天使な婚約者への葛藤
桜木優姫と関わりを持って1ヶ月が経とうとし、11月半ばを迎え寒さが本格的に襲って来る季節となった。
現在教室の一角で椅子に座り神妙な面持ちで授業を聞く1人の男・井原美琴の姿があった。黒板に普通は視線を向けるものだろうが今現在遠い目をして窓側に視線を向けると言う奇行をしている。
何故、こんな事をしているか、それは一重に桜木優姫関連である事は明白だろう。それ以外でこんなにも深刻に考える事は今までなかったのだから。
(優姫の好きな事全然知らないんだよな)
まぁ、ある意味こんな馬鹿げだ事を深刻に考えるのも自分しか居ないだろうと、頭の中で思う。
が、美琴にとっては重大な事だった。彼女が自身の好き嫌いを知っていると言う状況は普通はおかしいが好意を向けていると知っているからこそ、知っているのは普通だと納得している。
だが、今後夫婦になる可能性の高い関係値にあり、彼女、桜木優姫にある程度の人としての好感度が高く、可愛さも感じている節がある為か知る事を重要視している。
1ヶ月も同棲生活を送って居ながら彼女の好き嫌いを全く、ではないが殆ど知らないのは流石に引かれる事だとは自覚して居た。
彼女が自身を好きだと言う事は重々承知しているがそれ以外で好きな事、嫌いな事を知らないのは美琴としては何かが喉につっかえる感覚になる。
(人の好みとか全く気にした事なかった)
事なかれ主義の性格が此処で後悔するとは思いもしなかった。人との適切な距離感を保つ事を心がけ、気の許した親友にしか素は見せなかったが、優姫の前では素のはずなのに知らない自分を出していると一応は自覚している美琴であった。
外に向けて居た顔を教室に戻し視線に入った真面目に勉強をしている彼女、優姫の姿を見ると、「知らない」と言う事が重く感じる。
知らないには2つの種類がある。知ろうとしない、と、知りたくない、と言う事だ。
似ている様で似て居ない。
知ろうとしない、と言う事は関係は普通でも知ろうとは思えない相手と言う事。
知りたくない、と言う事は関係が最悪で知ろうとなんて思いたくもない相手と言う事だ。
だが、美琴はもう1つあると思っている。
「知ろうとしなかった」と言う事。
知ろうとしなかった、と言うのは、相手との関係が普通であるがそれが当たり前で好き嫌いを知ろうなんて頭の中で抜け落ちて居た、と言う事に当てはまる。
事なかれ主義、めんどくさい性格から相手との距離感を大事にし踏み込む所を大切にして居た。
だが、「知りたい」と思った時に「知ろうとしなかった」と言う事が深く押し寄せて来る。
今まで深く関係性を深めなかった事が今此処で強い後悔に襲われるとは美琴は思わなかっただろう。
(ぁー、なんか俺が俺じゃないみたいだ、、、、なんか曲にありそうなフレーズ、って)
そう言う状況じゃない、と思いながらただただどうやって「知る」方法を授業中に考えるだけだった。
ふと、視界に映る彼女が小さく欠伸をするのに気付いた美琴は、それが他の人が気付いてないのにも気付き少しだけ優越感に浸ってしまう。
不意に出る可愛さを見れたって言う事は嬉しいって訳じゃないが、見れたのは俺だけってのが心が熱くなる。
(知りたいって気持ちって大事なんだな、本当に)
知るって言うのは人を知るってのもあるが物にも当てはまると美琴は思っている。
例えばだが花の種類、宝石の種類、野菜の種類、果物の種類、気になって調べるって言うのは知るって言う事と同等って事だ。
知りたいって思えたのが初めてか彼女だったのは、偶然でも何でもなく彼女、桜木優姫だったから思えたんだと理解している。
優姫と出会ってから考え方は愚か、見方さえも変わった。それは一重に彼女のおかげもあるだろうが、心深くに変わろうと言う意識が美琴の中にあったが本人に一切の自覚はない。
だからこそ、彼女の好き嫌いを知るって言う事が今現在井原美琴にとったは最重要案件になっているのだ。
(どうやったら、知れるのだろうか)
本人に直接言える様な精神性は持っては居ないが、もし伝えた所で彼女が嬉しそうな顔をするのは目に見えているが、何故か言えない気持ちになった。
これは知りたいと言う気持ちがバレたくないと思っているのだ。




