天使な婚約者とお出迎え
先に着替え終わった美琴は駆け足で2階から降り、リビングを一瞬で過ぎ通り、玄関まで一直線に向かう。
玄関扉の鍵を開ける前に深呼吸をし、スリッパを用意してから鍵を開けるた。
開ければ1番最初に視界に入ったのはニコニコしながら開くのを待っていたであろう実母・美咲で一瞬で扉を閉めたくなったがその後ろに実父・奏介が居たので諦めた美琴はそのまま、扉を全開する。
両家両親共に既に着物を着ており、早起き過ぎると言う感想よりも明らかに両親が着ている着物が高級品だと目視だけでも分かってしまうのか、美琴は両親の本気度が伝わり胃が痛くなる。
そして両親の隣に婚約者である優姫のご両親であらせられる桜木夫妻も居た。
良い意味で初対面の頃から感じていた良い人オーラに美琴は良心で感じた荒んだ心が癒される。
「ど、どうぞ。それと、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとう。美琴、何?寝起き?」
「いや、、、、まぁ、そんな感じ。どうぞ、入って下さい」
「失礼する、、、、綺麗にしてるな。美琴、お前もちゃんと手伝っているか?優姫さんだけに押し付けてたりはしてないだろうな」
「ちゃんと分担にしてやってるよ」
両親からの怒涛の詰め寄りに、新年早々、意識が遠のきかけるが、背後から優姫の気配感じる振り返ると、急いでたのか普段凝った髪型とは一変しポニーテルをした白髪が綺麗に靡き、ダボついた薄ピンク色のパーカーと動きやすい半ズボンを履いてのご登場だった。
急いで来たのが分かるぐらい少し荒い呼吸と、余程の焦りを含んだ表情を出さない様にしてる顔をしてるのを見て、普段の調子に戻る美琴だったが、優姫の生脚を直視してしまい先程の色々を思い出しグルンっと勢い付け体ごと両家両親の方に向けた。
一応、思春期の男子高校生には、あの白い生脚は目に毒だろう。
靴からスリッパに履き替えており、優姫の両親は約2ヶ月ぶりの娘と顔を合わせたのが更に優しい表情になってる。
「おはようございます。そして明けまして御目出度う御座います」
「おはよう、優姫ちゃん、明けまして御目出度う」
「おはよう、優姫。朝早くにすまないな」
「ぃ、いえ、お母様、お父様大丈夫です。お茶用意しますね」
久しぶりの両親に優姫は少し緊張しているのだろうがそれでも喜んでいると伝わる表情をして、リビングに案内しながらも、キッチンへと向かう足取りを自然と目で追う。
そして、両親の呼び方が想像通りで少し安心する美琴は背後からの父親の視線に嫌な予感がし振り返りたくない衝動を抑えながら振り返る。
「、、、、美琴、俺達にも様付けでも良いんだぞ」
「辞めてくれ、肌に合わない。それで母さん達が持ってるのって着物か?」
「えぇ、私のは美琴の、優華さんが持ってるのが優姫ちゃんのよ」
「私の着物、、、、って、もしかしてお父様、お祖父様の家からわざわざ?」
「あぁ、父さんに言ったらわざわざ優姫が使ってた着物を送ってくれてな」
「そうですか、お祖父様が」
お茶を淹れながらも、美琴判断で大好きな祖父から送られた着物が余程嬉しかったのか、表情筋がゆるっゆるなのがリビングからでも見て分かる。
だが、着物を着ると言う事を思い出した瞬間、一気に気が滅入ってしまう。
何故かと言うのであれば、両親プロデュースのスタイリングが入ると言う事であったからだ。
幼少期から文句を言っても逃げず言う事を聞き、良い意味で両親どちらにも似た容姿を持って産まれた天性の美形である井原美琴だからこそ、幼少期からパーティーなどのおめかしをする場面の度、両親のおもちゃになってきた記憶が沸々と鍋が沸騰する蓋の様に湧き思い出す。
「ふふふっ、久しぶりだから腕がなるわ」
「身だしなみを整えるんだから、拒否るなよ」
「分かって、るよ。つか、兄さん達は?あと美鈴も」
「4人は遅れて来るわよ。美鈴は翔介と一緒に来るわ。優華さんと姫奈人さんの所も」
「そうなんですね。お姉様達は家庭もありますから早い時間に来るのは難しいのは分かってましたので、少し想定内です」
「色々考え過ぎだろ」
義理の両親となる2人の名前を知ったと同時に、後から来ると言うのを昨日の時点で言っておいて欲しいと、美琴は心から思いながらも文句を言ったら後々のスタイリングに影響が出そうなので辞めといた。
だが近くに優姫の両親が居るのは非常に緊張する。
それは優姫も同様らしく、お茶をテーブルに置くその横顔は美琴の両親を気を遣っている顔を薄っすら忍ばせていた。
お見合いの日、お互いの両親と碌に会話をした記憶すらないはずなのに、2度目の対面がこう言う形と言うのは非常に気まずい。
普段、人と話すのは極力避けている美琴だが、相手は優姫の両親、未来の義両親となる相手だ。
此処で関係が破綻すれば両親に迷惑をかける可能性があり、すなわち今後の自身の両親の対応がもっとヤバい結果となる。
美琴の頭の中でいかに上手く立ち回るかと言う事だけが巡られる。
肝心の優姫はキッチンに行っておにぎりを作りに行くっており、救世主は居なくなった。
「美琴君」
「は、はい、、お義父様、何でしょうか?」
「ふふっ、そんなに緊張しないでくれ。婚約早々、娘、優姫との同棲させてすまなかったね」
「え、いや、関係を良くするって事ですし、いずれ結婚すると考えたら同棲は正解ですよ」
「だが、いきなりの同棲は大人側の我々の不手際もあるだろう」
「そうね。それに若い男女を同棲させてる、それも高校生をって世間から考えればワタシ達ヤバい大人ね」
なんだろう、両親の気配を薄っすらと感じる、と美琴は心の中で思った。
義父が実母感、義母が実父感と言うのだろうか。意外と義母が強い感じが沸々と感じた。
だが、2人の雰囲気が両親に似てるおかげか、少し緊張感がなくなったと同時に良い人だと言うのがすぐに理解した。
そして美琴は気付いた。
両親の姿がリビングにないと言う事を。ハッとしキッチンに視線を向けると、両親が優姫に絡んでいる姿が視界に入った。
あの某着無人の両親の性格を知っている美琴はどんな事を聞いているかなど想像がついた。
急いで止めに入ろうとするが、3人の会話が耳に入り体が硬直する。
「ねぇ、優姫ちゃんは美琴のどこが好きなの?」
「え、そ、そうですね。一度気を許した相手にはトコトン面倒を見たり優しさったり甘えたりしてくれる事、ですか?」
「あらぁ、そうなの。確かにあの子、私達のお願いを拒否した事ないものね」
「そんな優しい所は美咲さんに似たんだろうな」
「じゃあ、身内に甘いって部分は奏介さんに似たのね」
「お2人の良い所が美琴君の遺伝したって事ですね」
「そう言う事ね」
「そう言う事だな」
実の両親のイチャイチャはさておいてだ、優姫から好きな所を聞いた衝撃が、朝の日差しに照らされ天使の絵画の様な美しさと言うもう1つの衝撃のダブルインパクトを喰らった美琴の顔は信じられないほどの赤さがあった。
その様子をリビングでお茶を嗜んでいた桜木夫妻は微笑んで見ていた。
「初々しいわね」、「昔の君にそっくりだな」と言う会話を背後から聞こえている美琴のキッチンに向かう足は行く宛のない道を彷徨っている足だった。




