天使な婚約者の為の相談
「なぁ、人の好き嫌いってどうやったら知れると思う?」
「は?何急に?どうした?」
「好き嫌い、かぁ。うーん、難しい質問だなぁ」
「何それ、普通に本人に聞けば良いじゃん。好き嫌いある?って」
昼休みになり優姫関連である悩みを教室の一角で机を合わせながら今日一緒に食べる親友である竜胆、蓮華、そして紫苑にお弁当を食べながら聞いてみた。
答えを期待していた訳ではないが案の定と言うか予想通りの馬鹿・良心・阿呆と言う三種三様の返答に清々しさまで感じれた。
思わず優姫の手作りコロッケを持っていた箸を持つ手が緩みかけた。
そもそも本人に聞けないから質問している事ぐらい察せないのか、とまで思う。
「つか、何で好き嫌いなんて知りたいんだ?」
「いや、人の好き嫌いなんて聞く機会そうないだろ」
「?、、、、ぁ、確かに!俺これ好きなんだよね〜って自己申告はするけど聞かれる事って中々ねーわ!」
「、、、、ぁ、そう言う事ね。確かにあたしもあんまり聞かれた事ないかも」
「まぁ、竜胆の場合はペラペラと個人情報を言ってるからもう少し大人しくして欲しいかな。弟の僕としては」
「蓮華、お疲れ様。まぁそう言う事だから、どうやって知れるかって案を出して欲しい」
と言っても美琴としてはこの3人から有益な答えが出るとは思ってない。紫苑のと言う彼女持ちだが圧倒的察しの悪さを持つ竜胆、穏やかで優しいが曖昧な答えが多い蓮華、そして明るさと変な察しの良さだけで成り立っている紫苑となると出てくる案は明白だろう。
だが今ある意味追い詰められている状況下に居る故か、今用意出来る人間がこの3人しか居なかったと言う事ともう少し交友関係を広げれば良かったと言う後悔に少しばかり苛まれている。
舌を噛み切る思いでこの3人に相談している様なものだ。
そんな事を察せない竜胆は呑気に考えながら口を開く。
「うーん、やっぱりアレじゃないか?味の違うお菓子とかでどっちが良い?とか聞いて選んだ方が好きとか?」
「、、、、、、、、蓮華、竜胆の教育方針はどうなってるんだ?先輩も蓮華もしっかりしてるのに」
「うーん、母さん似だからなぁ、竜胆は」
「おい、どう言う意味だよ!」
「竜ちゃん、分かってないなぁ。味違いのお菓子とかじゃなくて好き嫌いって言うのは、えっと甘い物が好きか嫌いかって事でしょ!」
「紫苑、何で分かったんだ?」
「美琴はどう言う意味さ!蓮ちゃんもビックリした顔して!」
的外れの答えを出す竜胆に呆れ返していたらまさかの的がピッタリと当たっている答えを出して来た紫苑に思わずビックリ通り越して引いてしまう美琴と驚きの隠せない蓮華が居た。
本人はプンプンと怒っているが、此処で正確な答えを出されたらのちに検討はずれの答えが出る確率が高くなってしまうと言う不安が拭いきれない。
「、、、、ぁ、そう言う事な!甘い物渡して嫌がるそぶりとか見せたら甘い物が嫌いではないのは分かるだろ?」
「それは、そうだな。でもなぁ」
「何か物事を誘ったりして、それに喜んだり返答に間があったり嫌がるそぶりがあったら、分かるとは僕は思うかな」
「私としては、ズバッと言って欲しいけどね。ちゃんと」
「紫苑よりも繊細な性格が居るからなぁ」
「それもどう言う意味なの!竜ちゃん!」
またプンスカしながら竜胆に抗議をしている紫苑とそれを見て笑ってる竜胆のやり取りを見たらただのバカップルにしか見えないな、と蓮華と目で会話をする美琴。
誘う、と言う蓮華の提案を聞いて良い提案だな、とは思ったが常に誘われる側に立っていた美琴からすれば、どう誘えば良いのかが難しかった。
だが「知りたい」と言う気持ちの方が強い美琴からすれば、やらないと言う選択は最初からなかったのは珍しい事である。
するとニコニコとした表情から少し何かを考える表情に切り替わった蓮華が何かを思ったのか口を開いた。
「そう言えば、美琴は誰の好き嫌いを知りたいの?もしかして好きな人、とか?」
「ッ、、な、何言ってんだよ、蓮華」
非常にまずい事を言われ、図星を隠せず動揺した様子で顔を逸らす。
美琴にとって蓮華が3人の中で1番やりずらい相手なのだ。普段は穏やかだが変な所で鋭い事を言う。もしそれを言ったのが竜胆や紫苑だったから簡単に誤魔化せたであろう。
だが園崎蓮華には桜木優姫と同じ様な誤魔化しの効かない雰囲気を纏っている。
だからこそ、美琴は内心動揺しまくりながら話を変えようとするが時すでに遅かった。
チラッと3人の方に視線を向ければ蓮華の言葉を聞いてハッとしたのであろうバカップルまでもが気付いてしまったのだ。
「、、、、あ!そうじゃん!誰の好き嫌いか知りたいんだよ!」
「わたし達のではなさそうだよね。美琴の性格考えたら本人に言うってのはなさそうだし」
「、、、、、、、、ただ聞いてみただけだ」
「うーん、それは違う気がするなぁ。僕達が話してる時の顔とってもいつもとは違う真面目な顔してたし」
「ッ」
終わりだった。
無意識だったとは言え表情の変化まで言われて仕舞えば、抵抗は虚しいし言い訳をすれば見苦しいだけだろう。
ハァァ、と大きなため息を付きながら顔を下に向ける。
どう説明すれば良いか、とか間を開けての説明ほど疑われるリスクは高くなる、など頭の中で高速回転する美琴の姿を見ている3人は疑い深い目になっている。
顔を上げると、ジッと視線を向けてくるのに目を逸らしたくなったが、何とか誤魔化そうと勤しむ。
「、、、、1番上の兄貴の誕プレ何渡したら良いか分かんねーから、好き嫌いどうやったら知れるかな、って思ったんだよ」
「ぁー、そう言う事ね。1番上のお兄さんとは歳離れてるからしょうがないか」
「んだよ、彼女出来たかと思ったわ」
「まぁ、美琴を恋愛感情として好きになる人って見た事ないけどね」
「失礼だな、紫苑は」
そうは言っても本当の事なので、強くは言えない。
家柄や見た目でモテる事はあったが、本当にモテるかと言えば、モテている訳ではないと自覚はしていた。
咄嗟に兄の事を出して誤魔化したが全部が嘘ではない為、罪悪感はない。1ヶ月後に誕生日なのは本当でプレゼントに悩んでいるが、家族なので普通に好き嫌いはある程度は知っていた。
だが誤魔化せた事に内心ホッとしながら3人の案、アドバイスを思い出して、美琴はどうしようかと考える。
「ぁ、そう言えば大量の飴貰ったからさ、3人とも貰ってくれない?」
「、、、、」
「、、、、」
「、、、、」
「なんか反応してよ!!」
ズドンっと言う音がしそうな量の飴玉の入った袋を学校机に置く紫苑とその量の多さに引いてしまう美琴、竜胆、蓮華の3人。
二桁の量ならまだ許容範囲内だったが、明らかに3桁を超えた量の飴玉だった為か、消費が大変だなって思いながら断ろうと思ったが、アドバイスの事をこれに利用出来るのではないかと思い付き、十数個手に取りポケットに入れる。




