天使な婚約者の祖父母宅訪問
約50分かけて京都の中でも特に昔からの富裕層が暮らす地区の中でも特に横に大きく日本家屋の屋敷の前に着いた。
大きな門と塀があり、表札には大きくそれも彫って「桜木」と掲げられていた。
車の中、それも目視だけだが敷地面積は信じられない程広いのは分かる。
桜木財閥旧本邸、それも会長夫妻暮らす家となれば高級感溢れているとは予想出来たが、実家などを思い出すと違うベクトルで異質感を放している。
車から降りると、待っていたと言うばかりに門が開く。
誰かが開けた訳ではなく自動で開いたからそこは最先端だな、と心の中で思う。
森安さんがスーツケースを降ろし、また車に乗り込むと車を車庫に戻すのか走っていき屋敷の角で曲がっていった。
「美琴君、中に入りましょう」
「あぁ、、、、森安さんって運転手なのか?」
「はい、それも兼任してますね。祖父が社長、現役の時は秘書としても働いていたそうです。今は執事長をしてますね」
「へぇ」
シゴデキの雰囲気は感じたが、かなり凄い人で納得する。
スーツケースを引っ張り、門の中を入り歩くとバタンと門の扉が閉まる音がしてやはり何処からか監視されているんじゃないかと思う。
優姫は慣れているのかいつも通りの表情でだけど懐かしい表情をして敷地内を歩いていた。
敷地内はその名の通り日本家屋であり一階建の様にも見えるが部分によっては2階もあるらしい。
庭先が視界に入り、大きな池や盆栽などがあり手入れされているのが目に見えて分かる。
玄関扉も大きく、明らかに普通の人が使う用ではないのが窺える。
ガラガラと引き戸の玄関扉を引き優姫を先に入れてから中に入ると、50代ぐらいの着物を着た女性が立っていた。美魔女と言うよりも綺麗な大人の女性と言う感じだ。
優しい顔をしておりその笑顔に既視感と見覚えがあった。
優姫の方に視線を向けると、目を輝かせており一瞬でこの女性が誰かが分かった。
優姫の祖母だと。
「お帰りなさい、優姫ちゃん、それといらっしゃい美琴君」
「ただいまです、お祖母様」
「初めまして、井原美琴と申します。この度はお世話になります」
「そんな堅苦しくしなくてもええんよぉ、優姫ちゃんの婚約者って事は私にとっては孫なんだからね。さっ、上がってぇな」
軽く会釈をしてから用意されたスリッパに履き替える。
こう言う穏やかさは優姫が受け継いだのか、いや、姫奈人も似ているから、内面は父親になのは大方あっているっぽいな、と思いながら使用人と思われる男性にスーツケースなどの諸々の荷物を預ける。
優姫の祖父の所へ向かっている廊下は長く、家の隅々に視線を向けると年季は入っているがちゃんと手入れされているのが分かり、リフォームされている点を考えるとまだまだ長く使えれる感じだ。
使用人達は全員着物を着ており色が統一されているのが分かる。
「なんか緊張してきた」
「大丈夫ですよ、祖父は陽気な人なので」
「そうよ、あの人美琴君に会うの楽しみにしてたんだから」
「そ、それなら良いんですが」
その楽しみの方向性が違ったら、と思うと胃が少しキリキリする。
もしかしたら、孫との婚約は認めない、とか言う人であればこちらは何とも思わないが優姫がまた喧嘩腰になる可能性が頭の中にチラつく。
優姫の怒った顔は勿論怒っている姿はなるべく見たくはない。
普通にちょっと怖い。
そう美琴が思っていると、広間に着いたのかお祖母さんが止まり、襖を開ける。
その瞬間、ブワッと勇ましい威圧感が全身を襲いビリビリと手足が痺れる感覚に襲われる。
「貴方、優姫ちゃんと美琴君が来たわよ」
「ただいま、お祖父様」
「は、初めまして、井原美琴で、す、、、、」
「うむ、君が優姫の婚約者か」
中に入った瞬間、座っているだけでも大きいと分かるほどの存在感、そして威圧感、そして迫力を出し広間の上座に座る人物を見て息を呑んでしまう。
白髪に皺があるが若々しい雰囲気を纏い、言い方が悪いがゴリラの様に感じる。着物を着崩しているが良く似合い、筋骨隆々と言う言葉が良く似合う。
桜木家現3代目当主・桜木ヴィクトル74歳。
ロシア人であり桜木家前当主の娘であった優姫の祖母・桜木薫子76歳に22歳の時に婿入りをし、数多くの伝説を残したとホームページで見た限りだが。
実物は想像以上に化け物感を放している。
何処が陽気な人なんだ、完全に敵を見ている様な感じじゃないか!
ズイッと座布団から立ち上がったヴィクトルは200越えのゴリラが目の前に居る様に感じ、ズンズンッと地鳴りがしそうな程に美琴の前に近づいて来る。
「君が美琴、、、、」
「ッ、、は、はい」
バッと、ヴィクトルが両手を広げた瞬間、目を瞑って体を細めてしまう。
何をされるかと言う不安が来たが、次に感じた感覚は、大きく優しいものに全身を抱き締められていると言う感覚だった。
目を開けると、ヴィクトルに抱き締められており、横を見るとハァとため息をつき「まだですか」と呟く優姫がおり、頭の中が大混乱になってしまっている。
何故抱き締められているのかが分からないと同時にこのまま握り潰されるんじゃないかと言う恐怖と混乱を感じながら顔を上げると、ヴィクトルが声を上げる。
「君が美琴ちゃんかぁ!!会いたかったよぉ!!!!!!」
「、、、、???、、、、ん?????、、、、!!?!?」
「お祖父様!美琴君が混乱してます!だから言ったじゃないですか!緊張してる時に怖い顔をしないで下さいって!」
「だって美琴ちゃんと初めて会うんだから緊張するのは当たり前じゃろ!?」
「貴方ったら本当に緊張しいなんやから、ふふっ」
3人の会話が耳に入っているがそれが遠くで聞こえるほど、ヴィクトルの変わり様に脳の理解が追いつかず、依然として頭の中が混乱してしまう。
ニコニコとこちらに笑顔を向ける姿が先程と真逆の姿で脳の中で同一人物と認識しない。
優姫と撫子の会話を元にするなら、緊張するとあんな化け物じみた雰囲気を出すってなるなら、是非直した方が良いと勧めたい気持ちになる。
何とか、落ち着けれて今だに抱きしめ続けているヴィクトルの腕を軽く触る。
「ぁ、あの、その抱き締めるのをその、そろそろ」
「ぁ、そうじゃったなぁ!すまんのぉ、美琴君」
「い、いえ」
美琴が緊張し声を裏返らない様にしながら言えば、ニコニコとこちらに笑顔を向けて抱きしめていた腕を離すヴィクトルにホッと一息付けた。
そそくさと優姫が隣に近づいて来る。
その顔は申し訳なさそうな顔をして顔を見上げて来るのが、可愛いと思うと同時に優姫の存在が近くに居るのが凄く安心する。
そのまま広間に案内され、座椅子に座るとニコニコしながら使用人が用意したであろうお茶を目の前に置く薫子に軽く会釈をする。
まだドキドキと心臓がうるさいのを落ち着かせる為に、お茶を飲むとお茶の暖かさと美味しさにホッと息が落ち着く。
「ごめんなさい、美琴君。お祖父様は人に対して距離が近いと言いますか、人に対して明るく接する所がありまして」
「いや、全然。ちょっと、あの距離の近さは俺の父の方の祖父母に似た感じがするがな」
「そうなんですか?、良い人なんでしょうね」
「まぁ良い人であるが、普通にうるさいと思う」
うるささを考えると自身の父方の祖父母の方が厄介でうるさいと感じる。
だが良い人ではあるし、悪い人達ではない。
いつか、優姫にも会わせてあげたいな、と思うがいつか必ず会うからその思いも必要はなかったなと思いだす。
すると、何故か薫子がふふっと笑みを溢してこちらに笑顔を向けて来る。
「ふふっ、2人とも仲がええんのね。何だか昔の私とお父さんみたいやわ」
「そうじゃろうか?昔も今も薫子が可憐だったのは変わらんがな」
「!、もう、お父さんったら」
「、、、、祖父母がすみません」
上座に座りお茶を飲みながら理想的な老夫婦な雰囲気を放ちながらイチャついているヴィクトルと薫子の姿を目の当たりにして、ちょっと言葉に詰まってしまった。
美琴の両親と優姫の両親とは違うイチャイチャの雰囲気である。
年季と言うのが違うのか。
優姫が顔を赤くしながら今日で何度目かの謝罪を耳にする。
自身のアプローチには恥ずかしくはないが、身内のイチャイチャに関しては恥ずかしいと思えるのだろう。
何だか、想像していた訪問とは真逆だったな。
良い意味で緊張したのが無駄だったと感じるぐらい良い人で、優姫の祖父母なんだと実感する。
自然と頬が緩むのが分かる。




