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天使な婚約者は苦しいのか?



 優姫(ゆき)と昼食を取らない昼休み中、親友の2人とたわいのない会話をしながらお弁当を食べていると竜胆(りんどう)が言った言葉に思わず食べていたエビチリが喉に詰まりかけた美琴(みこと)


桜木(さくらぎ)さんってマジの良い子だよなぁ」


「ブフッ」


「うぉ、どーした?美琴」


「大丈夫?お茶飲みな」


「お、おう」


 唐突な婚約者の名前が出た事に動揺が隠せなかったが、鈍感通り越して阿呆な竜胆と鈍感ではないが変な所で鈍い蓮華(れんか)には気付かれていなかった。

 動揺しながらも竜胆の言葉の意図をお茶を飲みながら考える。

 良い子なのは周りの生徒、そして教師も言っている事、それを今更言葉として言うのは何故だ?

 その疑問が美琴の頭の中で浮かんでいると答えが本人から言い放たれた。


「常に誰にでも優しくて、笑顔で俺だったらまず無理。苦手な相手でも笑顔とかすげーし」


「確かに竜胆は顔に出そうだけど」


「蓮は余計なお世話だ」


「でも、僕はあの笑顔が機械的だなって思うけど」


 微笑みながらも確信を突く様に言った蓮華に竜胆と美琴の視線が一瞬で向く。

 竜胆は不思議そうに「そうか?」と言うが美琴は同じ事を思っていたから、同じ意見を持つのが親友に居た事に少しの感動さえ感じていた。


 が、そんな事は決して言える事はないので、思う理由を聞く事に変更する。


「機械?、、、、何でそう思うんだ。蓮華は」


「うーん、なんて言えば良いんだろ」

「誰に対して同じ笑顔って言うか、良い子を作ってるって感じかな。良い子であろうとしてるって言うか」


「それめっちゃ分かる!私!」


「!、紫苑」


 蓮華の言葉が言い終わると同時に横入りして来たのは竜胆の彼女であり隣のクラス所属の畑山紫苑(はたけやましおん)だった。

 明るさマックスで誰とでも仲良くなれ友人の多さが有名だ。


 突然の紫苑の登場に驚きながらも美琴は「分かる」と言う言葉が気になったが、彼女の登場に彼氏である竜胆が静かにいれる訳などなかった。


「しーちゃん!何でこのクラス居んの!!?」


「頼まれごと?」


「やっほ、美琴、蓮華、そうそう、先生にちょっとね」


「それで、何が分かるんだ?」


「え?ぁー、普通に先生からの頼まれごととか急に頼まれたのに普通に「分かりました」って言って引き受けててさ、普通は嫌だと思うじゃん?私も嫌だし」


「んでも、良い子なら普通に頼まれたらやるだろ?」


「もぉ、竜ちゃんは分かってないなぁ。本当の良い子って頼まれた事を全部は引き受けないんだよ」


「え」


 美琴、竜胆、蓮華の3人の声が同じトーンで揃った。

 まさかの言葉がまさかの人物から言われたからだったのだろう。

 普段赤点を取る紫苑からの確信を突く様な言葉に2つの意味で驚きを隠せていなかった。


 良い子は頼まれごとを全部引き受けない、それは良い子には全部を引き受けるのではなく時間に余裕があり急ではない頼み事を引き受ける子か急な頼み事だけを毎回引き受ける子の2種類が存在する、と紫苑はテキパキとだが覚えたての言葉を言う子供の様に自慢気に教えた。


「、、、、ちょっと僕は納得かも。小学校の時とか先生からの急な頼み事を頼まれてお手伝いとかしたら「良い子だね〜」って褒められるけど、普段お手伝いしてなくても言われたりしたし」


「あ、確かに!良い子だから全部引き受けるのが当たり前だと思ってたわ」


「でしょ?だから、桜木さんは良い子であろうとするからこそ、全部引き受けてて、、、、少し苦しそうに見える」


「苦しそうに?」


「うん。良い子って期待されるから、期待されるからこそ、良い子である事が正義みたいに感じるんだよ」


 正義、か。

 頭の中で美琴はその言葉を繰り返す。良い子、かつて周りの大人が良く言っていたのを思い出したのであろう、少し暗くなる。


 良い子と言う言葉が少し嫌いだが、優しい子、頼りになる子って言う意味としても言える言葉だが、子供からすれば「良い子」は呪いとして育ってしまう子供も居るんだな、頭の中でそう思いながら優姫の作ったお弁当を食べる。


「まっ、良い子とか関係なく桜木さんが天使なのは変わらないけどな」


「、、、、へぇ、竜ちゃんは桜木さんみたいな子がタイプだったの???」


「そんな訳ないじゃん!しーちゃんが1番だって!」


「本当?」


「本当!今日は帰りデートしよ!」


「分かった!」


「、、、、竜胆、良くあの兄の弟やれてるな」


「まぁ、仮にも兄だから尊敬はしてるし、少なからず」


「大変だな、俺だったら3日で逃げ出してる」


「ちょっ、美琴何言うんだよ!蓮華はもう少し否定しろよ」


 話を変えるかの様に竜胆を揶揄うフェーズに慣れた手付きではなく口調で変える美琴とそれに混ざって揶揄う蓮華、そしてそれにツッコむ竜胆と言う完璧なコントと言う名の連携に様子を見てた紫苑は思わず拍手をしてしまう。


 だが、話自体を簡単には忘れられるわけはない。

 頭の片隅で残った会話が頭の中で何度も何度もループしていき、桜木優姫の顔が思い浮かぶ。


「てか、美琴はあんま桜木さんに興味ないよな、絶対」


「何でそう思うんだよ、竜胆」


「いや、ほらそう言うのに興味なさそうなのが雰囲気で感じるって言うか???」


「イマイチ理解が出来ねー」


「うーん、もう少し説明を上手くすれば良いのになぁ、竜胆は」


「しょうがないよ、蓮ちゃん、竜ちゃんはそう言う性格だから」


 竜胆からの確定で興味なし判定をされだが特に否定はしない美琴とその正解をよく理解している弟である蓮華と紫苑の2人だった。

 優姫との関係性をこの3人には伝えたいとは思ってはいるがどう説明すれば信じて貰えるかと言う事だけが悩みの種である。


 実は【桜の天使】と婚約者なんだよ、と言った所で「阿呆(竜胆)馬鹿(紫苑)天然(蓮華)」の3人が理解出来るとは思えなかったからもある。

























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