天使な婚約者と生徒会メンバー
同級生である谷宮純恋の後ろに隠れ、美琴からの視線にオドオドして居る椿原咲希を見つめて、冷静な口調で話しかける。
「椿原先輩が撮ったんですか?」
「ご、ごめんなさい!たまたま、屋上に行きたくなって!!ビックリして撮っちゃって!ごめんなさい!」
「ちょっと!咲希ちゃん先輩を責めないでよ!!」
「まぁまぁ、、、、でも、これで優姫ちゃんと井原君は仲良しってのは分かったわね」
「、、、、、、、、ですが」
「俺は来年の1月には生徒会長を辞める。エスカレーター式で大学に進学は決まっては居るが、忙しくなる。男子生徒が居なければ、困る事もある、かと言ってそこら辺の男を推薦する程俺は甘くない」
「!、、じゃあ何で俺を」
「君は成績も優秀なのは分かって居る。そして優姫君が心を許して居る相手となれば余計に君が優秀な人間なのが分かる。それに、君からは過去の俺を見て居る様な気分だ」
「何ですかそれ」
「とりあえず、1週間生徒会の手伝いをしてくれ。1週間やって答えを出してくれれば良い」
「、、、、、、、、ハァ、分かりましたよ」
断る方法は何通りだってあったが、此処まで頼まれ、立派な選んだ理由させ言われて仕舞えば事なかれ主義を貫き中だとしても断れなかった。
そして、もし断れば中途半端な男が入り、もしかしたら、最悪な事が起きると想定すれば優姫の事を考えれば何故か嫌だ、と思って断らなかったと言う部分もある。
ため息混じりだが引き受けたのを聞いて無表情だが嬉しそうな表情をし、メガネをカチャリとする藤、嬉しそうにニコニコしながら紅茶を入れ始める純恋、ホッと安心した様な顔をする咲希、まだ認めてないって顔をしながらも何も言わない明里の姿が美琴の視界に入る。
そして、嬉しそうにしながら美琴の拘束を外すが慣れてなくて苦戦する彼女の姿を見ると苦笑いが溢れる。
「じゃあ、これからよろしく頼む、井原」
「生徒会メンバーになるかは分かりませんがよろしくお願いします、生徒会長」
「さっ、紅茶が入ったし歓迎会をしましょう」
「ぁ、わ、わたしお菓子持って来ました、食べましょう」
「ふんっ、別に歓迎はしてないからね!勘違いしないでよね!」
「明里ちゃん、そんな事言いながらお皿出してるのは何でですか」
「!違っ、優姫これは違うの!」
大歓迎ムードだが、まだなるかもわからないのにこの状態とは、想像していた生徒会像とは180度真逆だった。
だが、優姫と言うある意味先駆者が居たおかげで美琴はこの状況に戸惑う事なく受け入れて紅茶の入ったティーカップを純恋から受け取る。
それから生徒会での内容を教えられた。
週に一、二度集まり、意見箱の確認や行事などの運営と会議、生徒会費などの管理、各部活、各委員会からの報告書の確認、備品の管理などなど。
想像以上の仕事量に少し眩暈がしたが、来る日がそんなにも多くないと言う点に関しては感謝を少しばかりは感じる。
「美琴君、本当にごめんなさい。バレてしまって」
「いつまで謝るんだよ、別に怒ってないし」
歓迎会が終わり家に帰り玄関扉を閉めた途端の謝罪を聞いて申し訳なさそうな表情をして居る彼女を見れば、誰だって罪悪感を感じるだろう。
美琴は俯いて居る優姫の頭を軽く撫でて中に入る。美琴からの言葉にホッと安心した様な表情をしてその後を追う。
リビングテーブルにリュックを置いて振り返り、何故バレたかと言う話を聞く。
「それで?何でバレた訳?あの映像で?」
「はい、咲希先輩が今日のお昼の時間に聞いて来て、それを純恋先輩が聞いちゃってそれで他の生徒会員にバレてしまったんです。質問攻めにされました」
「そう言う事、、他にバレてる事は?」
「婚約関係にある事、同棲してる事、私が美琴君の事が好きな事、です」
「ハァ、マジか」
そこまでバレて居る、ではなく喋らせたと考えると喋らせれた生徒会メンバーが凄いのか、此処まで隠された優姫が凄いのか分からなくなった。
生徒会から向けられる視線が強い理由が何となく理解したと同時に、敵認定はされてないのが良かったのかは分からないが安心はした。
「安心して欲しいのが、口外はしないと約束してくれましたので」
「それは分かってる。あの人達が優姫が悲しむ様な事はしないのは分かるし」
「、、、、でも、本当の良いんですか?生徒会の事」
「断りきれない状況下だったし、それにお前を待つ間の暇つぶしがなくなるって考えたら、良い事だしな」
「!、、、、えへへ、そうですか。良かったです、夜ご飯作りますね!今日はグラタンにします!」
「おう、楽しみにしてる」
美琴の言葉を聞いて一気に嬉しそうな表情に変わり、天使オーラを纏い始めキッチンに向かう彼女を見て素早く視界に入らない様に顔を逸らしリュックを手に持ち2階の自室に足を向けたのは慣れなのか、天使の笑顔の攻撃の破壊力を知っていたからなのかは分からない。
だが見て仕舞えば、心臓が握り潰されるのだけは分かっていた。
自室にリュックを置きチャックを開けると、藤から手渡された生徒会の腕章が目に入り、たった1週間だが大変だな、と思いながら休日明けの事を想像する。
「美琴くーん、洗濯物畳んでくれませんか〜?」
「ぉー、分かったぁ」
腕章を机に置き、制服を脱ぎハンガーにかけ私服に着替え、リビングに戻るとホワイトソースの匂いがして、グウっと美琴の腹が鳴る。
パッとキッチンにいた優姫がこちらに視線を向けると、嬉しそうなだけどニヤついた様な顔をしており、何故かその姿を見て美琴は揶揄いたくなった。
「美琴君もお腹なるんですね」
「俺だって鳴る、、優姫だって重い物持って転けたりするじゃないか」
「!いつの事言ってるんですか!今はもう美琴君に頼ってるじゃないですか!」
同棲当日のあの出来事を言われ、照れとは違う恥ずかしさと怒りで顔を赤くし頬を膨らませプリプリとしながら、キッチンから出て美琴に抗議をするが、美琴からすれば今の優姫の姿は小動物がピヨピヨと鳴いてる姿にしか見えなかった。
彼女から揶揄われるのは嫌だが揶揄うのは好き、彼女からの正論を言われるのは良しとしてるが正論を言ったら負ける、と言う何とも言えない関係性がそこにはあった。
グツグツとホワイトソースが煮立つ音、カーカーと窓の外からカラスが鳴く音、夕焼け空がゆっくりと沈み夕陽が部屋の中を照らす、その全てが彼女を引き立てる様な感覚があった。




