天使な婚約者は母力高め
美琴は思った。
めんどくさがり屋な性格のはずの彼女が何故新居であり同棲中の家をこんなにも綺麗に保てているのか。
彼女と暮らし始めてから家事を分担してはいるが、汚れても良い場所は依然綺麗さを保てている。めんどくさがり屋な性格であれば普通は保てる事など不可能にも感じた。
ルンルンとお風呂上がりのアイスと言う楽しみがある優姫は嬉しそうに料理をしている。
料理をできない美琴からしても毎日料理をする苦労は使用人達を見て来てある程度は理解していた。毎日違うメニューに作り置き副菜、消費期限まで使い切る、その難しさを難なくこなしている彼女は美琴の目には天使ではなく女神として映っていた。
(なんか、髪と肌が白いから余計にそう思えて来た)
何て本人に言えばふざけてるんですか?と言われそうな事を考えながら、掃除機で床を掃除しているが、正直目立ったゴミもなければ汚れすらない床を見て少し引いている部分さえあった。
「ぁ、美琴君洗濯物があったらカゴに入れて下さいね。靴下とか言わないと溜め込んでたりしますから」
「、、、、分かった。と言うか、めんどくさがり屋なのにこう言う家事とかは嫌じゃないのか?」
「嫌、とは感じた事はないですね、正直。それに家事をしないでゴミや埃だらけの方が片付けがめんどくさいと思いますし」
「それはそうだな」
納得のいく答えを言われて仕舞えば、深くは言えない。
ただ毎日家事を続けられるか、そう問われたら「はい」とは簡単には答えられない。
優姫の性格と慣れた習慣だからこそだろうと、思いながら掃除機を元の位置に戻す。
慣れた事だからって、休まずやるのは普通に良い子だろ、と心の中で思うが彼女にとっては根本的に違う考えなのだろうと思うのであった。
「美琴君ってあまり家事が得意って感じはしませんよね」
「自覚はしてる。使用人がやってたりしてたからな」
「使用人が居ると甘えてしまう気持ちは分かります。私も祖父母の家に居た時は一緒にやってましたし」
「なんか、優姫の考えとか家事の仕方、母親みたいだな」
「えぇ?そうですか?、、、、、、、、姉の子供が汚したのをテキパキと片付けた時にも言われましたね、そんな事」
「やっぱり母親じゃねーか」
既に身内からの指摘があったのかと小さく呟きながらツッコむ。
本人には母力を自覚はしてないだろうが、小さい事でもすぐに気付いたり必要ないと思う食器類や調理器具、調味料を買ったりしたりしてるのは、実母を思い出してしまう美琴だった。
「なんか、体に染み付いているって言いますか、体が動いてしまうんです」
「、、まぁ、良いんじゃねーの???良い親、母親になれるって事だろ」
「!、、、、じゃあ、美琴君も良いお父さんになれますね!」
「何でそうなるんだよ」
「人を慰めるのお上手じゃないですか」
学校での泣いた彼女にした行動を慰めたの範疇に入れても良いのだろうか。
だが良い父親になれる、と言われて仕舞えば嫌よりも寧ろ嬉しさを感じるが、そうなると婚約関係にあたるので夫婦になるのも必然だと言う事を思い出す美琴。
目の前で作り終わった料理をお皿に盛り付けている彼女は何気なく言っただろうが、一々些細な事で気にしてしまうのだろう。
皿をテーブルに持って行こうと両手で持って移動するが、結んでいた髪のゴムが緩んだのか、髪が溢れ視界を塞ぎかけているのを見て美琴はサッと隣に移動し、髪を取って耳にかける。
「!」
「ぁ、いや、危ないと思ったんだが」
「ッ〜〜、美琴君はそう言うところがズルイです」
「えぇ〜」
プイッと顔を背け、テーブルに皿を置いてそのままキッチンに戻る後ろ姿を見て、何でだ?と疑問になったが照れたんだと分かると「こう言うところで照れるのか」と思ってしまった。
彼女の照れポイントがイマイチ理解が出来ない。
もう少し照れても良い場面があるな、と頭の中で思いながら席に座る。
テーブルに置かれた料理はエビマヨと鶏マヨの2種類に、ちくわと野菜の副菜とポテサラ、味噌汁、ご飯と言う何とも家庭的だが少し豪華でさえ感じ、食事をする。
「、、、、優姫」
「?、何ですか、美琴君」
「他に優姫の我儘聞きたいんだが」
「急ですね。急に言われても思い浮かぶ事がないのですが、うーん、ぁ」
「何だ、あったか?」
「いえ、その、、、、髪を乾かして欲しい、です」
「何だ、そんな事か。それぐらいなら分かった」
「良いのですか?」
「逆に嫌なのか?」
「そう言う訳ではないですが」
ゴニョゴニョと小さく何か言っているが真正面に居ても良く聞こえなかったが、美琴としては我儘のレベルが低すぎる彼女には是非このままで居て欲しいなと思いながら食事を進めるのであった。
本人としては受け入れられるとは思ってなかったのだろうが、もう少し我儘と言うのを知って聞いて欲しい所だ。




