天使な婚約者は人たらし
「え?モテる事にどう思ってるか?ですか?」
「そう、、、、つか、側から見れば大変そうだなって感想しかないし」
「そうですね、、、、」
前々から気になっていた事を聞いてみると思いの外、真面目に考えてフォークを皿に置く優姫を見てそこまでは求めてないと思いながらも考えてくれるのが嬉しいとも言えずただ答えを待つだけしか出来なかった。
ホテルに来て1時間が経ち、既に4回おかわりをしてまだまだ行ける雰囲気を醸し出していた彼女を休憩させるべく出した話題だったが美琴が気になっていた事には変わりない。
同じく中学時代に家柄関係含め見た目なのでモテた経験があるからこそ気になっていた事なのだろう。
「モテている、人から好意を向けられている事に関しては有難いとは思ってますが、それが見た目や噂だけだと言うのは分かってますし」
「見た目、噂、、、、あぁ、【桜の天使】、良い子」
「はい、そうです。だから、それが本当の好意なのかと言われて仕舞えば曖昧な事だとは思うんです。どう思うかと聞かれるのであれば、そうですね、そのまま心の中で秘めておいて欲しい、ですかね」
「、、、、その心は?」
「私は美琴君しか一生興味ありませんので」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
「、、、、そっかぁ」
清々しいまでのラブコールとボケを言ってくる所に本気度を感じ、色々諦めの返事をしてしまった。
だが、好意を向けられている=それが本当の好意ではない、って言う答えになる気持ちはなんとなくだが理解は出来ると同時にそれは中身をちゃんと見て貰えてないって事だと言っている様なものだ。
それにちゃんと言葉にして美琴しか一生興味ないと幸せそうな表情で言われてしまうと、恥ずかしさが来ると同時にこんな表情は他の人が見れないと思うと少し優越感を感じてしまう。
「ただ何故少し喋っただけで好きになるのか、それも話した事すらない人も好意を抱くのには少し疑問が抱く、、、、いえ、忘れて下さい。私が言えた事ではなかったです」
「?、そ、そうか?」
彼女が言いかけた事が分からないが、彼女がどうやって、いつ、自分に恋愛感情を抱いたのかが分からない以上、彼女が言っていた中に当てはまっている所があるのだろうと予測する。
ホットコーヒーを飲むと気付いた事があった。店内の客の優姫に対しての視線の多さだ。
ただスイーツを食べている姿でも作品とでも言うかの様な美しさを醸し出されて仕舞えば、見てしまう人は居るだろうが、彼女の雰囲気自体が人を惹きつける由縁なのだろう。
(これが世に言う、人たらし、って奴か)
ガトーショコラでフォークを切りながら心の中で思う。
人を惹きつける彼女だからこそ、求めても居ない感情を向けられる事が多い、と言う事かもしれないが彼女はそんな事もう、とっくのうちに慣れている可能性すらあるんだなと思うと心苦しい。
そんな事を言った所で彼女はただ平然として返答するのが美琴は目に見えていた。
「人の視線もモテ、好意に直結するのでしょうか?」
「視線?」
「はい、、、、人の視線には慣れてはおりますが、どうして見るのか、とはふと思う時があるんです」
「そりゃあお前が素敵、魅力的な人間、見たくなる人間って事だろ」
「!」
「変な人間を見る、とは違った奴だけどな。お前の場合は雰囲気から美しいし、、、、ぁ」
口から自ら発した言葉を遅めに気づいた美琴は、自分の言葉への恥ずかしさよりも先に目の前で一瞬で赤面し、プルプルとフォークを持って固まっている優姫の姿に意識が向いた。
「魅力的な人間」、「美しい」そんな事を言われれば誰だって勘違いしてしまうし、させてしまったかもしれない、いや、彼女の事だから嬉しいって方と照れが同時に来ているに違いないと心の中で思う。
だが、周りからの視線が生暖かいのは気のせいだと思いたい。
いや、気のせいではないのは分かる。何故なら、優姫には見えないが優姫の方に真っ直ぐの奥に座ってるダンディーな50代男性が美琴を見てグッドポーズをするのが普通に視界に入っているからだ。
(絶対に勘違いが起きているな、これ)
訂正すれば良いのだろうが、人が多い+そもそも話し上手でもなければコミニケーション能力が乏しい人間がそんな事を軽々とやってのけれる訳もないので潔く諦めるしかなかった。
この数分間で何故かどっと疲れたのは何故だろうか。普段彼女が照れても疲れなど感じなかったが、疲れると言う事は人が居るからと言う事なら、どうすれば良いのか分からない美琴である。
「何故か、疲れた」
「え?大丈夫ですか?疲れる要因何かありましたか?、、、、まさか、私が照れたから」
「いやそれ違、、、、間接的にはあってるが8割は俺の言動のせいだから気にするな」
「気になりますよ、余計に」
「そう言う天然な所は直して欲しい」
「いきなりの改善点の申し上げ!?なんなんですか!今日の美琴君は」
「分からん、故障かもしれない」
「機械じゃないんですから、そう言う事は言わないで下さい、普通は体調が優れないと言うんですよ」
「体調はすこぶる良い、寧ろ飛び跳ねれる」
「それはそれで怖いですよ」
普段とは逆で織りなすツッコミとボケを自然と出来て居る以前に詰まる事なくボケらる自分よりもツッコミが上手い優姫に内心驚きが勝ってしまった。
気付けば疲労など何処へ行ったのやら、ただただ彼女との会話が楽しいとしか思わなくなった。
そう思った矢先の出来事だった。
母親らしき女性が5歳ぐらいのスイーツの乗った皿を持った男児に「気を付けるのよ」と言うのを耳にした直後、ドサっと言う音が美琴の耳に届いた。




