天使な婚約者の寝顔
年明けてから1時間ほどが経ち、やっとお風呂を上がった美琴は寝ようと2階の自室に向かうと、何故か部屋の真ん前で枕を両手で抱えて立っている優姫を見つける。
ブカブカのパジャマを着て、美琴の姿を見つけて寄って来てフンッと自信満々な表情をして見つめ口を開く。
「美琴君、今日も一緒に寝ても良いでしょうか?」
「まぁ良いけど、、堂々となったな」
「アレです!吹っ切れ!って奴です!」
「ちょっと分からないが、まぁ分かった」
クリスマスの日から一緒に寝る事を「どんなお願いも聞く券」を使ってから、使わなくなっても我儘と特別な人日と言う大義名分として言ってくる優姫を見ると少し笑ってしまう。
部屋の扉を開け、電気は付けないまま薄暗い部屋の中に入り慣れた手つきではないが美琴の枕の横に枕を置いて、フフンッと寝っ転がって下さいとまで言う様な顔を向けてくる。
クスッと笑ってしまうのを堪えて、ベッドに上がり左側を寝ると待ってましたと言うばかりにその真隣である右側を寝っ転がってくる。
ピタッと肩と肩がくっ付いているのが分かり、その部分が熱くなるのが分かる。そしてそれが彼女が一切気にしてないのが、彼女の無防備さを表している。
その熱を誤魔化すかの様にスッと毛布を肩まで被せて、スマホに充電器を刺す。
「明日は早いからな」
「7時程に来ると、母から連絡は来ましたので、それまでに起きて準備すれば良いと思います。朝ご飯はどうなさいますか?」
「ドタバタしそうだしな」
「では、おにぎりを作りますね」
「じゃあそれで頼む」
「、、、、おやすみなさい」
「おやすみ」
明日の事を考えると早めに準備して両家両親兄弟姉妹を待ち迎えるからか、美琴と優姫に不思議と緊張があった。
だが、料理となるとほんわかな雰囲気へと変貌するのは、料理をする事が好きな優姫と彼女の作る料理に胃袋が掴まれている美琴だからだろう。
挨拶を済ませれば、ドッドッドッドと心臓が鳴りながらもなんとか睡眠に漕ぎつけれた。
朝、美琴が起きるといつも聞こえる生活音はしなかった。
外からの鳥の鳴き声がかすかに聞こえてくる程度で、微かに空いたカーテンの隙間から差し込む太陽の光に、目を細める。
左側から寝息が聞こえて左側が以上に熱く感じる。
隣にそーっと、顔だけを向けると美琴側に体を向け、すぅ、すぅ、と小動物とも思える可愛らしい寝息を立てている優姫の顔が目の前にあった。
普段見せる無防備な姿もあどけなく幼く見えるが、寝ている姿は更にあざとさが強く感じる。
寝顔は緩み切った表情とモチモチした頬と撫でても良いのかと思える位置にある頭の全てが非常に愛らしく感じさせられる。
(、、、、いつも早く起きてるのに、可愛いな)
寝ている時も起きている時も変わらず美少女っぷりを発揮して可愛らしいのは間違いないが、小動物、特に愛玩動物ペットになる動物を見た時に近しい感情が湧く。
普段見せる好きと言う気持ちが張り付いた表情や照れた顔も可愛いが、こうやって無防備な姿で構いたくなる彼女の方が可愛いとも感じる。
ウズっと悪戯心が出てくる。優姫の頭を撫で回したい、優姫の頬をモチモチしたい、純粋に思いながらも起きている状態ですれば色んな意味で勘違いと照れを起こす可能性がある。
だが今の状態、熟睡状態ではあれば良いかもしれない。
思わず、彼女の頭に手を置く。サラサラとした髪質とやはり小さく丸っこい頭を髪をごちゃごちゃにしない程度に、撫でまくる。
ついでにと言ってはなんだが、空いている片方の手で彼女のモチモチとした荒れと言うものを知らない白く柔く滑らかな頬を人差し指で突くと、モチィと言う効果音が出そうな程、頬に指が沈んだ。
そっとソフトタッチで触っただけでも沈むほどモチモチしており、その柔らかさがクセになると言うか心地よく感じ、堪能しながらも可愛がる様に触れ、人差し指と親指を両頬に置き、ムニっと挟めば優姫の口が自然とアヒル口になってそれがまた可愛いと思えた。
自然と、美琴の口角が上がる。
こんな事をしてもまだ起きない彼女の鈍感さに普通であれば心配するのが当然なのだろうが、美琴は何故か愛くるしい、愛おしいと思えてくる。
ムニムニと無心になりながら頬をモチモチさを堪能して満足行くと流石に起き上がるか、と思い優姫の邪魔にならない様に毛布をあげ、体を起き上がらせる。
ブルッと身震いがする程、寒く感じたがスヤスヤと心地よさそうに寝ている優姫を見るとどうでも良くなる。
ベッドから降り、着物を着ると言われているがパジャマのまま出迎えるわけにもいかないからと、箪笥からパーカーを取り出す。
ガタッと棚を開ける時に音が静かな部屋に響いた。
バッと美琴は彼女の方に視線を向けると、優姫から「んんっ」と小さく声が漏れた。
閉じられた瞳がゆっくりと開けられる。
寝ぼけ眼で焦点の合わない透き通った青の瞳が、美琴の居た方向を見ていた。
だが美琴が居ない事に寝ぼけながらも気付いており、寂しそうに腕をペタペタと美琴の居た所を触れている。
居ないのが分かると目に見えて分かる様に落ち込んでいる。
それを優姫の後ろから見た美琴はギュンっと心臓が掴まれる感覚に襲われる。




