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天使の婚約者からの我儘




美琴(みこと)君、我儘言っても良いですか?」


「全然良いぞ」


 満月が照らす中、やっとの事で落ち着いた優姫(ゆき)と帰路に着く事が叶った美琴は今なら何でも言う事聞けると言う精神で彼女からの我儘に耳を傾ける。


「手」


「て?」


「手を繋ぎたいです。良いでしょうか?」


「 」


「?、美琴君?」


 本当にこの天使は、と心の中で大きなため息を付きながら言葉を失い立ち止まり上を見上げる奇行に走った美琴の姿を見て変な事を言っただろうかとオロオロする優姫と言う面白い構図になっているが2人は今はそれどころではない。


 我儘が「手を繋ぎたい」と言うレベル1ぐらいの初心者過ぎる我儘に心をギュッと掴まれる感覚に陥りながら、ぎこちなく手を差し出す美琴は以前上を見上げていた。


 それを見てパッと表情が明るくなり、手を重ねた。それは、普通の手繋ぎではなく恋人繋ぎを平然と行い手の感触が小さくスベスベの感触が伝わり、考えてはいけない事が脳内に映像とし流れ暫くの間無言を貫いたのであった。


「美琴君って、意外と照れ屋さんですよね」


「、、、、そうか?」


「はい、教室で見る美琴君は少し仏頂面な時とかクスッと笑ってる顔は見た事ありますけど、照れた顔は婚約以前は見た事がなかったな、と思い出しまして」


「まぁ、照れる場面がなかっただけだが」


 そもそも、あのメンツで誰に照れろと、そう思いながら照れる原因が隣にそれも手を繋いでいる状態に照れそうになる。

 照れ屋だと言う自覚はないが、優姫の目の前では照れてしまう自覚はしっかりとある様で、美琴はその原因を全く分かってない隣の彼女のこう言う所はこのままでも良いな、何て聞こえない声量で呟く。


「ぁ、もう1つ我儘言っても宜しいでしょうか?」


「ぉ、何だ?我儘は」


「えっと、そのですね、お風呂上がりにアイスを食べたいです」


「、、、、嘘、今まで食べた事がないのか?え、それはそれで大丈夫か?」


「失礼ですね、アイスはないですけど牛乳はありますから!」


「そう言う問題じゃない気がするんだが」


 お風呂上がりのアイス、子供が聞いたら疲れが吹っ飛ぶぐらいには喜ぶ言葉だろう。日本全国の子どもも大人も一度はした事がある行為、毎日やっている家庭や季節限定でやっている家庭など様々な家庭があると思うが、人生で初めてやった事のない人物が満月の下に居た。


 近くには某7のコンビニがあり、信号を渡ってすぐだ。

 彼女からすればそれ相応の我儘かもしれないがまだレベル1、美琴にとって仕舞えば何気ないただの日常の一部としか感じれなかった。


「全然良いぞ。寧ろそう言うのは我儘とは思えないがな」


「した事がないので、こう言うのは我儘だと思っていたんですが、我儘ではないのですか?」


「我儘って言うのは家にお菓子があるのに買って買ってと言う子供や、クリスマス前にオモチャをねだる子供、大人だったら仕事を他人に押し付けたりするのが我儘って言うんだよ」


「そ、そうなんですか!?」


 信じられないと言う様な表情をしている彼女を横目にクスッと笑いながら青になった信号を渡る。

 我儘と言うのは他人に迷惑をかけたり人の事情御構い無しに好き勝手する事も示す事だ。だが、優姫が提示した我儘は「お願い」に分類されてるは愚か、我儘とは言い難いほど人が日常的にする事を提示したのだ。


 そう考えれば、我儘初心者と言ったところだろう。そう美琴は思いながらコンビニの中へと入りアイスコーナーに向かう。


「んで、何買うんだ?好きなの選んだら良い」


「その感じだと美琴君が支払う感じになりませんか?」


「初めてのお風呂上がりのアイス記念にな」


「誘ったのは私ですよ。私が支払うのが妥当では???」


「こう言うのは年上に任せんさい」


「数ヶ月年上なだけでは!?」


「はいはい」


 軽くあしらいながら自分用のアイスを選ぶその姿にムスッと怒る表情をしながらも表情筋が緩み嬉しそうな顔をして同じ様にアイスを選ぶ優姫。

 悩んだ結果、チョコとバニラのソフトクリームを選び、美琴はピノと言うチョコとバニラが使われているアイスを選ぶと言う何ともリンクした選択だった。


 手際良く慣れた手つきで優姫からアイスを奪い取る形で取り、支払いをする美琴の姿を数秒後に気付いて「凄い、かっこいい」と逆に惚れ惚れする優姫であった。


 それから、また手を繋ぎアイスの入った袋は美琴が持ち帰路へと付いた。






















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