天使な婚約者からの最大級の願い
「こっちのピザ、もしかしてだけど手作りか?」
「!良く気付きましたね、そうですよ。オーブンで作れるから意外と簡単なんです」
普通の服に着替えてリビングに戻って来た優姫に美琴はデーブルに置かれた2種類のピザの明らかに良い意味で手作り感が溢れた美味しそうなピザを軽く指さして問いかけた。
その問いに気づいてくれた事が嬉しかったのか、明るい表情になって答えてコタツの中に入り座る。
手作りのピザだと分かった瞬間、「ピザを手作りで作れるんだ」と、分かりそれが目の前にある事に色々な感情が溢れとりあえず感心する事にした。
「手作りなんて凄いな。と言うか作れるんだな」
「作れますよ。父が昔は良く手作り作ってくれましたので。寧ろ昨日初めて宅配、そしてお店のピザと言うものをしました」
「、、、、え?初めて?」
「はい。お店より手作りの方が良いと思ってまして。昨日、生徒会のクリスマス会で純恋先輩が宅配の仕方を教わりました」
「なんか、金持ちって感じ。俺の家もそんな感じは少しはあったけど、宅配をした事がないのは驚愕だわ」
「そう言われると思ってました。ですが、初めては美琴君が居るクリスマスにしようと思ってたんです」
「、、、、そう、なら食べるか」
「はい」
浮世離れした様な事を当たり前の様に言う姿は、やはり財閥令嬢としての空気を醸し出しているのに少しの圧巻を感じながらも、初めてを好きな人に捧げたがる彼女の可愛らしい姿にただただ動揺するがそれを隠しながら、食事を始める。
わざわざ手作りにするなんて、料理上手の発想だな、と感想が浮かぶ。
彼女が注文したのは照り焼きチキンとマルゲリータ2種類のピザで、マルゲリータを小さな口で頬張っている。
ハンバーガーの時もあったが、手掴みで食べるのが慣れてない彼女だったが、それでも品を感じるのは姿勢が良いのと受けて来た教育が良かったのだろう。
小動物の様に頬を膨らませている彼女を見ていると、いつもより愛らしさに似た感情が湧き出てくる。
伸びるチーズに目を輝かせながら、はむはむと口に含む姿は普段学校で見る大人びて落ち着いた彼女とは違い、家で見せる年相応よりも少し幼く可愛らしい姿だった。
「美味しいです、手作り、とはやっぱり違いますね。チーズが違うと言いますか」
「そうか、、、、でも、優姫の手作りピザも美味い」
「!、本当ですか?」
「あぁ」
彼女が作ったのはジェノベーゼで、生地の焼き色が作り慣れているのが分かり狐色だが少し焼き目がお店より良い。
口に含むと、バジルの香りとオリーブ、モッツァレラチーズ、ニンニク、塩の風味と味が口が広がった。
シンプルな食材ながらも、美味しく感じそれが作った人間の技術が高いのが伺える。
お店で食べる料理は勿論美味しいが、彼女の料理を食べると彼女の料理の方が良いと思ってしまう事が多くなる。
お店の料理が物足りなさまで感じ、彼女の作る料理にいつも満足し、気付けば胃袋を掴まれていた。
「このまま優姫以外の料理食べられなくなったらどうすれば良い」
「きゅ、急に何言うんですか、、、、そうなったら私は嬉しいですけど」
「そうなりたくないようななりたくないような、、、、」
余程、言われた事が嬉しかったのだろう、頬を緩ませながらピザを食べている姿を見て頭を撫でたくなる衝動を抑えながら、カボチャのスープをスプーンで食べる。
「クリスマスプレゼントです」
「以下同文」
「なんですか、それ」
食後、ケーキを食べる時にクリスマスプレゼントを交換しようと事前に話しており2階に置いていたプレゼントを取りに戻りテーブルに置く。
明らかに優姫と美琴のプレゼントのサイズが月とスッポンの程違い過ぎた。
美琴のプレゼントの入った袋は大きく、優姫のプレゼントは箱が綺麗にラッピングされた片手でも簡単に持てれるサイズ感をしていた。
それを見て、2人の思考は間違えたかもしれないと言うある意味仲良しな思考をしていた。
「私の小さいですよね、なんか間違えたかもしれないです」
「いや、俺のが異常に大きいだけだから、気にするな。とりあえず、開けよう」
「そ、そうですね。わ、私のからどうぞ」
「あぁ」
お互いにプレゼントを渡し、ラッピングを綺麗に外し箱を開けると、桜と薔薇のチャームが付いたブレスレットが箱の中に入って居た。
金属で作られており葉の部分はピンクと赤と色が付いており鮮やかで、男でも恥ずかしくなく付けれる一品だった。
アクセサリーとしては上等な物で、箱に記載されていたブランド名がとても有名な名前で驚愕する。
流石の身なりに無頓着な美琴であってもアクセサリーなどのブランドは知る力用はあったらしい。
手に持ち、手のひらに置くとこれがプレゼントなんだと実感が湧く。
「これって」
「はい、知り合いがそこのオーナーをしてるんです。アクセサリー美琴君持ってないと、私の勝手な判断で決め付けたのですが、それで頼んで作って貰ったんです」
「って事はオリジナルって事か?」
「はい。急遽だったのに急いで貰いました」
「、、、、いや、これで5.000円はおかしいだろ。絶対にオーバーしてるって」
「、、、、、、、、み、身内なので身内割りと言うものです。それを適用したらギリギリ5.000円です」
「その間はなんだ、その間は」
「とにかく、ギリギリ5.000円ではあるので、大丈夫です」
「、、そう言うんだったら信じるが」
これ以上言っても吐かないだろうと、判断し問い詰めるのを辞め、ブレスレットを箱の中に戻す。
今すぐ着けても良いが、まだ眺めたい気持ちの方が強かった。
そして美琴が贈ったプレゼントのリボンを解きワクワクしながら中を出していこうと手を入れると最初に出したのは中身が見える様にラッピングされた箱だった。
その中身はハンドクリームであった。
普段家事のする彼女に匂い付きはと後々気付いたがヤケクソと買ってしまったと言う事実に負けた。
「ハンドクリームですか」
「あぁ、無臭の方が良いと後々気付いたが、匂い付きですまん。肌に優しいし効き目も良いのは店員から言われたら大丈夫だと、思う」
「いえ、嬉しいです。実用性がありますし、使い切ったら容器は取って置けますし」
「、、、、お前、実用性重視な所あるよな、本当」
「良く分かってらっしゃいます、流石美琴君」
ありがとうございます、と小さく笑う優姫を見ると美琴も自然と口元が緩んでしまう。
喜んで貰えて何よりだった。
まだまだ入った袋にハンドクリームの入った箱をテーブルに置いて手を入れ取るとこれまたポリエステルの袋に入った、座っている優姫の上半身を薄っすらと隠せれるサイズのものだった。
中身がなんなのかも分かっている美琴は丁寧にリボンを外すのを眺めながら、恥ずかしくなり席を外したくなるがその前に中身が取り出されて居た。
淡いピンク色の柔らかい毛並みにピンッとたった長い耳に光沢のある黒いつぶらな瞳が付いている兎のぬいぐるみである。
あの日ショップに駆け込んで、スマホの画面を見て同じ商品を買ったのだ。
彼女、優姫の部屋に置いてあるクマのぬいぐるみとペアとなっている兎のぬいぐるみを。
「これって、もしかして私の部屋にある」
「あぁ。1個だけだとなんか寂しいだろ。だから」
「、、、、嬉しいです。、、あれ?このシュシュは?」
「あぁ、それもプレゼントの1つだ」
兎のぬいぐるみの左耳に付けられたシュシュに気付いたのか、気になりながら丁寧に取る。
あのシュシュも勿論ショップで美琴が購入した商品の1つ。普段から言える立場ではないがオシャレとは程遠い光景を見ているからか、目に見えて分かり男が贈っても変ではないと頭の中でフル回転させ買ったものだった。
かと言ってこれが正解かは分かっては居ない。
家族以外の女性に対しプレゼントをした事もなければされたと言ってもトラウマになりそうな物しか経験のない美琴からすれば、もしかしたら引かれるかもしれないと言う不安さえあった。
だが今は違う。ほんの少し前だったらそう思って居ただろう。だが、優姫の性格をある程度理解した今なら、彼女の次の反応がある程度予想が付いていた。
「ぅ、嬉しいです!冬休み毎日付けます!」
「だよな、予想通りだよ、お前はやっぱり」
「?」
「なんでもない、喜んで貰えて良かった」
予想通りの反応に思わず言葉にしてしまった程に、優姫の反応がその通り過ぎた。
プレゼントをあげて喜ばれるのがこんなにも嬉しい物だと久しぶりに思い出したと同時に昨日の竜胆達と行ったプレゼント交換会での紫苑の反応がやはりお粗末な物だと気づき、彼女を見習わせたくなった。
スマホで写真が撮りたいな、と思いポケットに手を突っ込むとクシャッと紙がグチャっとなったのが感覚として手から伝わった。
そして、ポケットに入れて居た紙の中身を思い出して、一瞬で気まずい表情になったのを優姫は見逃さなかった。
「美琴君、どうかしましたか?」
「ぁ、いや、ちょっとな」
「、、、、何か私に隠し事ですか?」
「、、、、、、、、子供っぽい物だけど、笑うなよ」
優姫が少し悲しそうなだけど冷静な表情で言われて仕舞えば、隠せる訳もなくポケットから出して綺麗に真っ直ぐにしてからテーブルに置いた。
その紙は9つの切り取り線があってまるでチラシなどにあるクーポン券の様な形をして居た。
紙に書かれていた内容は「どんなお願いも聞く券」と書かれており、子供が母の日や父の日に渡す「肩たたき券」の延長線上にありそうな券だった。
「これって、私にですか?」
「お前、我儘言わないし、言えないって思ってるならこう言うのがあれば言えるだろうな、と思っんだよ」
「、、、、」
「なんか言え。ただの馬鹿だと思われるだろ」
「いえ、その、、、、コピーはしてもよろしいでしょうか?」
「お前量産しようとしてんな。ダメに決まってるだろ、10切りだ」
そんな事出来るなら我儘も言えるだろ、と思ってしまったぐらいには変な所で極端な行動を取ろうとする彼女にしっかりとツッコむ。
だが喜んでいる様で何よりと思いながらケーキを頬張る。
やり切った後に食べるスイーツ程、甘いものはなかった。
が、何故かとてつもない嫌な予感を感じ身震いをしてしまった。何故かあの券を渡してはいけない、と誰かに言われてる様な感覚を感じてしまい、フォークを皿の上に置いた瞬間、優姫が口を開いた。
「あの、どんなお願い、でも良いんですよね?」
「え、ぁ、あぁ。怪我とかしない系以外ならなんでも良いけど」
「では」
「では?」
「今日一緒のベッドで寝たいです」
「、、、、熱があるのか?やっぱりさっきの格好が悪かったんだろ。体温計で測ろう」
「違いますし、逃げようとしないで下さい!」
いつも以上の体の動きが早かっただろう。椅子から立ち上がり、彼女から距離を空け心配した風を装うが、彼女には通用はしなかった。
あんなお願いをされるとはあの券を作った時、予想などしていなかったのを思い出し後悔を痛感している。
逃げようとするのを引き留め逃さないと言う目をしながらジリジリと「お願い券」を手に近づいてくる彼女をどうしようかと頭の中でフル回転させどうにか突破しようと考える。
何気ないお願いだろうが、いくら恋愛感情が無かろうと高校生の男女が同じベッドで寝るなど兄弟姉妹しか許されないだろう。
だが、本気の目をしている優姫を説得出来る程の器用さはなかった。
「断るのであれば、今後美琴君の食事は作らないor美琴君の食事だけ納豆にするかのどっちかにしますよ」
「両極端じゃないか!、、殺す気か!」
「私は正当な手続きの元お願いしてるんです。発行元の美琴君が叶えないなら正当な行動に出ます」
「それはそうだった!」
作らなければ良かったと言う後悔までもが押し寄せてくるが、後悔してももう遅い。ある意味で天使の皮を被った小悪魔が目の前に降臨してしまったのだから。
断りを入れ叶えなければ、優姫の食事を食べられない未来か大っ嫌いな納豆生活を強制的に遅らせられる未来の2択を迫られている美琴にとって仕舞えば、断ると言う選択肢が最初から除外されている様なものだった。
やはり、この天使を怒らせてはいけないと心の底から思った出来事であった。
「、、、、分かったよ。今回だけな」
「!!、はい!」
「ただし、明日の朝ご飯は俺の好きな卵焼き作ってくれよ」
「お任せ下さい!」
パァァと表情が明るくなる彼女を見て、今夜はちゃんと眠れるだろうかと言う不安だけが美琴には募っていた。
お風呂を入り髪を乾かし、一応サイズとして大きい自身の部屋を使う事に決め、部屋に入ると先にお風呂に入り身支度を済ませた彼女がベッドに座っていた。
タオルを適当に机に置いて、美琴が左、優姫が右の位置でベッドに寝っ転がると、早速身体をくっつかせて来る彼女にドキッとすると同時に彼女の柔らかい何かが腕に触れており心臓があり得ないほど鼓動が速くなる。
「優姫、あのn、、、、!、寝てる」
文句を言う訳ではないが、離れろと言おうと顔だけを横に動かすとスゥスゥと静かな寝息を立てて眠っている彼女を見て呆気に取られてしまう。
流石天使な美少女と言うべきか、寝顔まで美しさが溢れており、美琴は言葉を失う。
こんな寝顔を見ると何も言えなかった。
薄っすらと耳と頬が赤く染まり熱さを感じるのを、お風呂上がりと彼女がくっ付いているせいだと心の中で誤魔化し、ドキドキしながらも眠りになんとか数十分後付けた。




