愛とシトラス④
――全てが終わった後の、重くなった身体に喉を通して熱いインスタントコーヒーを流し込む。
何と何が混ざったのかも分からないようなえげつない何かしらの匂いと、事後もなお興奮を助長させるような胡乃葉の不思議な花のような匂いが部屋中を包み込んでいた。
俺は普段は飲むことのないインスタントコーヒーを何故だか飲みながら、今もなお服を着ていない、俺の膝を枕にして軽く目を瞑っている胡乃葉に向かって言った。
「俺が溢したら火傷するぞ、服くらい着たらどうだ。まぁ服着てなくてもそこで寝てたら顔は火傷するが」
胡乃葉は寝ながら首を横に振った。
「私の身体嫌いにでもなったの?」
「なんで?」
「今もこうして私の身体を眺めていると興奮してこない? もう一回ここを硬くさせてもいいんだけど」
胡乃葉は自身の後頭部で俺の下腹部をまさぐった。
「もういいよ、もう疲れたし、もう勃つもんは勃ち切ったし出すもんも出し切ったからもう俺からは何も出ないよ」
「じゃあなんでおちんちんちょっと硬くさせてるの?」
「そういう生き物だからだよ、男が。……胡乃葉の身体を嫌うなんてことはないよ。それに、抱いた後に女性の身体が嫌いになる男がどこにいる? もし胡乃葉がそう感じるんだったら、それは多分今の俺が射精の後の呪いに掛かっているせいだと思う。少なくとも、俺は凄く気持ち良かったし、胡乃葉のマンコは最高だよ」
「そう、それは良かった~」
そう言った胡乃葉の表情は胡乃葉が反対を向いていたから見えなかったが、その口ぶりから凄く満足げな様子であると感じた。
俺は重く鈍麻している頭の中で、微かに浮かんだり退いたりする考えというか、想いと戦っていた。それはアズサのことに他ならなかったし、全てが終わった後に反省や後悔をしても遅いということはこれまでの人生で幾度となく思い知らされてきた。
だが今回に至っては、胡乃葉と行為に臨む前からアズサへ謝罪をする準備はとっくのとうにできていた。これが故意的と言わずにいられるだろうか。けれど、今の俺には罪悪感というか、アズサへ対する申し訳なさに似た感情が浮かび上がってくることを、自覚すればするほど興奮を覚えてしまうこともまた確かだった。
胡乃葉の言っていたように、事後もなおこうして裸でいる胡乃葉の姿を見ていると、俺は言葉にならないふつふつと静かに湧き上がるような興奮を抱かざるを得なかった。
俺は半勃ちしているペニスと気持ちを鎮める為に、胡乃葉の頭をわしゃわしゃと少し撫でた後、シャワーを浴びに行く為に部屋を出た。




