天使な婚約者は本当に天使
月曜日、一般的に社会人、学生が休日が明け学校へ登校、会社へ出勤する曜日。
普段であれば誰もがどんよりとした空気を持つ中、1人の少年井原美琴はいつも通りのボケっとした様子で教室の自席へと座り、とある場面を眺めていた。
そう、その場面とは朝っぱらから多くの視線に晒されている婚約者であり今朝一緒に家を出て数分ズレて登校した天花学園の【桜の天使】こと桜木優姫だった。
主な視線はクラスメイトと廊下を歩く他クラスの男性陣、あとはその美少女っぷりに視線を奪われてる女性陣と言う感じだ。
(こうして見てると、やはり学校では笑顔が硬いな)
見慣れている訳ではないが、学校で見る穏やか〜な笑顔と同棲3日間で見た美琴に向ける笑顔は全くの別物である。
そんな事を考えていると、背後から誰かが駆け寄るのが分かり振り返ると、親友の1人である園崎竜胆だった。
気付かれたのが悔しかったのか、ゲッ、と何処から出したか分からない声を出す。
「竜胆、何やってんだ」
「別に良くね?ちょーっと驚かそうと思っただけって言うか」
「良くねーよ。んで、蓮華も近くに居たなら止めろ」
竜胆の近くで穏やかそうな優姫とは違うにこやかな笑顔をしメガネをかけたもう1人の親友である園崎蓮華に美琴は声をかける。
蓮華と竜胆は兄弟であった。同じ学年だが双子ではなく、竜胆が4月、蓮華が3月と言う、そしてこの兄弟もう1人の兄弟がおり竜胆の双子の兄が2年生居る。
そう、4月1日生まれの兄と4月2日生まれの竜胆なのだ。蓮華は3月31日生まれ。
そして竜胆よりも蓮華の方が身長が高くイケメンと言う面白さを近づく蓮華を見ながら思う美琴だった。
その思いは決して口には出さないと言う優しさなのかめんどくささなのかは分からないが。
「僕は止めたんだけどね〜」
「珍しく集中してたから驚かせよーと思ってたのに」
「珍しくって、俺がどんだけ集中しない人間だと思ってんだ」
「、、、、テストぐらいじゃね?」
「確かに、そうかも」
「おい」
思わずツッコんだが、集中する事がないと言えばその通りなのだが、癪だったのか言葉にはしなかった。
だが、指摘された事で気付かされた。先程から彼女の方に意識を向けていると言う事にだ。
「つか、今日も天使は見事に天使だな」
「ちゃんと言葉にしろよ」
「してるだろ!」
「まぁまぁ、竜胆が言いたいのは、天使の様な桜木さんが天使みたい、って事だよ」
「そう!その通り!流石蓮」
「弟にフォローされるとか、どうなんだよ」
「別に良いだろ」
天使が天使、その言葉に納得する部分は微かにあった。本気を出せば天使の羽と輪っかぐらいは出せそうな雰囲気を纏っている優姫の微笑んでる姿を見れば誰だって思う事、ではあったらしい。
ただ、家での彼女の姿を見ている美琴としては家での姿の方が天使っぽい、と感じてはいた。
暫くするとチャイムが鳴り、担任が教室に入り授業が始まった。
いつも通りの授業、と思っていたが改めての優姫の学校の姿を見ようと決めた美琴は少しだけ心が踊っていた。
【桜の天使】、そう言われ始めた理由は良く知らなかったが、誰かが言った。
桜の木の下、消えそうなほど儚さを纏った彼女の姿を見た生徒がそう名付けたと。
目の前で、一生懸命背伸びをしながら自動販売機の1番上に手を伸ばしている彼女の姿を見れば、儚さとは真逆を感じるだろう。
一生懸命さは伝わるが。
その様子をただ授業終わり喉が渇いて廊下を歩いて自動販売機で買いに来た美琴1人に見られていたのは幸いだっただろう。
「何やってるんだ?」
「ぁ、井原さん」
「、、今は2人っきりだから名前呼びでも良いが、、、何を買いたいんだ?」
「お茶です。1番上で押しづらくて」
「他の飲み物とか買わないのか?この前のマックでもそうだっただろ、爽健美茶で」
「ジュースは飲んだ事はあるのですが、お茶が慣れてて」
「、、、、ジュースぐらい飲み慣れた方が良いぞ、ほら」
「え、ぁ」
ポチッと美琴がボタンを押したのはコカコーラのボタンだった。
ガタンッと音をさせ出て来たコーラに驚きが隠せないのか美琴とコーラを交互に見る優姫の姿に笑いが出そうになるがなんとか我慢をした。
初手でコーラはやり過ぎただろうかと少し反省したが、此処でお茶を選択させていたらこれから冒険はしなさそうだと言う親心ならぬ婚約者心を発揮させたと供述している。
「飲めなかったら俺が飲むから、まずは挑戦だ」
「、、、、分かりました。いただきます」
ゴクっと喉を鳴らしてはないが、ペットボトルの蓋を開け一口飲んだ。
初めての炭酸だったのだろう、シュワっと言う感覚が口の中に広がるのにビックリして目を見開く姿に少しキュンと来た。
「どうだ?」
「美味しい、です。とっても美味しいです」
ニコッ、そう効果音が出そうで初めての炭酸でなった涙目ありの笑顔を美琴の顔を見上げながら向ける優姫。
だが、視界には天使の羽を広げキラリと天使の輪っかが光りその場で上目遣いをする優姫の姿が映っておりとうとう幻覚が見え始めたのか、と自分の脳内を疑い出す美琴が確かにその廊下にはあった。
「?、美琴君?おーい、美琴君??!」
「、、、、うん、おう、分かった」
「聞いてないですよね!?目線が全く違う所ですけど!」
依然、幻覚が見え続けているのか、耳に届く声に適当に返事をするが何を言っているのかはイマイチ理解は出来ない。
だが微かに視界に映る優姫の姿は少しオロオロしているが、今は天使の羽を広げる姿しか映らない。




