天使な婚約者と夜空
「え!見ていたのですか!?」
「あぁ、たまたまだが、凄い行列だったな」
「お恥ずかしい限りです。ちゃんと全員にお断りを入れましたからね!」
「それは分かってる。丹波も言ってたし」
お風呂上がりにゆったりサイズのパジャマを着てアイスを食べようとした優姫を見て、学校では180度違うな、と思いながら見ていた事を伝えたら、恥ずかしかったのか風呂上がりで赤い頬が余計に赤く染まっていた。
ソファに座って目線が上だからなのか、少し官能的。
暖房が効いた室内だからと、半袖半パンのパジャマ、それもサイズは一回りほど大きさ、そして風呂上がりで若干濡れた髪も溢れる若干の色気と無防備さ、同棲最初の頃はゴクリと唾液を飲んだ事が何回あっただろう。
だが美琴はこの姿を他の誰かに見せない様にと言うリスク管理が頭の中で設計されていた。
「それなら良かったです。もし了承したなんて勘違いをされてしまったら私は腹を切る所存です!」
「武士か!そんな事しなくて良いっての。変な所で覚悟が決まってんな、お前」
「当たり前です、美琴君一筋100年ではないですが、やっと勝ち取った美琴君とのクリスマスを過ごす権利を簡単に手放してたまるもんですか!」
「おぉ、優姫がいつになく燃えてる」
此処まで分かりやすい愛情を言葉にされてしまうと、引くとか呆れるとか困るとかは通り越して、小っ恥ずかしくなる。
こうやって疑う余地もない正真正銘の純度100%の愛情と好意を向けられてしまうと、何故かそれを隠す為の揶揄いたい欲が発動するのが美琴の照れ隠しの1つなのだろう。
大抵こう言う時は話を変え意識を逸らす。
「クリスマスプレゼントの予算何円が良い」
「予算ですか。私としては美琴君には1万円ぐらいは使いたい所存です」
「そんなに使ったら貰えない」
「と、美琴君が言いそうだと分かってましたので、五千円でどうでしょうか」
「、、、、まぁ、良いか、使い過ぎn」
「ぁ、雪が降ってます!」
言い終わる前にベランダの方に珍しく駆け足で向かう優姫。
座ったまま外を見ると本当に雪が降っており、良く気付いたな、と彼女の観察力を感心してるとあろう事かベランダへと通ずる扉の鍵を開け、外に出る優姫。
それを見て、ソファの背にくっ付けていた背中を勢い良く離して、立ち上がってしまった。
現在12月下旬の真冬、そんな中半袖半パンの格好で外を出るとはどれだけ雪に意識を取られているんだ、と美琴は内心呆れながらも、風邪を引かれるの嫌なので着ていたベージュのカーディガンを脱ぎ彼女に近づいて肩にかける。
「見て下さい、美琴君、綺麗d、、、、美琴君のカーディガン」
「いや、気付くの遅いわ。んで、雪だなぁ、珍しくないだろ」
「ですが、美琴君も見るのが初めてですし特別です」
「ッ、、、、、、、、、」
「それに、美琴君の匂いが染み付いたカーディガン付きとは、明日は槍が降るのでしょうか」
「変態か」
自信満々にだけど幸せそうな嬉しそうな表情で雪降る夜空を見つめる彼女を見てドキッと心臓が跳ね、言葉が詰まる感覚になった。
ただカーディガンを肩にかけただけでこんなに喜ばれれば調子も狂うが、匂いを言葉にされたらツッコんで気持ちを抑える。
純粋に好意を伝えられる度、最初に気持ちを知った時に言っていた言葉を思い出す。
そして、それで良いのかとも思う時が美琴にはあった。
「、、、、なぁ」
「?何でしょうか、美琴君」
「いや、前にも聞いたが俺が優姫からの好意に応えるかは分からないのにアプローチを何でし続けるんだ?」
「、、、、そう言う事ですか。確かに美琴君の性格を考えたら応えられないまま結婚に至る事になるのは私だって何回も何回も考えた事があります」
「ですが、もしそうなっても美琴君は私を蔑ろにはしないじゃないですか」
「!」
「美琴君の性格を理解してるからこそ、蔑ろにはされないって事が分かってます。ですが、私としましては両想いになるのが最終目標ですので、そんな結果にならないつもりで毎日アプローチをしてます」
「、、、、ハァァ、本当、敵わないな。優姫には」
彼女に顔が見えない様に左手で顔を覆い大きなため息をつく。
その顔は薄っすらと赤く染まっていた。
質問された事をちゃんと応えただけだと優姫は思っているだろう。
だが、美琴にとっては好意に応えなくても気持ちは変わらないと、どんな美琴でも好きで居ると言われている様なものだった。
それがとてつもなく、幸福感を感じ嬉しくなった。
どれだけ、どれだけ辛い事を聞いても彼女は全部ポジティブにして返すだろう。
その度に、幸福を感じるのだろう。
そう、寒い夜空の中綺麗に降る雪を見つめながら、思うのであった。




