天使な婚約者の為の生徒会引き受け
順調に生徒会の仕事にも慣れ、明日の週明けの月曜日に生徒会員になるか、ならないかの答えが迫られた美琴はリビングのソファに座り、アイスを食べテレビを見ながら考えて居た。
なる、ならないにしても、生徒会員との関わりが作られた為、今後無視出来る状況下にあっても逃げられない状況になる可能性は十分にある事を考慮し、返事はしっかりを考える。
畳み終わった洗濯物を片付けて居た優姫が2階から降り、すっかり定位置かのように美琴の隣にピッタリと座る。
「美琴君」
「ん?何だ、優姫」
「いえ、その、生徒会はどうでしたか?」
「どうって、、忙しかったし大変な所もあったけど、行く日は少ないしまぁ想像してた生徒会とは違った」
「私も最初はそう思いました。それで、、明日ですね、とうとう」
「だな」
何か、言いたい事を我慢していると言うのが彼女の言葉の端々から伝わる。
それに、頭を美琴の肩にコテンと傾けてくっ付けて居るのは、甘えているのもあるが言いたい事があると言う仕草だと生活する上で分かってきた。
綺麗な白髪の髪の束が、肩にかかりそれすら気にしてないのは余程言いたい事の方に集中して居ると見られる。
そして彼女が言いたい事も何となくは分かって居る。
生徒会員になる事を引き受けて欲しいと言うのを言いたいんだろうが、迷惑かもしれないと考えて言わない事にしているんだろうと。
(、、、、遠慮してるんだろうが、そんなの必要ないんだがな)
この1週間で美琴自身も色々考えた。
何かに自ら足を突っ込む、そんな馬鹿でめんどくさい事はしてこなかった人生の中で、絶賛【桜の天使】と同居して居ると言う前までならめんどくさい事だったのを何も思わずやって居る。
そんな点を考えると、今更片足突っ込んでるのを両足突っ込むのと何ら変わらない事だ。
「言いたい事があるなら言えば?それとも、優姫は良い子だから遠慮してるのかぁ???」
「!、揶揄ってるのですか!美琴君!」
「調子戻った、、、、んで、何が言いたいんだ?」
「ッ、、生徒会に入って欲しい、と私は思ってるんです。美琴君に」
「それで?」
「でも、、美琴君の事を考えると生徒会に入れば必ず目立ちます。それでもし美琴君に何か非難や、迷惑になるのは、嫌なんです」
「美琴君と、好きな人と生徒会員として活動出来たのは、幸せでした」
「、、、、ハァァ、、我儘言っても良いって言ってんのに」
「わっ」
言いたい事を言わせたはずなのに、美琴の為だと言って我儘の1つも言わない優姫に大きなため息を付きながら彼女の頭をわしゃわしゃと髪型を崩す勢いで撫でる。
それに驚いた顔をするが、美琴からの接触が嬉しいのか表情筋が緩んで目に見えて分かるぐらい喜びの表情へと変わる。
好きな人だから迷惑をかけたくない、好きな人だから苦しませたくない、自分の本当の気持ちを隠してまでされる程、彼女にそんな事をして欲しいとは思って居ない。
美琴はめんどくさい事は嫌いだ。だが、彼女に、優姫が我慢する顔は見たくもなければ、寧ろ我儘になっても良いと思って居た。
「生徒会の仕事は慣れて来たし、関わりが出来たのに切れる事は無くなったし、、妻の我儘に付き合うぐらいの甲斐性がないと思うか?俺が」
「!、、、、我儘言っても良いですか?」
「良いも悪いも、我儘レベルをもう少し上げろ、お前は」
「、、じゃあ、その、生徒会に正式な入って、欲しいです!」
「お任せ下さい、天使様」
「天使様って言わないで下さいよ!」
しっかりと我儘を言って来たのが内心嬉しくて、揶揄えばプンプンと怒ってた顔をするがその顔が全然怖くなくて本気で怒った顔ではないのが見て分かり、美琴はクスクスと笑ってしまう。
この2人の掛け合い、2人で過ごす時間が何故か美琴は心が休まる。
竜胆、蓮華と過ごす時間は楽しいが、優姫と過ごす時間は幸せだと、心から笑えると思える相手になって居る事にまだ気付いてない。
月曜日の放課後、生徒会室に集まり作業を始める前、生徒会員になるか、ならないかを返答する日になった。
全員が揃って視線が全部こちらに向けられて居る事には肌心地は悪いが、しっかりと言わないといけないと思いながら生徒会長である藤に向かって話しかける。
「その、生徒会員に、なり、ます」
「うむ、良く言ってくれた。今日からよろしく頼む、井原、いや、美琴」
「、、、、はい」
藤の名前呼びと前よりもフランクな接し方に少しむず痒さを覚える。
緊張しながらもちゃんと言葉に言えたのが、ホッと安心した。だが、こうやってちゃんと言葉にして伝える、美琴はそんな事が昔は苦手だった。
「立場としては庶務と会計を任せようと思う。純恋が生徒会長になるからな」
「その時は頼りにするね〜、美琴君〜」
「ぁ、はい。よろしくお願いします」
「新しい仲間で嬉しいです、けど緊張します」
「ふんっ、ちゃんと認めた訳じゃないんだからね!でも生徒会長が認めたなら何も言わないけどね!」
「、、、、良かったです」
歓迎されて居るのは伝わり、またむず痒さがくるが相変わらず誰に対してもツンデレな明里の言葉を聞いて、呆れ笑いをする。
優姫の嬉しそうな顔をして、本当に安心した様な本当に幸せそうな顔をして居るのを見て美琴はドキッとしてしまった。
だが、正式に生徒会員となったと言う事は、学校中に報告する為にお知らせをすると言う事。
学校全体に伝わると言う事だ。だがそれは既に腹を括って居る。それは、滅多にしない優姫からの我儘を引き受けたって言うのが大前提だ。
それからその日の生徒会は第二次歓迎会へと変化した。
次の日の朝、昇降口から校舎に入ってすぐの掲示板に人集りが出来ていた。
それを見て美琴はすぐに察して、内心ため息が出そうになった。生徒会に新しい役員、それも1年生となればざわつくのは当然の事だろう。
だが、2、3年の生徒達が目立たず生活していた美琴を知って居るわけもない。
「ねぇ、井原って誰?知ってる?」
「知らない、生徒会に入るんだったらもっと目立つ人でしょ?」
「それこそ【牡丹の天使】である明里ちゃんの恋人である園崎とかさ」
と、誰々と辺りから聞こえて苦笑いを溢して下駄箱で履き替える。
すると廊下奥からドダドタと美琴に向かってくる複数の足音が耳に届いた。それを聞いて1番めんどくさい事が今から起こる事を覚悟する。
そして現れたのは、竜胆、蓮華、紫苑の三人だった。
驚きや焦り、混乱を含んで汗だくの顔をしながら美琴の顔を見つめ、息切れしてるのか呼吸を整えて居る。
「何?3人とも」
「いや、何で生徒会員になってんの!!?」
「僕達全然知らなかったよ!」
「そもそもどう言う経緯で美琴がなってんの!!?」
「うるさい、竜胆と紫苑」
「俺だけ!?」
「私だけ!?」
「蓮華にだけ教えるわ。こっち来い」
「やったー」
朝からうるさいバカップルは置いておいて蓮華にだけ教える、と言っても嘘の事だが。
内申点も高く成績が安定しており委員会や部活動に入って居ないと言う点から担任に勧められた、と言う嘘を伝えれば、鈍感な蓮華はあっさりと信じ込んだ。
そもそも本当の事を言って仕舞えば、優しい蓮華は竜胆や紫苑に言ってしまう可能性すらあり得る。
そうなれば瞬く間に学園中に広まるのを恐れての事。
教室に美琴が入り席に着くと、席に座って居た優姫がチラッとこちらを見たと思えば、バレない様に手を振った。
それを同じくバレない様に手を振れば花を咲かせれる程の笑顔へと変わったのを見て、顔を背けて笑う。その頬は赤く染まって居た。




