天使な婚約者と天使達の絡み
週明けの放課後、初日の生徒会としての仕事は備品が揃っているかの確認作業。
簡単な作業を任されたな、と美琴は思いながらも10分も足らずに終わらせて生徒会室に戻り生徒会長である藤に報告とチック票が挟まったバインダーを渡す。
「会長、、、備品の確認終わりました」
「お、早いな、井原。助かる」
「いや、これぐらいなら早く出来るんで」
「お〜、これだったら俺が居なくなっても頼りになるな」
「だからまだやるとは言ってないので」
「分かってる、分かってる」
藤は勝手にと言うか既に生徒会員扱いをしている節があると言うのを何となくは察しては居たが、名前呼びをしていない時点でまだ一線、距離を空けていると言う事ま悟って居た。
だが美琴も人との一線を、距離を立つ時に苗字呼びは心掛けていた。
だからこそ、優姫を簡単に名前呼びをすると言うとはあり得なかった事だが、もうそんな事は気にしても居ないみたいだ。
そんな会話をしている男子2人とは対照的に生徒会の仕事を全うしているのかすら危うくお菓子パーティーを開いている女子4名のキャッキャうふふな声が生徒会室に響く。
藤の机の上には仕事の書類、対して女子達の机にはお菓子と紅茶と言う対比に、美琴はこの生徒会の権力は逆転しているんだと言う事を早々に分かってしまった顔を少し出してしまう。
「一応言っておくが、ちゃんと仕事はやっているからな、あの4人は」
「人の心を読まないで下さい」
「読んでないさ。ただ、君は驚かないんだな」
「何がですか?」
「いや、学校中で【天使】と呼ばれる彼女達が持たれるイメージとは違う姿を見ても、驚かないんだな、と思ってな」
「ぁー、そう言う事ですか」
慣れていた、と口にしかけた。
優姫と過ごすうちに人のイメージなんて所詮はイメージ、いざその人と話せば真逆の性格だって事はザラにある。
それを、美琴は分かったのだ。
だからこそ、他の天使と呼ばれる3人が学校内で言われるイメージと真逆の性格だとしても驚きはしなかった。
と、言っても3人達の性格は竜胆が言って居た性格とブレは殆どなかったが、それを見ると優姫だけが勘違いされ、違う性格のイメージが作られていると言う点だけは心にモヤモヤがかかる。
「優姫はやっぱりこう言うワンピース系が似合うでしょ」
「でもでも、こう言うラフスタイルの格好も良さそうだと私は思うな」
「わたしは敢えてのロリータ服が似合うと思うな」
「咲希ちゃん先輩、意外とそう言うタイプ?」
「確かに優姫ちゃん似合いそう」
「何で先ほどから私の服選びになってるんですか。皆さんのも決めましょうよ」
優姫が此処でも可愛がられている、と言う事だけどは美琴でも分かった。
そしてやはり女子の会話と言うのはむずいと言う事も悟った。天使と言われれば近寄りがたい雰囲気を放っている、そんな風に思われているのは彼女達は望んではいない。
望んでしまう理由なんてない。
(アレで友人じゃないのは気になるが楽しそうで良かった)
人は周りからの評価を聞いて相手を判断する点がある。それは美琴も過去に優姫に対してしてしまった事だ。
だからこそ、今良く分かっているからこそなのだろう、彼女が周りが求める彼女ではない姿を他の誰にも見せていない事に少しばかりの優越感に浸っていた。
「優姫〜、やっぱりこの色のリップ似合うよって」
「えぇ、そうですかね、明里ちゃん」
「似合うわよ、優姫ちゃんは何もしなくても可愛いのに、もっと可愛くなるもの」
「私はメイク初心者なので何も言えないけど、優姫ちゃんには似合うと思う」
「だ、だからって皆さんで私の顔を魔改造しようとしないで下さいよぉ!」
モチモチと、透き通るほど白い彼女の柔肌を容赦なく触って、メイクを施す姿はまるでゾンビに襲われている様な光景だった。
それを側から見ると、ただの女子達のイチャイチャにしか見えないが、美琴は何故か胸の辺りに突っかかりを感じた。
普通であればあんな姿を見ても何にも思わないはずなのに、と思ってると、カタンとティーカップが机に置かれる音がして現実に戻って来た。
「紅茶でも飲め、アッサムのミルクティーだ」
「ぁ、ありがとうございます」
「、、、、嫉妬か?」
「はい?」
「無自覚か、そこも似ているな」
「何言ってるんですか」
「、、、、自覚してからは大変だな、これは」
「いや、だから何を言ってるんですか」
藤の言っている言葉が理解出来なかった。だが、嫉妬と言われて一瞬、スッと受け入れてしまっている部分もあった。
だけどそれよりも優姫が他の人とそれも女子とただイチャイチャしているのを見ただけで嫉妬してると思われるのか心外だった。
恋人関係でもないのに聞かれる筋合いはない、と思うが、言われると言う事は表情が変だった可能性が出て来て、思わず空いてる左手で頬をさすった。
「私がもし男だったら優姫ちゃんと付き合ってなぁ、絶対」
「わたしも、こんな可愛い子放っておけないよ」
「女だったら蘭先輩、男だったら優姫と付き合ってたわ、私絶対」
「みなさん顔が近いですし、私が好きなのは十分伝わりましたから!」
混乱している顔が一瞬見えて、モヤっと美琴の心が曇った。
動揺した顔、焦った顔は見た事があった。でも混乱した顔は見た事がなかったからだ。
それを自分自身ではなく他人が見出した、と分かると言葉に出来ない感情が溢れ出る。
そして斜め後ろからの生徒会長・藤の視線に気づき、また言われる事を察知して、紅茶を一気飲みしてまた出されていた仕事に戻る。
完全なる誤魔化しだ。
(ハァ、こんな感情初めてだ)
自覚したくない事と言う事のは美琴には沢山あった。
自覚して仕舞えば終わってしまう、めんどくさい事になってしまうと経験上沢山あったからだ。
優姫と出会ってから、経験した事もない感情に掻き回されていた。
それが嫌とも苦しいとも思わなかった。
だけど、初めて苦しく感じたのは、彼女のせいなのかは分からなかった。




