天使な婚約者の幸せな我儘
「優姫を信じてないんじゃなくて、俺を信じてないんだよ、お義姉さんは」
「美琴君」
「ッ、、、、」
緊迫状況の空気感となったリビングの空気を変える為に、意を決して言うと優姫は驚いた顔をし、その姉である華奈は図星、本当の事だからか何も言えない顔をして、顔を背ける。
大事な妹って声を大にしてまで言う人が、優姫の事を信じてない訳がないだろうとし優姫がそれを分かってない訳もないと思うが、それ以上に気持ちを無碍にされた気持ちの方が強かったんだと分かる。
「、、美琴君、それって」
「考えてみろ。俺だって優姫と関わる前は優姫の噂や周りの言う優姫の人間性を信じてただろ?それは優姫の事を知らなかったからだ」
「はい」
「それで、お義姉さんだって俺の事は会った事もなければ話した事もない、どうやって知るかなんて事前情報や優姫からの話だけだ。優姫の話だけだと優姫を弄んでると思ってもしょうがないだろ」
「人って言うのは人からの情報でその人を決めてしまう部分もあるんだよ」
「、、、、そうなのですか?」
「、、、、、、、、そうよ」
「姉さん」
「そもそも、大事な妹を信じない姉が何処に居るんだよ。信じれないのは俺だけだ、まぁそう思わせる様な行動を取った俺が1番悪いが」
思った事、そして誰も傷付けない様に説明すれば落ち着いた優姫は勿論、華奈も落ち着いた。
優姫からの問いかけに恥ずかしいのかまだ顔を背けたまま、返答をするのを苦笑いをしてだけど嬉しそうな顔をする優弥。
今回のミニ騒動の原因は曖昧な言動を取って優姫の身内に不安を感じさせた美琴にも一端がある。
そもそも、妹を信じない姉は居ない、と言うが実際に今一緒に長いソファに座っている兄弟達の構成で行くとこうなる。
右から弟の言う事は全部正しい理論の長男幸介、兄の言う事は大方正しい理論の末っ子美鈴、兄は鬼だが弟は全員天使だから全部信じるでしょ精神の次男龍介、自分の兄弟が馬鹿な事言う訳ない精神の三男翔介と言う兄弟構成だ。
「姉さんは優姫を優姫は美琴君の事を想ってるから、強く言い過ぎだんでしょ。俺だって初対面の相手を簡単には信じれないけど、姉さん、優姫の好きになった人をまず疑うのは良くないよ。応援するって決めたでしょ」
「、、、、お姉様ごめんなさい。酷い事言ってしまって」
「ううん、アタシも悪かった。いや、アタシが悪い、年が離れた妹だから騙されてるんじゃないかって先入観と優姫からの話だけで優姫の初恋相手を疑った。優姫を信じるって優姫を応援するって言ったのに、、真逆の事をした。本当にごめん、なさい」
穏やかな優弥からは信じられない程、至極真っ当と言うか真面目な言葉は良い意味で優姫の兄だと分かる。
優姫は立ち上がって頭を深く下げて華奈に対して謝罪をすれば、華奈は長文で謝る。語彙力を見るとそこは優姫に似ているなと分かる。
だが、お互いに謝罪したからか、空気が良くなり優姫と華奈がお互いを見つめる顔が優しく、仲直りしたって言うのが分かる。
「仲直り出来た?」
美琴はそれを見て安心し、喉が渇き立ち上がると、客室から出て来た姫乃の登場にキッチンに行く足を止める。
「姫乃、うん、仲直りした」
「そっか、良かった。それで、美琴君に謝ったの?お姉ちゃん」
「ぁ、、、、、、、、美琴、ごめんなさい。許されるとは想ってないけど、1つ言っておく、優姫を悲しませたら許さないから」
「別に怒ってないですし、謝られる事でもないですから。それに優姫を悲しませる気は毛頭ないです」
「ふっ、そう」
姫乃の言葉に謝る事を思い出し、やはり妹に弱いのか姫乃のニッコリとして視線を向けられながら立ち上がり謝罪してだけど忠告もしてくる所はつくづく優姫の姉だと思える。
怒ってない事やその忠告を受け入れれば、安心したと同時に面白い認定した様な顔をする。
それはそれでどうなのかと思うが、敵認定されなくなっただけまだマシかと思う事にした。
「、、僕が余計な事を言ったら空気が悪くなったんでしょうか」
「すず君今更それ言う〜?もう解決してるし、みー君は怒らないから安心しなって」
「まぁ龍介のその通りだな。にしても翔介があんな事を言うとはビックリしたな」
「別に新年早々人様の家の喧嘩とか見たくなかっただけだし、ミコを使って仲裁させようとしただけだし」
「翔兄さん、照れたからってパーカーの中に閉じ籠るなよ」
兄弟達は兄弟達で変な反応示してるが、やはり三者三様ならぬ四者四様と言うのだろうか、雰囲気も見た目も違うが安心するのは兄弟だからだろうかと美琴は思ってしまう。
すると、隣に近寄って来て服の袖を引っ張ってくる優姫に耳を近づける。
こう言う時は何かを言いたい時だと分かるので、耳を話しやすい位置に体をしゃがませる。
「美琴君、2人っきりになりたいのですが」
「?、別に良いけど」
突然の提案に少しの驚きと不思議があったが、2人っきりになりたい理由はある程度分かる。
その理由の中にこの場に居る全員が居れば行えない事をすると言う事だろうとも。
「ありがとうございます。、、、、あの、2階に取りに行く物あがあるので私と美琴君はちょっと失礼しますね」
「ぉ、分かった。みー君、ちゃんと持ってあげるんだよ〜」
「分かってるよ」
「2人で大丈夫?私も手伝うよ」
「姫乃お姉様大丈夫です、美琴君が居るので」
姫乃の提案を優しく却下し、服の袖を引っ張ったまま2階に上がる優姫の後ろを慣れない歩幅で歩く。
取りに行く物なんてないはずなのに、何も言わずにその場を離れれない性格故なのだろうか。
2階に上がり、自分達の部屋を通り過ぎて季節ごとにしまっている服や家電などを置いた部屋の前に着いた途端、優姫が両手を広げて背伸びをし目の前で立ち止まりこちらを見ている。
(これは、、、、あれか)
優姫の性格を考え、謝罪が来るかと思ったが、斜め上の方向からの甘えると言う行動に動揺はするが、目の前で手を広げている優姫を見て何もしない訳にはいかない。
モジモジと震えてる彼女は待っている様な上目遣いの目で見つめてくると、心臓が外国人選手が野球ボールを握り締めてる感覚になる。
優しく包み込む様に抱き締めると、パァァと目を輝かせたかと思えば、顔を首元に付けてスリスリして来てビクッと体が震えてしまう。
無意識にしているのが分かってしまうからこそ、変に反応が出来ない苦しみを味合わされてしまっている。
「急に抱き締めて欲しいなんてどうした?」
「ぁ、、、、えっと、美琴君って自分が悪いと思ってる事に対して人から謝罪されるのって苦手ですよね?」
「え」
甘えてくる事に関しては別におかしいとは感じないが、少し変だと感じ問いかけると、確信した様に良いスリスリしていた顔を上げて顔を見つめるその顔は少し言葉を選んでる様な目で見つめてくる。
優姫が言う通り自分が悪いと思ってる事に対しての人からの謝罪は苦手だ。
そもそも人からの謝罪自体も何故かめんどくさく感じる。
それを見抜かれているとなると、今のこの状況に陥っているのは何故かと言う気持ちにもなる。
「本当は、本当は謝罪がしたいです。ですが、今回の事は私も悪い部分がありますが、美琴君の性格を考えると自分が悪いと思ってると私思うんです。だから、私が謝れば美琴君は嫌な感覚になるんじゃないかと。謝りたい気持ちを抑えるには、これしかなくて」
「、、、、だから、抱き締めてもらう、と」
「はい、、、、」
本当は謝りたい気持ちを抑えてのハグと認め、キュウと鳴く様に犬の耳が垂れる様に顔を下に向ける優姫を見ると可愛いと思ってしまう。
前までの優姫なら何が何でも謝罪をする事があった。
だが今の優姫は相手が苦手だからと謝るのを辞めると言うところまで成長したのかと思うと、少し感動までする。
思わず腰に回していた片方の手を離し頭に手を置き優しく撫でる。
そうすると驚いた後、嬉しさと戸惑いを感じながらも受け入れているのが何とも可愛くて愛おしいと感じる。
ある意味で甘えているって事なのかもしれないし我儘なのかもしれないな。幸せな我儘、だな。
10分ほどそのまま撫でを満喫した後、棚に置いておいた大鍋の入った箱を手に取りリビングに戻った時の各兄弟姉妹の反応はと言うと。
「それぐらい出来るのに、言ってくれれば良かったのに」
「そーだよ、みー君非力なんだから、お兄ちゃんに任せれば良いんだよ!」
「、、、、ミコ、お腹空いんだけど」
「美琴お兄様、タブレットの充電機を忘れてしまいました」
「アタシそれぐらい出来るのに!」
「お鍋にハマったとは聞いてたけど、大鍋だったら沢山食べられるね」
「ふふっ、お鍋って美味しいもんね」
なんて先程までと打って変わって良い雰囲気での反応だが、約1名腹減り野郎が居るのには変わらないが。
優姫キッチンに行き、お鍋の箱を置いて、お昼ご飯をお盆に置いてリビングに戻る。
新年早々、両家両親の来襲や姉妹喧嘩、などなど様々な事が舞い込んで胃に穴が開きそうなぐらいな事が起きたが、優姫からの甘えが可愛く愛おしく感じ、それで精算出来たかな、と思う。
この1年も騒がしく穏やかとは程遠い1年を過ごすと思いながら、美琴はタブレットの充電器を美鈴に手渡す。




