天使な婚約者の着物姿
「うむ、良く似合ってる」
「思い切って明るい色にして良かったわね」
「半衿と帯締めの色さ、俺の目の色?」
「良く分かったな」
各々の部屋入り作業をし、8時を指していた長い針が6に差し掛かった頃、美琴の着付けとスタイリングが終わった。
慣れた着付けを1人で行うのを両親2人に監視されると言う苦悩に苛まれながらの着付けはいつも以上に完璧だった。
白の着物に黒い羽織り、半衿と帯締めは美琴の目の色と同じ濃くだが少し淡さを含んだ緑色だった。
黒い羽織には白い矢羽が袖などにあり、ワンポイントと言うものだろう。
そして両親プロデュースのスタイリングの感情を母親から手渡された手鏡で確認する美琴。
その髪型は波巻きスパイラルと言うパーマと言うヘアセットらしく、父親のヘアスタイルの技術が年々上がっている事に実感出来る完成度。
若干メイクとも言えるのか分からないが素材が良いからと肌に馴染む色のリップとジトッとした目をキリッと見せる為のアイメイクしかされなかったはずなのに、良い感じに出来上がっているのは母親の技術力の高さだと分かる。
大人な様でだが年相応の雰囲気を纏っており、普段の自身とは少し違うな、と美琴は思いながらも慣れない格好に照れくさくなる。
「美琴、お前はビシッとしてたら、しっかりと見えるんだ」
「普段がしっかりしてないとでも言うのかよ、父さん」
「そうは言ってないでしょ、お父さんは。アンタ、目元はお父さん似なんだから」
「そりゃあどうも」
家に居た頃に口うるさく言われていた事を新年早々言われ、苦虫を噛み砕く様な顔をして背を向る。
だが久しくこんな格好をする事はなく、自らこんな格好をする機会もない様にも思える。
「、、、、まぁ、助かった」
優姫の隣に立つのに見窄らしい格好は美琴であっても気にする。いつもの様な格好で立てばいつも以上に己が目立つ事を理解している。
こう言う格好も悪くないと思いながら部屋の扉を開け、部屋を出るとガチっと扉を開く音が2つ重なる。
扉を閉め優姫の部屋のある方向を見た瞬間、息が止まった。
普段、洋装をしている彼女は和装なんてしないし、見る機会などないと思っていた。
あの姿に和装は、似合うだろう、と常々思っていたが、、、、目の前の彼女を見てその思いが正解だと言う事を分からされた。
まさかこんなにも似合い、神々しさを放つとは思ってもみなかった。
街中に歩くと言う事から動きにくく袖の長い振袖ではなく、袖の短く動きやすい小紋を送って貰ったと言っていたのを思い出す。
白と薄桃色の2つの色が基調とし、桜と椿の柄の小紋は、持ち主である優姫にピッタリと合い、着ているのではなく、着こなしている。
白い服が良く似合う優姫だからこそ、上品さと清潔さの中に薄桃色のガーリーさを感じさせられる。
鮮やかな赤色の半衿と帯締め、黒の前帯が更に優姫の美しさを鮮麗させていた。
外国の血を入っているからか、和洋折衷と言うのかとても美しかった。
白く綺麗で長い髪は、ハーフアップを団子にし纏めた部分を留めているのは、桜の簪が綺麗に刺され白い髪に良く似合う。
ジャラジャラと揺れる桜の飾りが優姫の美しさと天使さを際立たせ、色気すら感じさせる。
元の美しさを引き立てる様な薄っすらと施された化粧もあいまい、清楚美人、純情可憐と言う言葉が良く似合う雰囲気を醸し出していた。
「ッ」
「あら、美琴君良く似合うわね。美咲さんと奏介さんの息子さん。ウチの優姫ちゃんはどう?素材が良いとスタイリングが楽しいわ」
「良く似合ってるわねぇ〜、ウチは女の子居ないから、こう言う格好させたかったわぁ、、、、1人いけるか」
「美鈴に迷惑をかけるな」
「分かってるわよ、それぐらい」
「似合っている、可愛いと言う部類だな。、、、、美琴はどう思う?感想は言わないとだろ」
さらりと褒め暗躍しかける母・美咲を止め、褒められたのが嬉しい顔をして少し顔を背ける優姫も可愛いと思ったが、父・奏介から褒めの言葉を即されると、何も言わない訳には居なかった。
「良く似合うと思う」
「他に言う事があるでしょ!かわ?」
「、、、、、、、、可愛い、と思う」
褒めたはずなのにバシッと美咲から背中を叩かれてしまい、恥ずかしいと思いながらも頬を薄く赤く染め、「可愛い」と信じられない程小さな声で言う。
それを聞いてパァッと目を輝かせながら美琴の方に顔を向ける優姫。
「!、そ、そうですか。嬉しいです、、、、美琴君も似合ってます、格好良いです」
「ッ、、そうかよ」
「ふふっ、なんだが昔の姫奈人君の反応に似てるわね、優姫ちゃん」
「そうか?だが見た目は君に似ていると思うが」
「私達に色々言ったのに優華さん達もイチャイチャしてるじゃない」
「まぁ良いじゃないか。そろそろ車の準備をするか、車の方に行こう」
嬉しそうな顔をして見つめてくる彼女を見ると、いつになく感情が乱される。
気付けば義両親はイチャつくは、実の両親は家を出る準備をしに両家両親は駐車場に向かう背中を見送る。
約1時間振りの2人っきりの状況に美琴は少し緊張する。
優姫が普段とは違う姿、まるで天使から大天使に進化した様な姿形に冷静にいられる訳もないが、心をなんとか落ち着かせる。
「、、、、美琴君、その父と母がなんかすみません。人前であんな事するタイプではなかったのですが」
「いや、俺の親も親で優姫に迷惑かけてるし、こっちも悪い気がする。それに気にしてないから」
「それなら良かったです、、、、、、、、ぁ、あの美琴君」
「ん?」
「その、耳を貸して下さい」
「?」
お互いに両親の愚行なのかは分からないが、お互いの両親について子が謝罪すると言う面白い場面になった。
2階の廊下で話し込むが、遅く駐車場に行けば両親に文句を言われかねないと思い出し、優姫を前にして歩き出す。
2階に降りる途中で、耳を貸せと言われ何事かと思いながらも丁度耳を貸せる位置にお互いおり、そのまま優姫に耳を傾けると、両手で口元で小さなメガホンの様にし耳元に近付ける。
「美琴君」
「なんだ?」
「今日の美琴君、とっても素敵で格好良いです、、、、大好き、です」
そう天使の囁きかと思えるほど小さく囁き、自分で言った言葉に照れたのか階段を降り玄関へと足早に向かった優姫を遠目に見ながら、美琴は階段を降りてリビングの壁に激突しその痛さと彼女の囁きの衝撃でそのまま蹲る。
(、、、、あぁ、ズルいんだよなぁ)
心臓が除夜の鐘の様にバクバクとなる。煩悩を消し去ると言うが、全くもって消し去らない。
優姫のせいで一気に体温が高くなり、火照りだした頬を冷ます方法を頭の中で巡らせながら、玄関で慣れないブーツに手間取っている彼女の後ろ姿を見ると仕返ししたい気持ちが、冷めやらぬ体温の様に沸々と湧き出す。
やっと履き終えた優姫が立ち上がった瞬間、彼女の肩を掴み引き寄せる様にそして包み込む様にし、耳元で囁く。
「優姫は可愛いよ。その簪もメイクも似合ってるし、着物もピッタリ、華やかで、、、、綺麗だ」
「!!?!?」
仕返しと言わんばかりに低い声で素直に感想を言うと、背後からでも分かるほど動揺しているのが伝わる。
彼女の体がカイロみたく熱くなって笑いが溢れるのを耐え、手を離し下駄を履き玄関の扉を開け先に家を出てエレベーターホールにへと向かう。
だがその足取りは、優姫が追いつける程度のスピードで変な優しさを此処で美琴は発揮する。
数分後顔を真っ赤にしたまま慌てて鍵を閉め、ヒヨコの様な足取りで美琴の所へと通ってくるのを背後で感じ、ふっと息が漏れた。
落ち着いて隣に来た優姫の顔は何か言いたげな顔をしていたが、嬉しさと恥ずかしさと意味の分からない気持ちが、同期して言葉に出来ないと言う顔をしていた。




