天使な婚約者は努力家
夜、美琴はふと目が覚めた。
快眠とは言えないが、夜中に起きる事自体が少なかったはずだが、この日の夜だけは目が覚めた。
同棲3日目に差し掛かり数時間後には学校に通う時間帯だった。
水でも飲もうと部屋から出て1階に降りるとリビングが明るいのに気づくと、そこにはノートに何かを書いている優姫の姿があった。
(こんな時間まで勉強か?)
階段を降りる際、微かに音をさせたのに気付いたのか彼女はこちらに視線を向けた。
ビックリした様子でシャーペンを机に置いて体ごとこちらに動かす。
「美琴君、どうしたんですか?こんな夜中に」
「いや、目が覚めて、、、、と言うか、そっちこそこんな夜中に何やって」
「家計簿です。昨日と今日使ったお金をまとめてて」
「!、家計簿って、お前本当に高1か?」
「失礼ですね、お金は領家両親から貰っているとは言え、使い過ぎはダメですから、まとめてるんです」
「それはそうだな。つか、俺家計簿とか付けたことないわ」
彼女のそばにより、家計簿と書かれたノートとレシートを見てると少し気が遠くなる。勉強は嫌いではないがこう言う細かいことは得意ではないらしい。
そもそも生きているうちに家計簿をつけると言う事自体あるかないかのものだろうと内心思っている。
美琴の言葉を聞いて優姫は「ふふっ」と笑いながら、夕方お勧めした漫画の最終巻を机に置いた。
それを見て目を丸くして彼女の方に視線を向ける。
「気付いたら全巻読んでしまってて、それでこのまま寝るのも勿体無いと思いまして」
「やっぱり、全巻読むタイプだったか」
「言い訳は出来ません」
「どうだった?面白かったか?」
「面白かったです。キャラ達個人の葛藤、一人一人色々なものを抱えているって言うのが分かりました。何か少し変で、だけどそれが人間らしさを感じて恋愛でありながら人として成長出来るなって感じたお話でした」
「感想が大人〜、、、、まぁ面白かったら良いけど、?、なんか良い匂いが」
微かにキッチンの方から微かに食欲をそそる匂いがし、視線を向けると薄暗くても分かるぐらいには使用した形跡があるフライパンと食器類が目に入った。
グゥッと腹がなりそうには良い匂いだったので、興味が強い。
こんな時間から料理をするってなると小腹が空いたのか?と言う疑問が浮かぶが、大食いではない彼女がそんな事をするとは思えない。
「良い匂い、ぁ、お弁当に入れる具材を作ったからですかね」
「弁当」
「はい。勿論美琴君の分も作りますからね」
「それは助かる」
お弁当と言う単語に少し喜びを覚えた。
普段弁当ではなく売店で買ったおにぎりやサンドイッチを食べる事が多かった身としては手作り弁当と言うのには非常に興味深いものであり有り難さも感じていた。
だが、同時に万が一お互いの弁当の中身を同じ人間に見られでもしたら、変な誤解を与えかねないと言う事に気づいた。
同棲している、か付き合っていると言う事に気付かれて仕舞えば、半分は合っているので誤魔化し方は難しい。
たまたま、と言えば良いのだろうが誤魔化し切れず、疑問だけを残すだろう。
「弁当食べる時は同じ場所に居ないようにしよう」
「?、なんでですか?」
「何ででもだ」
「分かりました。ぁ、そうだ、美琴君嫌でなければなのですが、連絡先を交換しませんか?」
「連絡先?嫌じゃないし全然良いが、スマホ持ってるのか?」
「スマホぐらい持ってますよ、、、、今年からですけど」
「おい、、、、ちょっと待ってろ。スマホ取ってくる」
彼女側から誘われるとは思ってなかった美琴は少しばかり動揺したがそれを隠す様にスマホを取りに行くと言う名目でその場から立ち去った。
が、パジャマのポケットにはスマホが入っている。
部屋に戻って深呼吸をして、上目遣いで見つめて来た、あの彼女の表情を思い出し耳が熱くなる感覚が分かる。
(あぁ、本当ズルいな、アイツは)
数分が経ち、落ち着きを取り戻した美琴は再びリビングに戻ると、スマホを取り出して待っている優姫がこちらに視線を向けていた。
「待たせたな。L○NEで良いか?」
「はい、、LI○E、家族以外で初めてです」
「ッ」
また、初めて、と言う単語を聞き冷めたはずの耳が熱くなるのが分かる。
初めての相手が美琴だと安易に言ってる様なもので、それを今日何回聞いたか。初めての事をする事がどれほど緊張するか、出来た時どれほど嬉しい事か、良く分かっていた。
LIN○を交換して、嬉しそうな表情を浮かべスマホを見つめている優姫を見ると、心が温かくなる感覚になる。
「お前、、その笑顔でも学校で居れば良いのに」
「学校での笑顔、変でしたか?」
「いや、変じゃないけどそっちの方が可愛いし」
「!」
何気なく、ただ思った事を言っただけだった。
なのに此処まで顔を真っ赤にするとは思わない。目の前で一気にブワッと顔を赤くし、側から見ても熱そうだと思うぐらい赤く、照れているのが分かりやすく伝わる。
モジモジしながらこちらをチラチラ見てくる仕草をしたと思えば、両手を両頬に付け目を瞑り縮こまる仕草をするら。
そんなのを見れば可愛いと思ってしまうが、生憎こう言う可愛いと言う言葉は美琴の性格上素直に言える訳もなく。
意識を逸らそうと、スマホの画面を見ると時刻表示の部分を見たら午前3時半を過ぎていた。
「そろそろ、寝るか。明日も学校だし」
「そ、そうですね。残りは明日やるとして、その、おやすみなさい」
「おやすみ、、優姫」
そう言って先に美琴が部屋へと戻って行く。後ろから電気を消す音と明かりがなくなるのを感じながら部屋の扉を開ける。
結局の所、喉を潤わせる事は出来なかったが、充実した時間は過ごせたと本人は思っている。
部屋の扉を閉めスマホを充電器に付けてベッドに寝っ転がる。数分もしないうちに隣の部屋の扉が開く音がし閉める音もしたので美琴は安心して眠った。
ただ、寝る前に一瞬、○INEに登録されたばかりの優姫のアイコンを眺めてから寝たのは誰にも言えないと心の中で仕舞い込みながら、眠りに落ちた。




