天使な婚約者との上級者
スイーツフェアの初日である土曜日の朝食が終わり各自の朝の家事を終えて出掛ける準備をする為に各々の部屋へと居た。
美琴は軽く髪の毛をセットし、TPOにあってホテルに居ても変ではない服装をし、ウエストバックを肩にかけて優姫の準備を待つ。
隣の部屋から凄い物音が聞こえるが、今朝からずっと凄く楽しそうにしていたのは目に見えて分かって居たので準備に時間がかかるのはしょうがない事だと目を瞑る。
それにまだ出掛ける時間でもないので、美琴はリビングでお茶でも飲もうと部屋を出て一階に降りる。
「そういや、前出かける時は服装とか髪型とか気にしなかったな」
前回、天使である彼女と出かけた際の格好を思い出し今している格好を見ると天と地との差があるのは美琴でも自覚はしていた。
ただ今回は実家関係のホテルと言う点や【桜の天使】の隣を歩く上で恥ずかしくない格好と考えた結果のこの格好となった。
整った顔立ちではあるが服装に無頓着な所がある故、優姫の隣で歩くと考えると変な意味で目立つのは避けられないは愚か彼女に迷惑をかける可能性すらあったから、と美琴はお茶を飲みながら誰にするかも分からない言い訳を考えていた。
それに一応これはデートの範囲内だと考えるのであれば必要最低限の行動は取らなければならない。
「ぁー、めっちゃ意識してんなぁ」
「何を意識してるんですか?美琴君」
「!」
「お待たせしてすみません、準備終わりました」
「そ、そうk」
独り言を呟いたがそれを聞かれ背後から声をかけられてビクッと体を震わせながらなんとか平静を演じて振り返ったが無駄だった。
振り返って視界に映ったのは、化粧を施され桜色のチークで染まった頬とぷっくりとした唇には桜色のリップを塗り、赤色のチェック柄の付いたワンピースに薄茶色のカーディガンを羽織り三つ編みのハーフアップをし美しい白髪を靡かせ、背景には天使の羽と輪っか、そして季節外れの桜の木と花びらが映ったのだ。
一瞬でこれが幻覚だと言うのは理解出来た。流石は2回目で意識が遠のく事はなかったが動揺は隠せる事は出来ず、頬を優姫と同じ様に染めていた。
利き手で口元を目線を逸らそうとするのが精一杯だった。
「ど、どうでしょうか、似合いますでしょうか?」
「に、似合う。似合うよ」
「!、、良かったです」
「、、、、と言うか、お前化粧とかするんだな、意外」
「私だって化粧ぐらいしますよ。今日はで、デートですし、可愛い姿で行きたいじゃないですか」
その言葉を聞いた瞬間、ブワッと美琴の顔を中心に広がる様に熱くなった。
恋する乙女の様な顔をしモジモジしながら恥ずかしそうにだけど嬉しそうな表情で言う彼女を見て仕舞えば誰だってこうなるだろう。
だが、実際に好意を向けられ絶賛アプローチ中の美琴だからこそ、普段の冷静さを欠き真顔なはずなのに顔真っ赤と言う面白い構図が出来上がっていた。
そしてこんな顔を他の奴に見せたくないと言う気持ちが薄らと心の中で芽生えているのを誤魔化すかの様に口を開く。
「、、、、そう言う顔見せたら男はイチコロだな」
「私は美琴君意外に見せる気はないです。見せるメリットが分かりません」
「、、、、参りました」
「何にですか???」
恋愛初心者でも分かる、彼女が男が言われたら嬉しい言葉と言うのを熟知している。否、彼女がそんな事を分かっていて言っている訳ではないと言う事は重々承知している上で言おう、桜木優姫は上級者だと。
こんな言葉をただ1人に向けているなど勿体無いな、と思う半面彼女が他の誰かに言う可能性はゼロに等しいので考えただけで他の男が可哀想なので考えるのを辞めてあげた。
「せっかくのデートですからおめかしは当然です!」
「俺の為にわざわざありがと。でも、俺としては、、、、」
「俺としては?」
「いや、なんか脳内母親が言うなって警告してるから言わないでおこう」
「?私は平気ですよ。美琴君からの言葉は全部栄養剤みたいなものですし」
「それはそれで色々心配だが、、、、、、、、今の姿も可愛いけど化粧してない姿の方が可愛い、、、、、、、、って言いたくて」
「 」
頭を掻きながらせっかくセットした髪を崩しながら言うのは少しの恥ずかしさがあったからだ。
だが言葉にした瞬間、反応がないと思ったらその数秒後に顔面真っ赤になったかと思えば額に手を当てて天井を仰ぎ深いため息を付くと言う行動に出て美琴は何が何だか分からなずに居た。
以前として優姫の顔は赤いままでやっと優姫が言葉にした言葉と言えば小さく一言。
「美琴君は私を殺す気ですか」
「んな訳ないだろ」
思わず即ツッコミをしてしまった。
彼女としてはよっぽどの言葉を言われたのだがこの男・恋愛偏差値30以下の男には自身の言葉で不愉快になってないかと言う不安しか頭になかった。
予想外の反応に美琴は気付いた。
(優姫は俺の言葉だったらなんでも喜ぶ???)
と言う斜め上の発想をしてしまうのが恋愛初心者と言う名を体現している表れだろう。
だがポテンシャルはある。母に鍛え上げられた女性への対応、レディーファースト、女性を素直に褒めれる、優しく包み込まれる。それを自覚して行えたら良いが寧ろ自覚せずに行って欲しいと思う女性は美琴の前に居るとか居ないとか。
美琴はアレだろう、恋愛初心者ではあるが優姫に対してはポテンシャル最大限に引き延ばせ優姫を更に惚れさせれる【優姫の扱い】の上級者と言った所だろう。
キッチンの1箇所でまだマンションから出ても居ないのに1勝1敗の引き分けとなってしまった。
「美琴君はいつもズルイです。私ばかり負けてます」
「いや、俺は優姫の方がズルイと言うか強い気がするがな」
「それは良く分かりませんが、、、デートに行きましょう」
「そうだな」
そんなこんなで気づけば美琴がキッチンに来て30分程が立っておりやっと家を出た。
鍵の置いてある所から美琴だけが鍵を取り、靴を履く。自然と優姫の手を取ってバランスを取らせると言う紳士な部分を気付かずにやっているのに何故モテないのかが不可解なのはやはり性格なのだろう。
家の鍵を閉め、顔を見合わせて隣同士歩き出すのであった。




