天使な婚約者は泣き虫かもしれない
あの日から自然と毎日ではないが週に1.2日は一緒に昼ご飯を食べる様になった。屋上階段の踊り場に集まり弁当の感想を言ったり夜ご飯のリクエストやその日買う食材をどっちが買うか、など本当に夫婦の様な会話を側からもし見られたら思われるだろう。
同居して1週間半ほどがだったとある日の昼ご飯終わり、その日も一緒に屋上階段の踊り場に居た。
「そういや、俺お前が生徒会に入ってたの全然知らなかった」
「え、そうだったんですか?」
「いや、関わりのない関係だったし、知る機会すらなかったからな」
「確かにそうですけど、少しぐらい知って欲しかったです」
ムスッと怒った様な表情しながら、すっかり慣れた炭酸の三ツ矢サイダーを両手で持って見てくると「可愛い」と言う感情の方が勝ったが、怒ってるので謝る方が最優先だと生活していくうちで少し分かってきた。
「なんかすまん、、、、生徒会ってどう?」
「楽しいですよ、大変ですし地味だと感じる部分もありますけど。ただ、不満を言うのであれば」
「なんだ?」
怒った表情ではなく不満を感じてる表情になってそれが自分に向けられている訳ではないと分かっているのか気軽に何故かを聞ける。
生活していく内に彼女の性格が分かる。2人っきりで見せる表情は緩いし分かりやすくて何を考えているかも分かる様になった。
だからこそ、なのか自分も案外自覚してないだけで分かりやすい表情をしているんじゃないか、と思ってしまう時がある。
が、今はそれよりも彼女の思いを聞く事に専念しよう。怒られても困るからな。
「美琴君と過ごす時間が減る事が嫌です!」
「ッ、、、、フッ、、ふふっ、、」
「ちょっ、笑わないで下さい!私は真剣なんです!美琴君と過ごす時間が減るなど言語道断です!せっかく、一緒に居れる様になったんですから」
「 」
本気だって顔をしたと思えば段々と涙目になり俯き小さく言う彼女の姿を見て言葉を失ってしまった。泣かせてしまった、と思った。
(いや、俺の事を想って泣いたって事だよな)
と、思いたくなるぐらいには動揺してしまった美琴だったが、隣で泣いている彼女を見てしまうと、焦りは消えず、好意を向けてくれているからこそ想っている事が伝わる。
一緒に過ごしたいと言う願い自体を無碍になど出来ないが生徒会の仕事は楽しいと言う気持ちも無碍には出来ない。
そう、今の美琴の状態は八方塞がりと言う言葉がピッタリだった。
何とか、泣かせたくはない為、苦肉の策として優姫の頭に手を置き1撫でする。
「!、、、、美琴、君?」
「泣くな。その、優姫に泣かれたくない、じゃなくて泣いて欲しくない、から。見たくない」
「、、、、えへ、えへへ、そっか、泣いて欲しくない、かぁ、、、、えへへ」
「いや、なんか言えよ」
まさかの反応で自身の言葉に恥ずかしさを覚え、ツッコんでその場の空気を変えようとしたが、依然と嬉しそうな表情のままの優姫を見てしまうと強くは言えない。
だが、この時間は正直言えば好きだと思える時間だ。彼女と過ごす時間が苦痛だと感じた事はないが、ただ昼ご飯を食べてただ話すだけの時間、それだけでも何かが得られていると感じられる。
「そうだ、美琴君も生徒会入ったらどうです?」
「え」
「美琴君成績は良いですし、入ったら一緒に居れる時間が増えますし!」
「いやいやいやいや、もし入ったら俺は殺される」
「ずっと思ってたんですが、誰に殺されるんですか」
「クラスメイト及び天使ファンクラブ会員に殺される」
「そんなファンクラブあるんですか、、、、嘘」
「あるんだなぁ、これが」
目を遠くしながら言う美琴自身もファンクラブの存在はつい最近知ったばかりの事だった。
成績が良いと成績常に1位に君臨する人から言われても、と思うが確かに成績は良かったが、生徒会に入るかと言われたら断る選択肢の方が高い。
お互いの関係性すら言えるような関係ではないのに、今まで何にも目立たなかった、一高校生が生徒会に入るとなれば明らかに変な噂や波風、嫉妬を向けられるのは分かりきっていたのだろう。
此処は話をすり替えた方が良いと判断する美琴。
「お前って結構泣き虫、なんだな。さっきも泣きそうだったし」
「話変えるの下手ですね、美琴君は」
「泣き虫、なのは否めません。ドラマでも泣いたりしますし、でも、美琴君関連だと涙脆くなります」
「何で俺関連だとそうなるんだよ」
「好きな人の一喜一憂で嬉し泣きも悲し泣きもするんですから」
「、、、、」
ため息が出そうになった。
そう言う言葉を恥ずかしげもなく言えるのに、何故俺の一挙手一投足で恥ずかしさを覚えるんだか、美琴はそう思いながら自信気に言い見つめる優姫を見つめ返す。
(まぁ、好きな相手からってのが理由なんだろうけど)
一方的に恥ずかしくなる、させるって意味だと覚えがあるから、文句を言える立場ではないので何も言えない。
そして昼休みが終わる10分前に各々教室へと戻って行く。同時に戻ったりしたら視線の的になるのは目に見えているからだ。




