陽光⑧
列車内へと帰ってきた俺は、とても冷静な目つきをした胡乃葉に迎えられた。
「おかえり。やっぱり、あなたはこの世界の人間じゃないのね」
俺は息を荒くしながらベッドに身を投げ出し、横たわった状態で返答した。
「そうだよ……俺はこの世界の人間じゃないし、ここに長居してはいけない気も今はしている」
どれだけこの言葉達が胡乃葉に届くかは分からないが――と俺は内心呟いた。
俺はベッドから身体を起こし、乱れた髪をかき分けながら胡乃葉の方を見た。
胡乃葉は、なんとも言えないような神妙な面持ちをしていて、まさか本当にこの言葉を完全に理解しているのか? と思わずにはいられないほど、何か手応えのある確信めいたものを感じているように見えた。冗談交じりに返答した言葉だったが、胡乃葉はその言葉を冗談であるとはちっとも思ってはいないようだった。
俺は流れで車窓に視線を移したそのとき、初めてそのことに気がついた。
「列車が止まってる?」
「ええそうよ、サイタン・ケーロっていう駅に止まっているみたい。その顔、降りたいのね? 無理よ。絶対に無理」
「そうか……」
列車が駅に停車したことなんて今まであっただろうか? 通過することなら記憶にあるが、停車したことなんてあまり記憶にないぞ。
俺はこのとき、ふわふわとした地に足が着かないような漠然とした気持ちを抱いた。強い爆発の中心地に居て、鼓膜がやられてしまったような現実感が揺らぐような茫然とした気持ち、それは何か大きなことがこれから起きることを告げるような予兆の風のような。
過去から現在、そして未来へと時間は流れているが、今のこの感覚はまるで、未来から流れ来る予兆の風のような感触が強くあった。この気持ちの浮遊感と、サイタン・ケーロという駅に止まっているということ――何故か偶然の出来事には思えなかった。
これはたまたまなんかじゃない。必ずこれから何かが起きる。




