天使な婚約者と兄弟姉妹
「母さん、何で俺達だけにしたんだよ」
『私達大人が居ても気を使うだけでしょ』
初詣を終えてマンションに帰って来てお互いの兄弟姉妹を引き連れて、そして両家両親が居ない事に電話をかけて文句を伝えれば、子供でも納得し辛そうな事を言い、ため息が出そうになる。
実際大人と言うのであれば息子3人は成人した大人だぞ、と思うが電話先で聞こえる実家の執事の声を聞き、家に帰りやがったと悟って来る気がないのも伝わり何も言えなくなった。
キッチンでお昼ご飯にと食べやすいうどんとおにぎりを用意して居る優姫を横目に見ると、着物を早く着替え終わらせてすぐに料理が出来る根気は凄いと思える。
『それに、幸介達は優姫ちゃんを、優姫ちゃんのお姉ちゃんお兄ちゃん達は美琴の事を良く知らないんだから、仲良くならるチャンスだと思いなさい』
「、、、、ハァ、お年玉」
『分かってるわよ、期待してなさい。じゃあね』
美咲の正論に少しタジってしまったが、優姫と兄弟達と仲良くなって欲しいと言う気持ちは当然ある。
いずれ夫婦になると考えれば、早いうちに関係作りをするのと1つの案だとは思う。
美琴は電話を切ってスマホをズボンのポケットに入れてソファに座ると、井原家次兄・龍介が肩に手を置いてドカッと隣に座って来る。
「みー君どーした?また母さんに何か言われたのか?」
「そんな所。仲良くしろ、だと」
「ふーん、、んで、華奈さんと優弥君が結婚してるんだね、同じだね」
「龍介、少し距離が近いぞ。すみません、両親からは華奈さん達の事は聞いてましたが」
「別に大丈夫よ、ぁ、井原美琴にはまだ自己紹介してなかったわね。桜木華奈32歳」
「じゃあ次は俺かな?桜木優弥です、年齢は26だよ」
「次は私だね、大学3年の桜木姫乃です」
「、、井原美琴です、16歳です」
自己紹介をされて何故か咄嗟に知られて居るのに自己紹介をしてしまった。
長女であ華奈から自己紹介中でも赤ん坊、娘さんを抱っこしながらも強い敵意を向けて居るのはシスコンの気質を見受けられる。
華奈の髪色や目の色、顔立ちなどの見た目は優姫に良く似て居るが、鋭い目元や雰囲気は全く似てない。
優弥と姫乃は逆に見た目など優姫に似てないが雰囲気や優しい目元は良く似て居る。
多分だが優姫と華奈が見た目は父親である姫奈人に似て、体格は母親である優華に似た。優弥と姫乃が見た目は優華似、体格が姫奈人に少し似たと感じる。
少しばかり空気が悪く感じるし視線を向けられるのも少しきついと感じると、唯一の弟、美鈴が近寄って来る。
「美琴兄様」
「ん?何?」
「あの、華奈さんと言う人は美琴兄様を敵に思ってるみたいです」
「は?」
「なっ」
小学2年生からの突如の内部告発に思わず固まる美琴。
華奈もまさか小学2年生である美鈴がそんな事を言うとは思わず、驚いた表情をし、リビングの端で仕事の連絡を終え戻って様子を見た幸介はため息をつく。
三男、翔介は興味がないのかスマホに夢中状態を貫いている。
龍介は驚きながらも、美鈴と美琴の間に入って美鈴の口を優しく抑える。
「ちょっ、すず君それ言わない約束!」
「ですが、いずれ親戚付き合い、それも義理の姉、弟関係になるのであれば何事も解決した方が良いと僕は思うのです」
「うーん、この末っ子め!お兄ちゃんそんな難しい話分かんない!」
「まぁまぁ、美鈴の言い分も分かるが、そう言うのはズバッと言わないもんだぞ」
美鈴の正論にぐうの音も出ない龍介の悔しそうだけど弟が可愛いのか美鈴の頬をモチモチしながら言う姿を見て笑いながら話しかけて来る幸介を見て、自分だけが知らない話をされても訳が分からないのだが。
「、、また大人の事情と言うものですか?幸介兄様」
「まぁそんな感じだ。まっ、今回は色々勘違いされてるっぽいからな、華奈さんがお前に」
「、、華奈お姉様、そのお話は本当ですか?」
「!、優姫、いや、それはその」
キッチンから料理を作り終わったであろう優姫がエプロンで手を拭きながらリビングに来ており、その顔が普段通りの顔のはずなのに何故か背筋が凍り姿勢がピシッと真っ直ぐに正される。
それは他の兄弟姉妹も同じらしく年中猫背の翔介までも姿勢が良くなって居る。
久しぶりに姿勢の良い兄を見てちょっと感動までする。
だが美琴は気付いていた。優姫が怒って居ると。
大好きな美琴を敵と思っている、そんな話を耳にすればいくら実の姉であっても許せないのだろう、覇気を優姫の背後から感じる。
「お姉様、美琴君を敵だと思ってるのですか?」
「いや、その、、、、姫乃、娘頼んだ」
「分かったよ。お兄ちゃん、お姉ちゃんを頼んだよ」
「分かってるよ、任せて」
優姫の強い視線と言葉に言い訳をしようにも出来なかったのか、諦めた華奈は抱っこ紐で寝ていた娘さんを姫乃のに任せた。
これは話し合うと言う意思表明だろう。娘さんを受け取った姫乃は事前に教えておいた客室に入って行った。
話し合いの意思表明を出しても優姫が怒っているのは変わらない。
何かを言わなければならないと分かっているが、一緒にソファに座っている龍介、美鈴が完全にビビっており頼りにしている長兄・幸介と翔介までがビビって居るとそっちの方に意識が向いてしまう。
1人用のソファ2つが対面する様に設置されておりその間に長いソファが置いてある状況で、優姫と華奈が対面する様にソファに座る。
「それで、お姉様、何故美琴君を敵だと?」
「、、、、好意を伝えてる優姫の気持ちを答えないし、それって優姫を弄んでるって事じゃない」
「仮にそうだとしてお姉様が敵だと言う理由はないです」
「大事な妹が男に弄ばれて嬉しい姉が居ると思う!!?」
「ッ、ちょ」
「美琴、黙ってろ」
「兄さん、、、、」
言い合いとは思えない会話と少し実の姉に対し冷たい対応をする優姫が意外だと思ってしまった。
華奈の言葉を聞き咄嗟に言葉が出そうになった時、幸介から止められた。その顔が少し真剣で美琴は何も言えず黙る。
「前にも言いましたよね。美琴君には私を好きになるまでは答えなくて良いと言いましたよ。私は美琴君が大好きです、美琴君が私の気持ちを私と言う存在を無碍にした事も酷い事も一度もしませんでした。美琴君を馬鹿にする権利はお姉様にありません。お姉様は、、、、私の言う事が信じられないのですか?」
「!」
震える事でだけど真剣に美琴に対しての気持ちを良い、とうとう泣いてしまった優姫。真正面に居た華奈は優姫の泣いた顔を見て目を大きく見開き驚いた顔をする。
泣かせたのが自身だと言うのを理解して居るのか、言葉を中々発さなかった。
「優姫も姉さんも落ち着いて」
優姫の泣く声が響くリビングの中、第一声をしたのはまさかの優弥だった。
優しそうな雰囲気を纏っていた優弥が真剣な表情をして美琴はそれを見て優姫の様な雰囲気を感じ取った。
「姉さん、確かに姉さんの気持ちも分かるよ。大事な妹がもしかしたらって、でもさ、優姫がそんな騙される様な子だと思う?姉さんは優姫を信じられない?」
「そういう訳じゃない、そう言う訳じゃないんだけど」
「優姫も、姉さんが心配する理由は分かるでしょ?いきなり婚約だったり同棲、それも優姫が好きな相手って考えたらさ」
「、、、、はい。でも、お姉様だから信じて欲しかったんです、私の初恋を否定されたと思ってしまったんです」
「違う!、、、、、、、、違うんだよ」
優弥の仲介のおかげか落ち着いた優姫と華奈の2人。
だが、優姫は信じて欲しかったと言う気持ちが大きく、それを否定して居るがどう言えば良いのか分かってない顔をして居る。
優姫を傷つけない様に言葉を選んでるんだろうと言うのが分かる。
それを見ると、美琴は言わないといけない、言って優姫を安心させてあげたい。
だがどうすれば良い、自身が話しかけたらもしかしたら話が拗れるかもしれない。そう思った瞬間、耳元で翔介が話しかけてきた。
「ミコ、言うんだったら今じゃない?」
「!、翔兄さん」
「新年早々姉妹仲を悪くさせたままにする程、ミコはギャルゲーの技術が足りなかったかな?」
「、、、、死ぬほどやったんだから足りないって言われたら怒るっての」
「だったら、ちゃんと良いな」
「、、、、、、、、分かったよ」
翔介の言葉にあるし日のギャルゲー漬けの夏休みを思い出し、胃液が競り上がる感覚になった。
あの日を思い出すと、今この状況の方がマシだと感じるほど辛い経験だった。だがそうなると、この状況を自身が何かを言う方が全く持って平気だと感じれる。
こんな形、それも翔介の言葉で意気込むとは、思わなかったが。




