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愛とシトラス⑤

 頭を強く打ったのかと錯覚するほど鈍くなった頭の中にあるのは、胡乃葉から受けた強い快楽の残滓のみで、頭の眩むような快楽の衝撃の後では、どんなに熱いお湯を頭から浴びても全てが温く感じられた。


 心の中で尾を引く胡乃葉とのセックスの残滓は、一度静寂を取り戻したはずのペニスを再度痛く感じられるほどに膨張させた。


 俺は壁のタイルに頭を擦りつけながら、膨張してどうしようもなくなったペニスを自らの手でしごいた。そして心と身体に予定調和的な静寂が訪れると、俺は萎びたペニスを触ったあとタオルで身体を拭いて服を着てから部屋に戻った。


 何故か心は空っぽに感じられた。でも身体はこれ以上ないくらいに満たされていた。俺の身体は、相手がアズサじゃなくとも正直だった。


 タオルで頭を軽く拭きながら部屋に戻ると、胡乃葉は未だに全裸でベッドの上に寝転がっていた。


 そんな胡乃葉と視線が合うと、俺は胡乃葉のその視線の意味というものを嫌でも感じ取ってしまった。俺はお前とした後、一度風呂場で自分で静寂を迎えているんだぞ? 流石に勃つもんは勃ちきったし出すもんは出しきった。それでも、胡乃葉の視線には簡単には断れないような強い覇気が感じられた。


 俺はベッドの縁に腰掛けながら頭を拭いていたタオルを胡乃葉に投げつけた。


「もう疲れた」


「ええ、分かってる。だから指貸してよ」


「指?」


「あなたが私に何かを投げつけることなんて初めてだから、今のあなたがどんなに疲れているのかくらい分かる。だから、指でいいから貸して」


 正直面倒臭かった。


 だが、もう俺のペニスは深く眠ってしまって起きる気配はない。俺は溜息をついた。本当だったらこのまま眠ってしまいたかった。指を入れるなんてアズサにもしたことないのに。でも……やるしかないか。


 胡乃葉の、まるで人間ではなく野生動物が放っているかのような本能全開な覇気の強さに、俺は逆らうことができなかった。俺は胡乃葉の方に投げつけたタオルを回収し、その回収したタオルで目を覆い隠しながらベッドに寝っ転がった。


 そして、自分の左手の人差し指と中指をちらつかせた。


 俺は静寂に身を任せて目を瞑った。どちらにせよタオルで視線は隠れている。胡乃葉がベッドから立ち上がるのが分かった。俺はその物音に一瞬出した左手を引こうとしたが、その手を胡乃葉に掴まれてしまった。胡乃葉の息遣いが荒くなっているのが分かった。


「あなたの上に乗るから指で私を弄んで」


 胡乃葉は強く興奮しているのか、無機質で事務的な口調でそう言ってきた。


 俺が何か返答をする前に胡乃葉は俺の上に乗ってきた。


 行為中は俺も興奮しすぎていて感じなかったが、胡乃葉の身体は重かった。そのくらい肉付きが良いからこそ、無我夢中で貪ることができたのだが。恐らく、胡乃葉は俺の上に乗りながら自身の股を開いている。見なくとも、感覚で分かる。


「ほら、この指をここに入れるのよ」


 次の瞬間、俺の左手の数本の指は、胡乃葉の下の口の中に潜り込んでいた。

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