天使な婚約者の過去の話
「、、、、優姫の小さい頃か」
「み、見ないで下さい!美琴君!」
暫く話をしてから、薫子が徐に優姫の幼少期の写真が入った大量のアルバムを出して来た。
懸命に止めている優姫をヴィクトルが抱っこをした事で、生まれた時から中学生までの写真を見る事が出来た。
生まれた頃の写真はまだ赤ちゃんと同時に地上に舞い降りた迷子の赤子の天使みたいに可愛さを放ち、幼稚園生では誘拐されかけるのが少し、いやだいぶ理解出来る程の可愛さと愛らしさを放った姿でキュンとなった。
写真はゆうに1000枚はあるであろう分厚さと量が目視で分かる。
だが、余程アルバムを見られた事が恥ずかしかったのか顔を赤くしながら、満足げなヴィクトルに床に降ろされる。
「うぅ、、」
「、、、、可愛いぞ、子供特有の表情をしてるし」
「ッ、そう言う問題ではないのです。そもそも、アルバムは隠していたはずなのに」
「この家はワシの方が長くおるんじゃぞ?知り尽くしとるに決まっとるわい」
「優姫ちゃんの小さい頃の写真見て貰いたいんよ」
いつになく恥ずかしがって居る優姫の姿を見ると新鮮でその照れ顔は、物事に対しての恥ずかしさと言う感じだ。
こちらが何かした時に出す赤面とは少し違う。
言葉にするのは難しいが、こっちのはむず痒さを感じている照れで、こちらが何かをした時のは嬉しさと混乱と幸福を感じている照れ、と言う感じだ。
色んなページを捲っていると、明るい茶髪の美青年が何かの入学式で撮ったであろうスーツを着て映った写真に目が止まり、自然とそのページで捲っていた手が止まる。
他の優姫の写真には映っておらず、親戚か?と思うが何故か初めて見ると言う感覚ではないのが気になる。
優姫の兄である優弥と似てはいるが、雰囲気は全く違う。
既視感と言うのだろうか、此処最近この美青年が放つ雰囲気を肌で感じた様な。
「ん?ぉ、姫奈人の写真そこに混ざっておったのか」
「、、、、え?姫奈人?、、姫奈人って優姫の」
「お父様ですね、え?これ、お父様なのですか!?」
姫奈人と言う名を聞き、耳から脳まで届き理解するのに時間がかかった。
あのガタイの良いヴィクトルとは違う感じのゴリラである姫奈人がこの華奢な爽やかな美青年だと言われて信じられないと思ってしまった。
だが、目の感じや雰囲気は姫奈人と全く同じだ。
優姫も知らなかった様で驚いた顔をして写真を二度見している。
「あら、そう言えば優弥君と間違えたんやわ、色々似とるんよなぁ」
「お祖母様、お父様とお兄様は結構違うと思いますけど。でも、本当に全然違う、今のお父様と」
「アヤツは成人するまでヒョロヒョロだったからな」
「それでどうやって、此処まで成長したんだ」
突然変異したとしか思えない程の成長に疑問しかないが、優弥にその遺伝子が受け継がれてない事だけはある意味良かったかもしれないと思ってしまった。
アルバムを視線を戻すと、中学生時代の優姫の写真が目に入る。
少し幼くだけど変わらず天使の雰囲気を纏ってセーラー服を着て少し髪が短い優姫で、可愛いなと素直に思う。
だが、少し見覚えのある姿だった。
何処かであった様な、と頭の中で考えても基本的に思い出せないから、考えるだけ無駄か。
「美琴君どうかしましたか?」
「いや、優姫は昔からモテてそうだなって」
「美琴君も絶対モテてましたよ。美少年として!」
「何処から来るんだその自信」
ボーッとしていたのに気づいた優姫から問いかけられて咄嗟に誤魔化したら斜め上の返答に思わずツッコんで笑ってしまう。
美琴からすれば優姫の言う言葉は全てツボに入るかもしれないぐらい、優姫が美琴に対する愛情がヒシヒシと伝わり続けているのかもしれない。
そんな孫と将来の孫の様子をニコニコと見つめながらお互いに目を合わせ、微笑み合う薫子とヴィクトルと言う穏やかな空気が広間で出来ていた。
「美琴ちゃん、少し昔話を聞いてくれんかね?」
「え?、、、、はい」
夕焼け空へとなり夕ご飯の支度と運んでくると言い、薫子と優姫が広間から退席した瞬間、ヴィクトルが真剣な表情で上座から見下ろして提案をしてきた。
ビクッとその低い声に驚いてしまったが、断る理由もなく崩していた正座と姿勢を正して前を向く。
「優姫ちゃんはワシが1番可愛がっとる孫、で特別なんじゃ」
「、、、、はい」
「ぁ、他の孫も可愛がっとるからな??全員可愛いし特別じゃ!、、、、じゃけど、優姫ちゃんは少し違うんじゃよ」
「、、、、髪ですか?」
「!、、あぁ、そうじゃよ。あの子だけが唯一ワシの白髪を受け継いだからのぉ」
桜木家の中で白髪なのはヴィクトルと優姫の2人。
薫子は黒髪に白髪が少し、その息子である姫奈人は明るめの茶髪、その妻である優華は濃いめの茶髪、娘の華奈は金髪、優弥は茶髪で姫乃は濃い茶髪だと言うのを思い出す。
言われてみれば優姫だけが白髪だと言うことを思い出す。
クウォーターであればある程度日本寄りの髪色になる事が多いく、自身もフランス人の祖母を持つ身とし最終的に黒髪に行き着いている。
唯一クウォーターと言える部分は緑の目だろうか。
珍しいと言えば珍しい、だからこそ優姫が学校で特に目立っているって言う事なのだろう。
それが天使と言われる理由の1つかもしれないし、白髪じゃなくてもあの美貌は目を奪われる。
「あの子は小学校の頃、クラスメイトの男子に自分の髪色を揶揄われとったんじゃ」
「、、、、そうなんですか」
言葉を失いかけた。
揶揄われていた事に怒りかけたが、その揶揄いが好きな子に意地悪をする小学生男児と考えると、怒りよりも子供だなっと言う気持ちになった。
確かにあんな異次元の雰囲気を放ってる優姫に話しかけるのは勇気は居るが、揶揄うって選択肢しかないのは子供だなっと思う。
だが、当時の優姫からすれば信じられない事、ではあるか。
「信じられんじゃろ?ワシもじゃ」
「それにあんなにも可愛いとなれば、優姫ちゃんから教えられたかもしれんが、誘拐もされた」
「はい、教えて貰いました」
「あの子は誰かを好きになる事はないと、ワシは思っとった。だが、お主のおかげであの子は自分の事も白髪も好きになったんじゃよ」
「え?」
ヴィクトルの言葉に声が思わず裏返る。
誰のおかげと言った?なんで好きになったんだ?何か優姫に言ったか?
頭の中で過去に優姫の髪を褒めた記憶を遡るが一切思い浮かばなかった。
優姫を褒めているなら覚えている可能性は薄っすらとだがあるはずなんだが、ない。
だが、美琴の場合は無意識に褒めている事が多いのと、褒めていると言う部類に当て嵌めてない褒めをしている事が多い。
いくら記憶を思い出してもそれらを思い出す訳ではないと言う欠陥脳を持っている。
「お主は覚えとらんと優姫ちゃんは言っとるが。高校の入試の時じゃ。高校の入り口で緊張しとる優姫ちゃんをお主が話しかけたんじゃよ」
『、、、、緊張する』
『俺も』
『え?、、、、!』
『ぁ、悪い。同じ思いしてるやつが居たからつい』
『そ、そうですか』
『、、、、綺麗、だな。その髪と髪色』
『!、そ、そうでしょうか』
『うん、可愛い。と言うか神秘的?ってやつ』
『!!!!!!、、、、ぁ、ありがとうございます』
『褒めたつもりはないけど』
「そんな会話を美琴ちゃんとしたそうなんじゃ」
「、、、、、、、、ぁ」
1年以上近く前の事を話を聞きながらなんとか美琴は思い出した。
確かにあの受験の日誰かに話しかけた記憶はあった。
確かに話しかけた相手の髪色が珍しかったから、言葉にし褒めた記憶もあった。
だが、良く顔を見ていなかった事もあり、入学後、その相手が優姫だとは思わなかった。
盲点だった。
同じ髪色であれば同一人物だと言う可能性は十分あった。
だけれど、珍しい髪色が居る生徒が多かった事もあり、他に白髪の生徒も居るだろうと言う安易な考えになってしまっていた。
今更ながら恥ずかしい事を言った。
褒めたつもりはないと言ったが実際は綺麗だったから褒めた部分もあったし、思った事を言ったが側から見ればキザ野郎だ。
過去の自分の言動を振り返って羞恥心に浸るとは思わなかった。
顔を下に向けたい気持ちをなんとかなんとかして、抑える。




