。
美琴は少し自分の感情の答えが分からなくなり、どれだけ鈍感なのかが早くも痛感する。
スヤスヤと隣で眠る優姫を見ながらこんな感情の答えなんて知らなくて良い、そう思いながら眠りに入った。




